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真祖討伐編
魔法具
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対抗戦から一年が経った。俺は深淵との戦いに備えて、魔力の向上に主眼を置いて訓練を続けている。
白雷隊のみんなも基本的には同じだ。やはりまずは身体強化の強化率と稼働時間を伸ばさないと話にならない。そして結果は素晴らしいものになった。
「やっぱルシウスの魔力量はおかしいぜ」
「さすが隊長だよ!」
「それにしたって私たちに比べて四倍よ? 高くなればなるほど上がりにくいから、最近私も上がりが悪くなってきたし……」
「私たちの40万程でも、聞く限りだと宮廷魔術師レベルは軽く越えているみたいですしね」
「その四倍のルウ君は……」
「バケモンだな! 間違いない!」
「バケモン言うな。これでも深淵相手じゃどうか分からないんだから。あれ以来俺も会ってないしな」
そう、前に深淵に会った時から、一度も遭遇していないのだ。まぁあんな化け物に頻繁に遭遇する世界なんて嫌すぎるから、それ自体はいいんだが。
ただ昔の俺じゃあいつの底は測れなかったし、今ならもっと分かると思うんだよなぁ。
それに遊びにくるって言った割に全然来ないし。まぁ俺たちとは時間感覚が違うのか、はたまた俺が強くなるのを待っているのか。
「あ、そうだ。ルウが前に会った深淵ってカズィクル=ベイで合ってる?」
「ん? そうだけど」
「うちにね、深淵の情報が載ってる本があったから見てみたんだけど--」
「マジか!? 持ってきてるのか!?」
エリーが俺の勢いに少し引いている。仕方ないじゃないか。深淵の情報なんて全然ないんだから。
「持ち出しはダメだって言われたから、見て覚えてきたのよ」
「それで!? どんな情報だったんだ!?」
「もうっ! そんなに急かさなくてもちゃんと言うわよ」
あ、ついエリーの肩を揺らしながら急かしてしまった。エリーの顔が少し赤い気がする。暑いのかな。
「あ、あぁ。ごめんごめん」
「その、カズィクル=ベイだっけ。そいつは第二層ってランク付けされてたわ」
「第二層? なんだそれ?」
「えっとね、深淵の強さ別にランク付けされてたんだけど、第二層はそれの上から二番目なのよ」
「あれで……? あれよりまだ上がいんの……?」
「そうそう。それで、正確性は分からないんだけど、推定魔力値みたいなのが載ってて--」
「なにぃ!? それはすごい情報じゃないか!」
魔力値さえ分かれば、どの程度の強化魔法でどれくらい持つのかが分かる。これはかなり有用な情報だぞ。
「えっと……」
「……なんだよ? いくつだったんだ?」
「300万だって」
……はい? さんびゃくまん? 待て待て。この一年で大きく増えた俺の魔力総量が約160万で、魔力炉臨界起動を使ってなんとか320万でギリギリ越えるレベルか……
もしも、万が一にもあいつが同じような魔法が使えたとしたら……600万? アホですか。
いや、待てそれは恐らくない。まずこの魔力炉=臨界起動だが、白雷隊の必須魔法にしようと思っているのだが、未だに俺しか使うことができない。
その理由だが、恐らくイメージの難しさだ。俺は、石炭とか石油とかを燃やしてエネルギーにするようなイメージで発動させているんだが、この世界は魔法があるせいで、科学がほとんど発展していない。
つまり燃やしてエネルギーにするなんてイメージが誰もわからなかったのだ。
当然それはこの世界の生物である限り、深淵も例外ではない……はず。
そう考えると、なんとかギリギリ越えているということか。やっぱり深淵相手は短期決戦のほうが良さそうだな。今の俺の魔力だと、ある程度の継戦も考えると大体このくらいが限界か。
覚醒強化-雷火
魔法属性=雷火
形状=纏
特殊=麻痺 火傷
魔力減衰=2
持続魔力=600
強化=9000×2
魔力=1800000
速度=3000×2
この強化をしても、40分近くは持たせることができる。というか乗算のせいで魔力消費のインフレが頭おかしいことになっている。持続魔力の上昇が緩やかなのがせめてもの救いか。
「ルウ? どうしたの?」
「あ、悪い。考え事してた」
「そう。だから今のルウなら、魔力炉臨界起動だっけ? あれを使えばなんとか越えられるわね」
「ついにルウが深淵になっちゃった!?」
レーナが大げさに驚くように口に手を当てている。
「俺は魔物じゃないぞ。全く……でもいい情報だったよ。なんとか戦えることが分かったし」
「そうね。深淵が複数でいることなんてないだろうし」
今なんて言った……? 深淵が複数で?
「しまった! その可能性を失念してた!」
「うおっ! びっくりした! いきなりどうしたんだよ!?」
「いや、深淵が複数でいる可能性だよ」
「でもそんな話は聞いたことがありませんよ?」
「確かにそうだ。そうなんだけど……可能性はゼロじゃない。もし一人でも組むなんてことになったら、今のままじゃ絶対に対抗できない」
「そりゃそうだけどよ。そんなこといっても仕方ねぇだろ?」
「いや、本格的にみんなに魔力炉=臨界起動を覚えてもらう必要がある」
「それは……分かるけど、あのイメージがよくわからないのよ」
「分からなければ、分かるまでやるのみ!」
「ルウがスパルタだー!」
「ルウ君が教えてくれるなら……」
俺は鬼軍曹になるぞ。少なくとも、全員使えるようになれば、五人で深淵一人くらいは相手どれるようになるはずだ。
せめて足止めくらいはできるようになってもらわなければ。
「今日からはこれを最重要課題とする!」
「あー……まぁ仕方ないわね。ルウ一人に任せるわけにもいかないし」
「そういやぁルシウスって魔法具とかなんで使わないんだ?」
「ん? 魔法具? なんだそれ?」
「え、ルウ君 魔法具知らないの?」
アリス!? アリスの前で俺の無知が晒されるなんて……不幸だ……
「そんだけ魔法ばっかり極めてて、なんで魔法具を知らないのよ……理由があってあえて使ってないのかと思ったわよ」
「だって……誰も教えてくれなかったし……」
なんでみんな教えてくれなかったんだ。母さんもミーアもいくらでもそんなタイミングあっただろうに……
「まぁいいや。それで、魔法具ってなんなんだ?」
「えっとね、色々あるんだけど、魔法の効果を上げたり、魔力消費を抑えたりできるよ。ほら、私のネックレスも魔法の効果が上がるんだよ」
なんだよその超性能。必須装備じゃねーか。なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ。
「ふと思ったんだけど、ルシウスの魔法の効果が上がったらやばそうだな」
「やばいわね」
「やばばー!」
「やばいですね」
「ルウ君やばい」
なんだよみんなしてやばいやばいって。俺はそんなやばいやつじゃないやい!
「いやでもホントにそれはいいな。深淵と戦う前には絶対に手に入れておきたい」
「じゃあお店に見にいく?」
「売ってんの!?」
まさかそんな超性能アイテムが店売り品なのか!?
「まぁホントにいい効果のものは迷宮産でオークションとかだったりするけど、普通の魔法具店でもそれねりのものはあるわよ」
「よし行こう! 今いこう! すぐ行こう!」
「はいはい……じゃあ今日はここまでね。みんなも行くわよね?」
おー! と元気な声が揃う。素晴らしいチームワークだ。いざ、魔法具店へ!
白雷隊のみんなも基本的には同じだ。やはりまずは身体強化の強化率と稼働時間を伸ばさないと話にならない。そして結果は素晴らしいものになった。
「やっぱルシウスの魔力量はおかしいぜ」
「さすが隊長だよ!」
「それにしたって私たちに比べて四倍よ? 高くなればなるほど上がりにくいから、最近私も上がりが悪くなってきたし……」
「私たちの40万程でも、聞く限りだと宮廷魔術師レベルは軽く越えているみたいですしね」
「その四倍のルウ君は……」
「バケモンだな! 間違いない!」
「バケモン言うな。これでも深淵相手じゃどうか分からないんだから。あれ以来俺も会ってないしな」
そう、前に深淵に会った時から、一度も遭遇していないのだ。まぁあんな化け物に頻繁に遭遇する世界なんて嫌すぎるから、それ自体はいいんだが。
ただ昔の俺じゃあいつの底は測れなかったし、今ならもっと分かると思うんだよなぁ。
それに遊びにくるって言った割に全然来ないし。まぁ俺たちとは時間感覚が違うのか、はたまた俺が強くなるのを待っているのか。
「あ、そうだ。ルウが前に会った深淵ってカズィクル=ベイで合ってる?」
「ん? そうだけど」
「うちにね、深淵の情報が載ってる本があったから見てみたんだけど--」
「マジか!? 持ってきてるのか!?」
エリーが俺の勢いに少し引いている。仕方ないじゃないか。深淵の情報なんて全然ないんだから。
「持ち出しはダメだって言われたから、見て覚えてきたのよ」
「それで!? どんな情報だったんだ!?」
「もうっ! そんなに急かさなくてもちゃんと言うわよ」
あ、ついエリーの肩を揺らしながら急かしてしまった。エリーの顔が少し赤い気がする。暑いのかな。
「あ、あぁ。ごめんごめん」
「その、カズィクル=ベイだっけ。そいつは第二層ってランク付けされてたわ」
「第二層? なんだそれ?」
「えっとね、深淵の強さ別にランク付けされてたんだけど、第二層はそれの上から二番目なのよ」
「あれで……? あれよりまだ上がいんの……?」
「そうそう。それで、正確性は分からないんだけど、推定魔力値みたいなのが載ってて--」
「なにぃ!? それはすごい情報じゃないか!」
魔力値さえ分かれば、どの程度の強化魔法でどれくらい持つのかが分かる。これはかなり有用な情報だぞ。
「えっと……」
「……なんだよ? いくつだったんだ?」
「300万だって」
……はい? さんびゃくまん? 待て待て。この一年で大きく増えた俺の魔力総量が約160万で、魔力炉臨界起動を使ってなんとか320万でギリギリ越えるレベルか……
もしも、万が一にもあいつが同じような魔法が使えたとしたら……600万? アホですか。
いや、待てそれは恐らくない。まずこの魔力炉=臨界起動だが、白雷隊の必須魔法にしようと思っているのだが、未だに俺しか使うことができない。
その理由だが、恐らくイメージの難しさだ。俺は、石炭とか石油とかを燃やしてエネルギーにするようなイメージで発動させているんだが、この世界は魔法があるせいで、科学がほとんど発展していない。
つまり燃やしてエネルギーにするなんてイメージが誰もわからなかったのだ。
当然それはこの世界の生物である限り、深淵も例外ではない……はず。
そう考えると、なんとかギリギリ越えているということか。やっぱり深淵相手は短期決戦のほうが良さそうだな。今の俺の魔力だと、ある程度の継戦も考えると大体このくらいが限界か。
覚醒強化-雷火
魔法属性=雷火
形状=纏
特殊=麻痺 火傷
魔力減衰=2
持続魔力=600
強化=9000×2
魔力=1800000
速度=3000×2
この強化をしても、40分近くは持たせることができる。というか乗算のせいで魔力消費のインフレが頭おかしいことになっている。持続魔力の上昇が緩やかなのがせめてもの救いか。
「ルウ? どうしたの?」
「あ、悪い。考え事してた」
「そう。だから今のルウなら、魔力炉臨界起動だっけ? あれを使えばなんとか越えられるわね」
「ついにルウが深淵になっちゃった!?」
レーナが大げさに驚くように口に手を当てている。
「俺は魔物じゃないぞ。全く……でもいい情報だったよ。なんとか戦えることが分かったし」
「そうね。深淵が複数でいることなんてないだろうし」
今なんて言った……? 深淵が複数で?
「しまった! その可能性を失念してた!」
「うおっ! びっくりした! いきなりどうしたんだよ!?」
「いや、深淵が複数でいる可能性だよ」
「でもそんな話は聞いたことがありませんよ?」
「確かにそうだ。そうなんだけど……可能性はゼロじゃない。もし一人でも組むなんてことになったら、今のままじゃ絶対に対抗できない」
「そりゃそうだけどよ。そんなこといっても仕方ねぇだろ?」
「いや、本格的にみんなに魔力炉=臨界起動を覚えてもらう必要がある」
「それは……分かるけど、あのイメージがよくわからないのよ」
「分からなければ、分かるまでやるのみ!」
「ルウがスパルタだー!」
「ルウ君が教えてくれるなら……」
俺は鬼軍曹になるぞ。少なくとも、全員使えるようになれば、五人で深淵一人くらいは相手どれるようになるはずだ。
せめて足止めくらいはできるようになってもらわなければ。
「今日からはこれを最重要課題とする!」
「あー……まぁ仕方ないわね。ルウ一人に任せるわけにもいかないし」
「そういやぁルシウスって魔法具とかなんで使わないんだ?」
「ん? 魔法具? なんだそれ?」
「え、ルウ君 魔法具知らないの?」
アリス!? アリスの前で俺の無知が晒されるなんて……不幸だ……
「そんだけ魔法ばっかり極めてて、なんで魔法具を知らないのよ……理由があってあえて使ってないのかと思ったわよ」
「だって……誰も教えてくれなかったし……」
なんでみんな教えてくれなかったんだ。母さんもミーアもいくらでもそんなタイミングあっただろうに……
「まぁいいや。それで、魔法具ってなんなんだ?」
「えっとね、色々あるんだけど、魔法の効果を上げたり、魔力消費を抑えたりできるよ。ほら、私のネックレスも魔法の効果が上がるんだよ」
なんだよその超性能。必須装備じゃねーか。なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ。
「ふと思ったんだけど、ルシウスの魔法の効果が上がったらやばそうだな」
「やばいわね」
「やばばー!」
「やばいですね」
「ルウ君やばい」
なんだよみんなしてやばいやばいって。俺はそんなやばいやつじゃないやい!
「いやでもホントにそれはいいな。深淵と戦う前には絶対に手に入れておきたい」
「じゃあお店に見にいく?」
「売ってんの!?」
まさかそんな超性能アイテムが店売り品なのか!?
「まぁホントにいい効果のものは迷宮産でオークションとかだったりするけど、普通の魔法具店でもそれねりのものはあるわよ」
「よし行こう! 今いこう! すぐ行こう!」
「はいはい……じゃあ今日はここまでね。みんなも行くわよね?」
おー! と元気な声が揃う。素晴らしいチームワークだ。いざ、魔法具店へ!
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