116 / 143
プロマナト(4)
しおりを挟む普段は「ユウイチさんのベッドは気持ちいいな」と遠慮せずにゴロゴロしているのに、今日はじっとおとなしくしているマナトが新鮮に感じられる。付き合う前に緊張してもじもじしていた様子や、「今日は絶対に俺が帰ったらすぐにシーツを替えてください! 匂いを嗅ぐとか……とにかくそういうことはやめてください!」と怒っていたのが懐かしい。
「あの……、俺にして欲しいこととか、したいことはありますか?」
「して欲しいことか……。困ったな、ありすぎて何を頼もうか……」
少しだけ体を近づけて「どうしましょうか」と、見つめてくる潤んだ目が天才的に可愛い。して欲しいことというか、同じ空間で同じ空気を吸えているだけでも充分すぎる。
マナトに高校生の制服コスプレをしてもらう、という願望を諦めるために「まあ、立派な大人へと成熟したマナトには確かにそぐわないだろう」と自分を納得させていたが、やっぱり可愛いものは可愛い。
少しでも匂いを嗅ごうと必要以上に深い呼吸を繰り返しているだけでも気持ちが昂っていく。
「こんなに可愛い子に触れるだけでも嬉しいのに……そうだ、NGは無いの?」
「NG?」
「……ディープキスはダメとか、バックはダメで抜きだけとか、そういうのは無いの?」
「え……」
どうやら優しいマナトにとって、「出来ないこと・やりたくないこと」を答えるのは想定外だったらしく、難しい顔をして考え込んでしまった。
そもそも本物のボーイではないマナトは、「バック」という言葉が体位のことではなくて、挿入すること全般を指すというのも知らないのかもしれない。
「無いならいいよ、聞いただけだから」と話を切り上げようか迷っていると、何か閃いたのか、ぱっとマナトの顔が明るくなった。
「えっと、お兄さんは特別だから、そういうのはないです。……というか、俺は全部したいな。キスも、エッチなことも、全部、最後まで」
くふ、と照れ臭そうに笑った後で「ダメ?」と首を傾げるマナトにギクシャクと首を横に振って答えた。……何年も付き合っている恋人が可愛すぎて、しかも、すごく嬉しいことを言ってくれたから、それで動揺してしまって動作がぎこちないのだと言ったらマナトは信じるだろうか。「ユウイチさん、大袈裟だよー」と笑われるかもしれない。
「……じゃあ、本当の恋人どうしがするようなイチャイチャするプレイを時間いっぱいいっぱいお願い出来るかな」
制服姿で「キモ。この変態」「世の中のためにさっさと捕まってくんない?」と罵られながら股間を踏んでもらうというプレイと迷ったが、マナトも「したい」と望んでくれているのなら、「可愛い、好きだよ」と制服姿のマナトをたっぷり可愛がりたい。
わかりました、と頷くマナトはいつも以上に元気がいっぱいで嬉しそうだ。「じゃあ、よろしくお願いします」とお互い頭を下げてから、ふっと笑いあった。
「どうして笑うの?」
「え? わからないけど、なんだか嬉しかったから……。お兄さんは?」
「俺もそうだよ」
なんだか二人とも浮かれている。こんな可愛い高校生が側にいたら仕方ないか、とマナトの手を握った。
さすがに以前のようにケーキやお菓子で派手にもてなすことはしないが、「飲む?」と手渡したペットボトルのミネラルウォーターを、喉が乾いていたのかマナトはよく飲んだ。いつもと違う、という状況を意識してくれているのだろうか。
「シャワーはどうしますか? 一緒に浴びますか……?」
「え……」
さっきまで一緒にいたのだから、お互いがすでにシャワーを浴びていて、準備が万端なことはもちろんマナトも知っているはずだった。ただ、一緒に浴びるかどうか一応聞いてくるところが、妙にプロっぽくて興奮する。「じゃあ、シャワー同伴でお願い」と頼めばしっかり体を洗ってくれそうだった。
「……シャワーはもう済ませてるから。それに、シャワーを浴びたら、それ脱いじゃうでしょ?」
「……うん。じゃあ、お兄さんは特別に、このままスタートしますね……」
まとまった金額を渡しているものの、予約時間が120分なのか150分で設定されているのかはよくわからない。たぶん、お互いがお互いに「その時々で上手く合わせればいいか」と思っているからだろう。
「お兄さんのことはなんと呼んだらいいですか? 名前とかあだ名とかもっと恋人っぽい呼び方で呼んだ方がいいのかな……」
「……これはこれで興奮するからいいよ」
「そっか。じゃあ、いっぱい楽しんで気持ちよくなってくださいね」
「……ダメだよ。可愛い顔でそんなことを言ったら。すごくスケベなことをされて、怖い思いだってするかもしれないよ」
……可愛いコスプレ姿で誘惑してくるなんて、この子の恋人はさぞかし大変だろう。まあ、俺なんですけど……相変わらず無防備なマナトの姿を目にして、自分自身にもついついマウントを取ってしまう。
嬉しいような心配なような複雑な気持ちでいると、マナトは不思議そうにしながら首を傾げてみせた。
「怖いことするの?」
「うっ……」
丸くて大きな目がにゅうっと細められる。まるで、「絶対怖いことはしないでしょ?」 と、全部を見透かしているような、そういう目つきだった。そう来たか、と感心していると「でも、すごくスケベなことはしたい」とさらっと誘惑されてしまった。いつの間にか完全に主導権をマナトに握られてしまっている。
パンツを見せてくれ、と拝み倒されて震えあがっていたマナトも可愛かったが、成長して余裕のあるマナトも魅力的だ。
知り合ってからずいぶん時間が経っているが、その分マナトも大人になっているのだと、しみじみ感じられるようなやり取りだった。
「……こっちにおいで。ゆっくり、たくさん時間を使って楽しみたいから」
「はい」
ベッドに寝そべると、ブレザーを脱いだマナトが側へ寝転ぶ。肩に頭を乗せてきたマナトの体を抱き寄せると、腕と脚で絡みつかれる。しばらく、お互いもぞもぞと体を動かしてしっくりくるポジションを探してから唇で触れあった。
「ん……」
「……可愛い顔をしてるね。ずいぶんモテるんじゃない?」
「全然……。そんなことないです……」
恥ずかしそうにしながら顔を背けるマナトの頬に手を添えて唇を塞ぐ。何十回と繰り返しても、顔が可愛すぎることを伝えて、そしてマナトが照れる、というやり取りはいつまで経っても飽きない。
「知らない人間どうし」といったプレイでは、そういった会話がより活きてくるため、思う存分楽しむことにした。
「大きくはないけど、しっかりした体つきだね。運動は好き?」
「んぅ……、上手くないけど、中学までは野球をしてました」
「ほお……」
服の上から胸や尻を撫で回されて微かに声を震わせながら、聞かれたことに答えようとする姿が健気でいじらしい。
マナトが中学まで野球部だったことはとっくの昔に知っていることだが、柔らかい口調で「ポジション? ショートです」と答えられると、守備の花形か……と、胸が震えるような興奮を覚える。
ありえないことだろうが、もし自分と同じような目線で「マナトを愛でたい」と思っている人間と語らう機会があれば「むにゃむにゃした喋り方とバリバリの野球少年だったことについてのギャップ」だけで、きっと何時間でも場が持つだろう。
服の上からきわどい所を揉んだり撫でたりしながら、「勉強は好き?」「ゲームはする?」となるべく学生時代を思い出させるような質問を繰り返す。その一つ一つに答えながら、マナトは身を捩ったり、小さな声を漏らしたりしていた。
「……初体験はいつだったのかな」
「あっ……」
「嫌? 言いたくない?」
密着している体勢を利用して、膝で性器に刺激を与えても、耳のふちに舌を這わせても、真っ赤な顔をしながらコクコクと頷くばかりでマナトは絶対に口を開こうとはしない。
……真面目で優しい性格をしているけれど、性的なことについてマナトは好奇心が強く思いきりのいいところがあるから、なんとなく、高校生の頃にはそういったことをとっくに済ませてしまっているのでは? という気がしている。けれど、よっぽど恥ずかしいのか、もどかしい快感をどれだけ与えても、「だめ」と頑なだったため、今日も真相には辿り着けなかった。
「……可愛いけど、手強いな」
「ん……」
甘えるように抱きついてくるマナトの額に唇で触れる。うっとりと目を閉じて、深い呼吸を繰り返すマナトの制服の着こなしはすでに乱れてしまっていた。
「……ここ、すごく敏感みたいだね。胸をいじられるのは好き?」
「うん……」
セーターの中に手を潜り込ませて、シャツ越しに乳首の辺りを撫で回すとそれだけでマナトはずいぶん感じているようだった。小さな唇から時々舌先を覗かせるのが艶かしい。
「……オナニーの時も触る?」
「うん……。乳首だけで、恥ずかしいくらい感じてしまうから、ちょっと困ってる……」
「……なんだって?」
「たくさん触られた翌日は、乳首が服に擦れると変な感じがして……」
そこまで話してから、マナトは恥ずかしそうにして口をつぐんだ。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる