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第一部 離宮編
13.農場再構築
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スイカの出荷が始まり、薬草が買えるようになると、教会の患者も徐々に快方に向かいだす。
教会に行くたびに、どんどん患者が減っていくのを見るのは嬉しい。
「さて、次は生産体制の再構築だな」
「そうですね。農業が復興すれば、継続的に社会が回りだしますから」
嬉しそうに話すライド王子は、俺が来た時から比べれば顔色も良くなり、しっかり食べて町を巡回しているせいで少し体力もつき始めた感じだ。
まあ、俺と比べたら全然ひょろいが、そもそも空手エキスパートの健康優良児と比べるのは酷ってもんだ。
聞いた話だと、子供の頃から呼吸気管が弱くて病弱だったそうだ。
元の世界でいう喘息かな?
あれって、大人になるにつれてだんだんと良くなる人が多いって聞いたけど、多分この国が砂漠気候で埃っぽいところと、この王子は庶民の暮らしを危惧してあんまり栄養の良い物を食べてこなかったんだろうな。
しっかりと食べて飲んで、適度な運動が出来るようになれば、徐々に改善していくかもな。
俺も空き時間に、ザウスから剣の振り方を習い始めた。
これがまた面白い。
初めのうちは、剣の重さで腕や肩が筋肉痛になったが、振る筋肉が付いてくるとラクに扱えるようになった。
空手のお陰で動体視力はバッチリあるので、突いてくる剣を避けるのは簡単だった。
兵士達とはすぐに互角に打ち合えるようになったが、ザウスからはまだ1本も取れない。
さすがは護衛騎士。
代わりに俺からは空手の基礎を教えた。
基本剣で対峙するこの国では、体術は殆どやらないようで物珍しがられたが、回し蹴りとかでリルの木板を割ったら歓声が上がった。
空手の型は基礎体力や体幹作りにも有効なので、訓練に取り入れることになった。
回し蹴りで板を割った時の女性陣の黄色い歓声は、ちょっとクセになるしな。
「農地の土壌を改善して、水が確保出来ればいけるんだな?」
「はい、元々はちゃんと作物を育てていましたから」
そうなると、耕す人員と管理者だな。
王子が住まう離宮の用地として農地は王族の管理地になっていて、城が農民を雇っていたが、この不作で人もたくさん雇えず、収穫も少ないので人も必要なかったそうだ。
町で見たあの萎びた野菜からも想像できるわ。
水に関しては、先日広場から農地まで水路を通したから問題ない。
まずは町の横にある農地を見に行こう。
「おー、広さは十分にあるな」
町外れの農地は、俺が想像していたものよりも、かなり大きかった。
ここがしっかり機能すれば、離宮とこの町の食料は十分賄える。
賄えるどころか、出荷できるんじゃね?
スイカと並行して野菜も出荷すれば、ますます栄えそうだな。
うん、燃えてきた。
「まずはこの場所のせめて半分が機能すれば……」
「え?全部使うけど?」
悔しそうに呟くライド王子に、俺はビックリして素で返してしまった。
「…え……?」
ポカンとしてる王子の後ろで、ザウスも目を剥いてる。
「全部……ですか…」
「いや、もったいないじゃん。全部使おうぜ」
あー、あれだな。みんな今までの状況を見てきているから、控えめに検討する癖がついてるんだな。
「農地を4等分して、1つは出荷用のスイカを栽培。他の3つで薬草、野菜、果物を植えて、住民に行き渡ったら余剰分は出荷すれば無駄がない」
地産地消だけじゃなくて、出荷できる所まで一気に持って行こうぜ。
俺のビジョンをライド王子達に説明すると、みんなの目に光が灯る。
「そこまで出来たら、素晴らしいですね」
「普通なら簡単にはいかないだろうけど、ここには普通じゃないヤツがいるんだから、いけるんじゃね?」
俺がニヤっと笑って自分を指さすと、ザウスが笑って背中をバンバン叩いてきた。
力、つよっ!
咳き込むわ。
「確かに普通じゃないな!強力な魔法が使えて体術も並みじゃない剣士な聖女様だ」
「聖女はやめい!」
手刀を脇腹に叩き込んだが、サクッと防がれた。
さすがピカ一の護衛、空手の覚えも早い。
畑の砂混じりの土は、数日間流れ込んだ水で、少ししっとりとしてきている。
これをガッツリと掘り返して下の土と混ぜなくては。
「まずは労働力の確保からだな」
今、働いている農民の男達は20人くらい。
これじゃ全然足りないから、募集をかけよう。
ライド王子達に先に広場に行ってもらって、住民達を集めてもらう。
「ザウス、城から農機具と道具を運んできてくれ」
「了解した」
ザウスに農民達を連れて城に行ってもらい、その隙にここで聖女の奇蹟を起こすわけ。
まず、残った兵士達に先日広場から引いてきた水路を、畑を4等分する形で伸ばして囲う作業にとりかかってもらう。
で、俺は畑の外回りに持って来たリルの枝を間隔を開けて刺し、順番に成長加速をかけていく。
兵士達は、木がニョキニョキ育つ奇跡を別段気にもせずに土木作業をサクサクと進めている。
慣れってすごいな。
何本かは乾燥まで進めて、葉と塩と板までとれるようにしておく。
他の木は青々と葉が茂った所でストップ。
これで休憩は日陰でとれるってわけ。
労働環境は大事だからな。
城から戻って来た農民達は、いきなり出現したリルの木々に腰を抜かしていた。びっくりさせてすまん。
でも、全ては『聖女様の奇蹟』で片付くからね。
乾燥したリルの木の伐採と板作りに取りかかった所で、ライド王子達が戻って来た。
やっぱりみんな突如出現した巨大なリルの木にビビっていたが、決まり文句でサクっと納得して聖女様に祈りを捧げていた。
うん、面倒がなくていいわ。
急な募集にも関わらず、男性160人女性30人くらいが集まってくれた。有り難い。
この不毛の地では、仕事もろくに無いもんな。
「男性陣は彼らにやり方を教わって、作業に入ってくれ」
戻って来たザウスが陣頭指揮をとって、素人集団を7.8人くらいに分けて、そこに農民1人がインストラクターとして付く体勢を整える。
彼らには、ひたすら土を耕すという重労働をしてもらう。
教会に行くたびに、どんどん患者が減っていくのを見るのは嬉しい。
「さて、次は生産体制の再構築だな」
「そうですね。農業が復興すれば、継続的に社会が回りだしますから」
嬉しそうに話すライド王子は、俺が来た時から比べれば顔色も良くなり、しっかり食べて町を巡回しているせいで少し体力もつき始めた感じだ。
まあ、俺と比べたら全然ひょろいが、そもそも空手エキスパートの健康優良児と比べるのは酷ってもんだ。
聞いた話だと、子供の頃から呼吸気管が弱くて病弱だったそうだ。
元の世界でいう喘息かな?
あれって、大人になるにつれてだんだんと良くなる人が多いって聞いたけど、多分この国が砂漠気候で埃っぽいところと、この王子は庶民の暮らしを危惧してあんまり栄養の良い物を食べてこなかったんだろうな。
しっかりと食べて飲んで、適度な運動が出来るようになれば、徐々に改善していくかもな。
俺も空き時間に、ザウスから剣の振り方を習い始めた。
これがまた面白い。
初めのうちは、剣の重さで腕や肩が筋肉痛になったが、振る筋肉が付いてくるとラクに扱えるようになった。
空手のお陰で動体視力はバッチリあるので、突いてくる剣を避けるのは簡単だった。
兵士達とはすぐに互角に打ち合えるようになったが、ザウスからはまだ1本も取れない。
さすがは護衛騎士。
代わりに俺からは空手の基礎を教えた。
基本剣で対峙するこの国では、体術は殆どやらないようで物珍しがられたが、回し蹴りとかでリルの木板を割ったら歓声が上がった。
空手の型は基礎体力や体幹作りにも有効なので、訓練に取り入れることになった。
回し蹴りで板を割った時の女性陣の黄色い歓声は、ちょっとクセになるしな。
「農地の土壌を改善して、水が確保出来ればいけるんだな?」
「はい、元々はちゃんと作物を育てていましたから」
そうなると、耕す人員と管理者だな。
王子が住まう離宮の用地として農地は王族の管理地になっていて、城が農民を雇っていたが、この不作で人もたくさん雇えず、収穫も少ないので人も必要なかったそうだ。
町で見たあの萎びた野菜からも想像できるわ。
水に関しては、先日広場から農地まで水路を通したから問題ない。
まずは町の横にある農地を見に行こう。
「おー、広さは十分にあるな」
町外れの農地は、俺が想像していたものよりも、かなり大きかった。
ここがしっかり機能すれば、離宮とこの町の食料は十分賄える。
賄えるどころか、出荷できるんじゃね?
スイカと並行して野菜も出荷すれば、ますます栄えそうだな。
うん、燃えてきた。
「まずはこの場所のせめて半分が機能すれば……」
「え?全部使うけど?」
悔しそうに呟くライド王子に、俺はビックリして素で返してしまった。
「…え……?」
ポカンとしてる王子の後ろで、ザウスも目を剥いてる。
「全部……ですか…」
「いや、もったいないじゃん。全部使おうぜ」
あー、あれだな。みんな今までの状況を見てきているから、控えめに検討する癖がついてるんだな。
「農地を4等分して、1つは出荷用のスイカを栽培。他の3つで薬草、野菜、果物を植えて、住民に行き渡ったら余剰分は出荷すれば無駄がない」
地産地消だけじゃなくて、出荷できる所まで一気に持って行こうぜ。
俺のビジョンをライド王子達に説明すると、みんなの目に光が灯る。
「そこまで出来たら、素晴らしいですね」
「普通なら簡単にはいかないだろうけど、ここには普通じゃないヤツがいるんだから、いけるんじゃね?」
俺がニヤっと笑って自分を指さすと、ザウスが笑って背中をバンバン叩いてきた。
力、つよっ!
咳き込むわ。
「確かに普通じゃないな!強力な魔法が使えて体術も並みじゃない剣士な聖女様だ」
「聖女はやめい!」
手刀を脇腹に叩き込んだが、サクッと防がれた。
さすがピカ一の護衛、空手の覚えも早い。
畑の砂混じりの土は、数日間流れ込んだ水で、少ししっとりとしてきている。
これをガッツリと掘り返して下の土と混ぜなくては。
「まずは労働力の確保からだな」
今、働いている農民の男達は20人くらい。
これじゃ全然足りないから、募集をかけよう。
ライド王子達に先に広場に行ってもらって、住民達を集めてもらう。
「ザウス、城から農機具と道具を運んできてくれ」
「了解した」
ザウスに農民達を連れて城に行ってもらい、その隙にここで聖女の奇蹟を起こすわけ。
まず、残った兵士達に先日広場から引いてきた水路を、畑を4等分する形で伸ばして囲う作業にとりかかってもらう。
で、俺は畑の外回りに持って来たリルの枝を間隔を開けて刺し、順番に成長加速をかけていく。
兵士達は、木がニョキニョキ育つ奇跡を別段気にもせずに土木作業をサクサクと進めている。
慣れってすごいな。
何本かは乾燥まで進めて、葉と塩と板までとれるようにしておく。
他の木は青々と葉が茂った所でストップ。
これで休憩は日陰でとれるってわけ。
労働環境は大事だからな。
城から戻って来た農民達は、いきなり出現したリルの木々に腰を抜かしていた。びっくりさせてすまん。
でも、全ては『聖女様の奇蹟』で片付くからね。
乾燥したリルの木の伐採と板作りに取りかかった所で、ライド王子達が戻って来た。
やっぱりみんな突如出現した巨大なリルの木にビビっていたが、決まり文句でサクっと納得して聖女様に祈りを捧げていた。
うん、面倒がなくていいわ。
急な募集にも関わらず、男性160人女性30人くらいが集まってくれた。有り難い。
この不毛の地では、仕事もろくに無いもんな。
「男性陣は彼らにやり方を教わって、作業に入ってくれ」
戻って来たザウスが陣頭指揮をとって、素人集団を7.8人くらいに分けて、そこに農民1人がインストラクターとして付く体勢を整える。
彼らには、ひたすら土を耕すという重労働をしてもらう。
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