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第一章

26.分かってきた

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ライジャは本当に毎日来てくれた。
王様なら、仕事たくさんあるだろうし、大丈夫なの?
と心配したんだけど、側近をはじめとしてみんな優秀で、今は特に問題は起きてないから心配いらないって。
良い部下に恵まれてるんだね。
俺も毎日会って話をするのが楽しくてしょうがないから、すげー嬉しい。
来る時間もだいたい昼過ぎくらいって決めて、お互いその前後に色々と用事を済ませるようにしたんだ。
うん、計画、大事。とっても。
リリィも一緒に来て、ルルゥとじゃれて遊んでる。
モフモフ神様、可愛すぎる。
一週間、色々と話して、だいぶこちらの世界観が分かってきた。
ライジャも俺の元の世界に興味があるみたいで、お互いに質問しあって過ごした。
でも俺の世界って、すごく説明が難しいことがよく分かった。
だって家電製品とか乗り物なんて、概念からしてまったく異質のものだから、何て表現したら伝わるのか皆目見当がつかなくて。
絵は説明できても、写真は無理だし。
車なんて、タイヤをエンジンで回転させて進むって…って、タイヤのゴムからして説明できない。
飛行機に至っては不可能ですね。はい。
早々に挫折しました。
ただ、すごく便利な世界だって感じは伝わったみたい。
こっちに来て不便になったのではないか?って聞かれたよ。
でも不思議とそんな気はしなかった。
まあ、あったら便利だろうなってものはあるけどね。
そうそう、リリィの世界では使えるものが結構あるんだ。
夜が真っ暗で作業ができないって話をしたら、次の日に白いソフトボール大の球体を持ってきてくれたんだ。
何かと思ったら、夕方になると光り出すんだよ、これが。
ランプと同じ。
中に光るコケみたいなのを入れてるんだって。
何もしなくても10年はそのまま使えるとは、何て便利なんだ。
だから、夜も家の中は明るくなったんだ。
逆に消すことはできないから、暗くする時は葉っぱを被せる。
そしてやっぱり、ライジャは火を知らなかった。
そりゃそうか、水の中じゃ知らないよな。
一度、パン焼き中にライジャが来て、あの遠くで赤くてユラユラしてるのはなんだ?って焚火に興味津々だった。
異文化交流、もっとそばで出来たら楽しいんだろうけどな。
更に残念なのは、お互いの世界の食べ物が食べられない事。
体が受け付けないんだって。
ええ~残念。このパンの美味さを知ってもらえないとは。
逆にリリィの食べ物も俺は食べられない。
それを聞いたとき、ショックでガーンってなったよ。
この異世界の食べ物、俺はフツーに食べられたのに?
リリィとルルゥでは、異世界以上の隔たりがあるのか?
その後で、ルルゥにパンを食べさせるのを見たら、ライジャも食べてみたいって羨ましそうだった。
フリスビーキャッチであげるのを見た時は、さすがに驚愕の眼差しだったけど。
神様にそんな餌のやり方はマズかったかなぁ。
あ、ライジャの歳を聞いたら、なんと165歳だった。
ビビったわ~。
でも3000年の寿命からしたら、まだまだ子供?
いや、子供は王様にはなれないよな?
んん?と考えてたら、生まれてから20年くらいで今のサイズまで成長するんだって。
そこら辺は一緒だね。
で、それからは外見はほとんど変わらないままで3000年。
長いわ~。
世紀で言ったら、30世紀?
ふおっ、生き字引様もビックリだわ。
でも100歳で王様になったのは異例のことなんだって。
前の王様が災害時に亡くなってしまったんだと。
そんな若いうちから王様やるなんて、大変だなぁ。
俺は今21歳で、寿命は80年くらいって言ったら、逆にライジャがビビってたよ。
短すぎるぞって。
ジェネレーションギャップならぬ、異世界ギャップってやつだね~。
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