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第一部 離宮編
12.スイカ栽培(爆速)
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みんなに説明するには実物を見せるのが一番なので、早速畑に出る。
乾燥に強い果物…いや、これって野菜か?瓜科だもんな。
でもフルーツだよな~、甘いし。
まあどっちでもいいわ。
とにかく作ろう。
収穫の終わった畑を湿らせてからタネを点々と植えて、それ加速。
大きくて瑞々しいスイカに育てよ~。
発芽して葉が出ると、蔦がニョロニョロと地面に這い出す。
うお、これはキモい。
「……ちょっと……これは…」
「……うん」
みんなも腰が引けてる。
蔦が早回しでのたくって伸びてくる図は、ビジュアル的にかなり気持ち悪い。
でも美味しいスイカになるんだ、我慢だ我慢。
みんなでドン引きしながらも、黒と緑の玉が大きくなっていくのを期待の目で見守る。
「よし、こんなもんかな」
中々のサイズに膨れた所で、成長を止める。
あ~、この縞々模様をこの異世界で見れるとは思わなかった。
キンキンに冷えてた方がいいけど、まずは味見だ。
ザウスが大振りのナイフでザクザクと割っていく。
切るそばから水が滴るさまに、みんなが驚いてる。
「すごい保水力の実ですな」
ザウスが切り分けながら感心している。
「そうなんだよ、これがスイカの特徴なんだ」
「スイカというのですか。見た目の縞模様が不思議な実ですね」
ふふふ、ライド王子よ、食べたらブッ飛ぶぞ。
「さあ、食べてみてくれ」
物珍しそうに眺めている中で、俺が先陣を切って手を伸ばす。
あのスイカは東北の特産品で、わざわざお取り寄せした逸品だから美味さは折り紙付きだ。
三日月型の真ん中からガブリとかぶりつく。
「……うっま!」
向こうで食べたのと寸分違わずの歯応えと甘み、迸る果汁!
これだよこれ~!
やっべ、超美味い~。
口の端から果汁を滴らせながらガブガブと齧る。
やばい、止まらん。
赤い所が無くなるまで齧って、ようやく一息つく。
「あ~、最高だ」
ふと静かな回りを見たら、全員一心不乱でかぶりついてた。
うん、食べ終わるまで待つよ。
「な…なんだこれは!美味すぎる!」
「すごい水分ですな。それに甘みもあって、これはたまりません」
そうだろう、そうだろう。
自分が開発した訳でもないのに、どや顔になっちまう。
「これなら、交易品としていけるんじゃないか?」
みんなを見回すと、満場一致でお墨つきを貰えた。
真剣な顔で収穫と保存をどうするかとか、衝撃を与えないように輸送する方法とかを早速会議し始めたが、全員口の端から赤い汁、滴ってるぞ。
残りのスイカを今度は畑にいた兵士達や女性陣にふるまうと、全員もれなくスイカの虜になった。
スイカ教、爆誕の瞬間だった。
食べ終わった種を回収して畑に撒いて、再び加速育成。
これは今晩の城の連中のデザート兼、次の種の回収に当てよう。
夜までしっかりと冷たい水で冷やしておいたスイカで、全員もれなく信者になった。
水浴び祭りの次は、スイカ祭りと相成った。
さて、このスイカを交易品の目玉として売り込む訳だが、実は俺が救済を開始してから、外から来る行商人達は城の下を通っている街道の門を閉じて、外でやり取りをしてもらっていた。
情報漏洩を少しでも遅らせようという狙い。
だって広場で水がドバドバ出てたら、奇跡が起きたって即バレじゃん?
ある程度町が回復するまでは、中に部外者を入れずに立て直しを図る算段だった。
元々、行商人の数も大して多くなかったのも幸いして、そんなに混乱はなかった。
門の手前に露店スペースを作って、町の人達が外に出て買い付けをする形にしたんだが、これが結構スムーズにできていた。
で、スイカの流通をどうするかとなった時に、意外な人物が手を上げた。
「私が販路を確保しましょう」
「え…?」
なんと、召喚士のリネルがやると言い出した。
「リネルって召喚士だろ?商売のことなんか分かるのか?」
「ええ、私の家は代々商家で、私自身もずっと商いに従事して参りましたので」
「は?」
なんとリネルのメインの仕事は、城で対外的に物資の流通とかを管理したり交渉したりすることだった。
あの賢者のローブを普通の服に替えて長い髪を後ろで縛り、メガネをかけたら、あらビックリ。
ちゃんとお役人っぽく見えるわ。
ええ、召喚士の方が副業だったの?
そらそうか、今まで召喚とかやってなかった訳だし、職業として成り立ってない訳ね。
俺って、実はかなり偶然呼ばれただけってか?あぶねっ。
で、リネルは商売の才覚はバッチリあって、来ている行商人達の中から良い販路を持ってる人をチョイスしてここの地方で新たに開発に成功した特産物としてスイカの流通経路をサクサクと確立させた。
もちろん行商人達にスイカを試食させて、もれなくスイカ教の信者に仕立てた上でだ。
布教者の才覚もアリか。
有能なヤツだった。
流通地域は、敢えて王都を外した地方から進める。
金の工面としては値段を高めに設定したい所だが、他の水不足の地域にとってもこのスイカは救世主になる訳で。
悩んだ結果、サイズを大と中の2サイズ作ることにした。
中サイズは庶民が買えるリーズナブルな金額にして、大は完熟させて付加価値を上げ、貴族や領主達裕福層に高値で売り込めばいい。
毎日の日課にスイカ栽培が加わった。
乾燥に強い果物…いや、これって野菜か?瓜科だもんな。
でもフルーツだよな~、甘いし。
まあどっちでもいいわ。
とにかく作ろう。
収穫の終わった畑を湿らせてからタネを点々と植えて、それ加速。
大きくて瑞々しいスイカに育てよ~。
発芽して葉が出ると、蔦がニョロニョロと地面に這い出す。
うお、これはキモい。
「……ちょっと……これは…」
「……うん」
みんなも腰が引けてる。
蔦が早回しでのたくって伸びてくる図は、ビジュアル的にかなり気持ち悪い。
でも美味しいスイカになるんだ、我慢だ我慢。
みんなでドン引きしながらも、黒と緑の玉が大きくなっていくのを期待の目で見守る。
「よし、こんなもんかな」
中々のサイズに膨れた所で、成長を止める。
あ~、この縞々模様をこの異世界で見れるとは思わなかった。
キンキンに冷えてた方がいいけど、まずは味見だ。
ザウスが大振りのナイフでザクザクと割っていく。
切るそばから水が滴るさまに、みんなが驚いてる。
「すごい保水力の実ですな」
ザウスが切り分けながら感心している。
「そうなんだよ、これがスイカの特徴なんだ」
「スイカというのですか。見た目の縞模様が不思議な実ですね」
ふふふ、ライド王子よ、食べたらブッ飛ぶぞ。
「さあ、食べてみてくれ」
物珍しそうに眺めている中で、俺が先陣を切って手を伸ばす。
あのスイカは東北の特産品で、わざわざお取り寄せした逸品だから美味さは折り紙付きだ。
三日月型の真ん中からガブリとかぶりつく。
「……うっま!」
向こうで食べたのと寸分違わずの歯応えと甘み、迸る果汁!
これだよこれ~!
やっべ、超美味い~。
口の端から果汁を滴らせながらガブガブと齧る。
やばい、止まらん。
赤い所が無くなるまで齧って、ようやく一息つく。
「あ~、最高だ」
ふと静かな回りを見たら、全員一心不乱でかぶりついてた。
うん、食べ終わるまで待つよ。
「な…なんだこれは!美味すぎる!」
「すごい水分ですな。それに甘みもあって、これはたまりません」
そうだろう、そうだろう。
自分が開発した訳でもないのに、どや顔になっちまう。
「これなら、交易品としていけるんじゃないか?」
みんなを見回すと、満場一致でお墨つきを貰えた。
真剣な顔で収穫と保存をどうするかとか、衝撃を与えないように輸送する方法とかを早速会議し始めたが、全員口の端から赤い汁、滴ってるぞ。
残りのスイカを今度は畑にいた兵士達や女性陣にふるまうと、全員もれなくスイカの虜になった。
スイカ教、爆誕の瞬間だった。
食べ終わった種を回収して畑に撒いて、再び加速育成。
これは今晩の城の連中のデザート兼、次の種の回収に当てよう。
夜までしっかりと冷たい水で冷やしておいたスイカで、全員もれなく信者になった。
水浴び祭りの次は、スイカ祭りと相成った。
さて、このスイカを交易品の目玉として売り込む訳だが、実は俺が救済を開始してから、外から来る行商人達は城の下を通っている街道の門を閉じて、外でやり取りをしてもらっていた。
情報漏洩を少しでも遅らせようという狙い。
だって広場で水がドバドバ出てたら、奇跡が起きたって即バレじゃん?
ある程度町が回復するまでは、中に部外者を入れずに立て直しを図る算段だった。
元々、行商人の数も大して多くなかったのも幸いして、そんなに混乱はなかった。
門の手前に露店スペースを作って、町の人達が外に出て買い付けをする形にしたんだが、これが結構スムーズにできていた。
で、スイカの流通をどうするかとなった時に、意外な人物が手を上げた。
「私が販路を確保しましょう」
「え…?」
なんと、召喚士のリネルがやると言い出した。
「リネルって召喚士だろ?商売のことなんか分かるのか?」
「ええ、私の家は代々商家で、私自身もずっと商いに従事して参りましたので」
「は?」
なんとリネルのメインの仕事は、城で対外的に物資の流通とかを管理したり交渉したりすることだった。
あの賢者のローブを普通の服に替えて長い髪を後ろで縛り、メガネをかけたら、あらビックリ。
ちゃんとお役人っぽく見えるわ。
ええ、召喚士の方が副業だったの?
そらそうか、今まで召喚とかやってなかった訳だし、職業として成り立ってない訳ね。
俺って、実はかなり偶然呼ばれただけってか?あぶねっ。
で、リネルは商売の才覚はバッチリあって、来ている行商人達の中から良い販路を持ってる人をチョイスしてここの地方で新たに開発に成功した特産物としてスイカの流通経路をサクサクと確立させた。
もちろん行商人達にスイカを試食させて、もれなくスイカ教の信者に仕立てた上でだ。
布教者の才覚もアリか。
有能なヤツだった。
流通地域は、敢えて王都を外した地方から進める。
金の工面としては値段を高めに設定したい所だが、他の水不足の地域にとってもこのスイカは救世主になる訳で。
悩んだ結果、サイズを大と中の2サイズ作ることにした。
中サイズは庶民が買えるリーズナブルな金額にして、大は完熟させて付加価値を上げ、貴族や領主達裕福層に高値で売り込めばいい。
毎日の日課にスイカ栽培が加わった。
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