え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

文字の大きさ
12 / 68
第一部  離宮編

12.スイカ栽培(爆速)

しおりを挟む
みんなに説明するには実物を見せるのが一番なので、早速畑に出る。 

乾燥に強い果物…いや、これって野菜か?瓜科だもんな。 

でもフルーツだよな~、甘いし。 

まあどっちでもいいわ。 

とにかく作ろう。 

収穫の終わった畑を湿らせてからタネを点々と植えて、それ加速。 

大きくて瑞々しいスイカに育てよ~。 

発芽して葉が出ると、蔦がニョロニョロと地面に這い出す。 

うお、これはキモい。 

「……ちょっと……これは…」 

「……うん」 

みんなも腰が引けてる。 

蔦が早回しでのたくって伸びてくる図は、ビジュアル的にかなり気持ち悪い。 

でも美味しいスイカになるんだ、我慢だ我慢。 

みんなでドン引きしながらも、黒と緑の玉が大きくなっていくのを期待の目で見守る。 

「よし、こんなもんかな」 

中々のサイズに膨れた所で、成長を止める。 

あ~、この縞々模様をこの異世界で見れるとは思わなかった。 

キンキンに冷えてた方がいいけど、まずは味見だ。 

ザウスが大振りのナイフでザクザクと割っていく。 

切るそばから水が滴るさまに、みんなが驚いてる。 

「すごい保水力の実ですな」 

ザウスが切り分けながら感心している。 

「そうなんだよ、これがスイカの特徴なんだ」 

「スイカというのですか。見た目の縞模様が不思議な実ですね」 

ふふふ、ライド王子よ、食べたらブッ飛ぶぞ。 

「さあ、食べてみてくれ」 

物珍しそうに眺めている中で、俺が先陣を切って手を伸ばす。 

あのスイカは東北の特産品で、わざわざお取り寄せした逸品だから美味さは折り紙付きだ。 

三日月型の真ん中からガブリとかぶりつく。 

「……うっま!」 

向こうで食べたのと寸分違わずの歯応えと甘み、迸る果汁! 

これだよこれ~! 

やっべ、超美味い~。 

口の端から果汁を滴らせながらガブガブと齧る。 

やばい、止まらん。 

赤い所が無くなるまで齧って、ようやく一息つく。 

「あ~、最高だ」 

ふと静かな回りを見たら、全員一心不乱でかぶりついてた。 

うん、食べ終わるまで待つよ。 

「な…なんだこれは!美味すぎる!」 

「すごい水分ですな。それに甘みもあって、これはたまりません」 

そうだろう、そうだろう。 

自分が開発した訳でもないのに、どや顔になっちまう。 

「これなら、交易品としていけるんじゃないか?」 

みんなを見回すと、満場一致でお墨つきを貰えた。 

真剣な顔で収穫と保存をどうするかとか、衝撃を与えないように輸送する方法とかを早速会議し始めたが、全員口の端から赤い汁、滴ってるぞ。 

残りのスイカを今度は畑にいた兵士達や女性陣にふるまうと、全員もれなくスイカの虜になった。 

スイカ教、爆誕の瞬間だった。 

食べ終わった種を回収して畑に撒いて、再び加速育成。 

これは今晩の城の連中のデザート兼、次の種の回収に当てよう。 

夜までしっかりと冷たい水で冷やしておいたスイカで、全員もれなく信者になった。 

水浴び祭りの次は、スイカ祭りと相成った。 

 

さて、このスイカを交易品の目玉として売り込む訳だが、実は俺が救済を開始してから、外から来る行商人達は城の下を通っている街道の門を閉じて、外でやり取りをしてもらっていた。 

情報漏洩を少しでも遅らせようという狙い。 

だって広場で水がドバドバ出てたら、奇跡が起きたって即バレじゃん? 

ある程度町が回復するまでは、中に部外者を入れずに立て直しを図る算段だった。 

元々、行商人の数も大して多くなかったのも幸いして、そんなに混乱はなかった。 

門の手前に露店スペースを作って、町の人達が外に出て買い付けをする形にしたんだが、これが結構スムーズにできていた。 

で、スイカの流通をどうするかとなった時に、意外な人物が手を上げた。 

「私が販路を確保しましょう」 

「え…?」 

なんと、召喚士のリネルがやると言い出した。 

「リネルって召喚士だろ?商売のことなんか分かるのか?」 

「ええ、私の家は代々商家で、私自身もずっと商いに従事して参りましたので」 

「は?」 

なんとリネルのメインの仕事は、城で対外的に物資の流通とかを管理したり交渉したりすることだった。 

あの賢者のローブを普通の服に替えて長い髪を後ろで縛り、メガネをかけたら、あらビックリ。 
ちゃんとお役人っぽく見えるわ。 

ええ、召喚士の方が副業だったの? 

そらそうか、今まで召喚とかやってなかった訳だし、職業として成り立ってない訳ね。 

俺って、実はかなり偶然呼ばれただけってか?あぶねっ。 

 

で、リネルは商売の才覚はバッチリあって、来ている行商人達の中から良い販路を持ってる人をチョイスしてここの地方で新たに開発に成功した特産物としてスイカの流通経路をサクサクと確立させた。 

もちろん行商人達にスイカを試食させて、もれなくスイカ教の信者に仕立てた上でだ。 

布教者の才覚もアリか。 

有能なヤツだった。 

流通地域は、敢えて王都を外した地方から進める。 

金の工面としては値段を高めに設定したい所だが、他の水不足の地域にとってもこのスイカは救世主になる訳で。 

悩んだ結果、サイズを大と中の2サイズ作ることにした。 

中サイズは庶民が買えるリーズナブルな金額にして、大は完熟させて付加価値を上げ、貴族や領主達裕福層に高値で売り込めばいい。 

毎日の日課にスイカ栽培が加わった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...