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第一部 離宮編
14.労働環境整備
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「アキラ、女性達はどういう理由で集めたのですか?」
そう、俺は事前に女性達も募集をかけてくれと頼んでおいたんだ。
「もちろん、働いてもらうんだよ」
おいおい王子よ、そのギョッとした顔は、思いっきり勘違いしてるだろ。
畑作業が男性陣だけで回るなんて思ったらダメだぜ。
ワタワタとしてる王子を置いて、俺は女性達の所に行く。
集まったのは年齢がバラバラの30人くらい。
「えー、まずこの中で商いの経験がある人はいるかな?帳簿付けとか」
ザワザワしている中から、スッと手が上がった。
おお、期待していなかったが一人いた!
30代くらいの女性で、出稼ぎで一時期商家に勤めていたという。
よしよし、この人には臨時で総務人事を受け持ってもらおう。
畑を会社に見立てて、勤怠を管理してもらうんだ。
出勤した人を帳簿に付けて、まとめて城に申請して給料を出してもらい、支払いもやってもらう。
高校生の俺が何で知ってるかって?
そりゃあ、ちょっとお高いマウンテンバイクが欲しくて、引っ越し業者のバイトととかしたからね。
現場作業だけかと思ったのに、人手不足で事務までやらされた経験がこんなところで役に立った。
その時に、こういった仕事は男性も女性も同等に活躍してしてるって知ったんだ。
畑仕事は力がいるから男性に、その他の仕事は女性にお願いしたいってわけ。
総務人事が決まったら、次は労働環境の整備だ。
残りの女性達には、リルの木の下に落ちた塩と葉の回収をお願いする。
この人数なら、そんなに時間はかからないだろう。
ただ、子供を連れた二人の女性達には、こちらに来てもらった。
ライド王子には子供連れもオーケーと言っておいたが、何をやるか分からない状況で応募してくるご婦人はそうそういないよな。
俺はその2人に、他の子供達の相手も出来るか聞いてみた。
「他の子供達の世話……ですか?」
「そう、託児所……あー、他のお母さん達がここで畑仕事をしている間、その子供達の面倒をみてもらいたんだ」
「ああ、それなら大丈夫ですよ」
緊張していた2人の顔が、安心したように緩む。
「いつも近所の子供達を預かったりしてますから」
子供達の面倒をみるのが仕事になるから給金も出ると聞くと、二人は更にニコニコになった。
「まあ、それは嬉しいわ」
「あ、そうしたら近所のお友達にも声をかけてもいいですか?小さい子供がいるので応募出来なかった人もいるんです」
ナイス!それを狙ってたんだ。
「もちろんです。人手はまだまだ沢山必要なんで、人づてで広めてもらえますか?」
「分かりました!」
嬉しそうに町に向かう二人を見送っていると、ライド王子とリネルが目をキラキラさせながら近寄ってきた。
うお、この二人がそんな顔をするとアイドルオーラみたいなもんが発生するな。
「アキラ……素晴らしい発想ですね。そんな人員の確保など、全く思いつきませんでした」
この世界では、子供がいる家庭では子供が大きくなるまで母親が家庭にいて、ずっと面倒を見るのが常識になっているらしい。
孤児なんかは教会で面倒を見ているが、一般的な保育園の発想はないのか。
女性が働くこと自体は禁忌じゃないのなら、貴重な戦力だからどんどん外に出てもらおう。
水路の整備をしている兵士達の半分をこちらに呼んで、託児所になる小さな小屋の組み立てを始めてもらう。
あとは、煮炊きが出来る調理場も併設だな。
リルの板を運んで兵士達がワラワラやっていると、畑で作業していた男達の中から何人かがこっちにやってきた。
「なあ兵士さん達、何か建てるのかい?」
「ああ、小さめの小屋をここに建てるんだ」
「それなら、俺らがやった方が早くて正確に出来るぜ?」
見事な上腕二頭筋のオヤジ達は、大工だった。
忘れてたわ~、大工。
そりゃあいるわな、この世界でも。
偶然にも応募してきた中に大工が3人もいた。
この不況の中、大工も仕事がなくて困ってたんだと。
餅は餅屋だ、ぜひお願いしよう。
それならちゃんと土台からってんで、レンガとかも運び入れて作業開始。
兵士達には調理場作りに専念してもらう。
こっちは昼までに完成させなくちゃいけないからな。
丁度そのとき、広場で作業していた兵士から、シャワー施設がほぼ完成したとの連絡が来た。
急いで広場に行くと、水場の横に10人くらいが入れる箱が出来ていた。
水場は今日も賑わっていたが、これから『聖女様の奇蹟』が広場に届くので一時的に退避してくれと言ったら、潮が引くように人っ子一人いなくなった。
便利な文言だな、これ。
兵士達が布を持って回りを囲むと、俺は素早く乾燥を加速させてレンガを固定し、上部にある箱型の空間に温かい雨を降らす小さい雨雲をイメージして発生させる。
ある程度貯まってから、横に取り付けた防水皮の口を緩めると穴を開けた布に流れてシャワーが出るスタイルだ。
入る人数を決めて、浴びる・体を洗う・流すの順にすれば、途中途中で水が貯まるから無駄がない。
当面は誰でも無料で入れるようにして、後々安い使用料をとって、それを管理する水業者の給料にする。
バッチリじゃん。
少しの兵士と管理人に後を任せて、また畑にUターン。
忙しいっ。
調理場が完成していたので、城から運んできた食材を下ろし、リルの葉の回収を終えた女性陣に賄いの準備を頼む。
そう、この農場は賄い付きなのだ。
子供を預けて作業できて、昼飯付き。
託児所が完成したら、その横にシャワー施設も作って、仕事終わりにシャワーも浴びて帰れる。
どうよ?この職場環境。
説明したら、ライド王子達の目が更にキラキラになった。もう眩しいレベルよ。
土の掘り起こしでヘトヘトになった男達は、バーベキュースタイルの焼き野菜と具沢山のスープに歓声を上げて飛びついていた。
キンキンに冷えた果実水は一番人気だった。
箱の中に防水皮を貼った簡易クーラーボックスを用意しておいて良かった。
乾杯の音頭は、もちろん『聖女様の奇蹟』に感謝を!だった。
我らの声が届きますようにと口々に祈ってたけど、うん、しっかり届いてるからな。
昼前には小屋の土台が粗方積み上がっていたので、みんなが木陰で昼休憩している隙に布で覆ってサクっと乾燥。
すぐに木枠が乗せられる状態を見て、大工達が目を白黒させていた。
聖女様、小回り効くからね。
さて、明日は託児所が完成し次第、シャワー施設と野菜の出荷場を作ろう。
ここが軌道に乗れば、当面の危機は脱出できるだろう。
そう、俺は事前に女性達も募集をかけてくれと頼んでおいたんだ。
「もちろん、働いてもらうんだよ」
おいおい王子よ、そのギョッとした顔は、思いっきり勘違いしてるだろ。
畑作業が男性陣だけで回るなんて思ったらダメだぜ。
ワタワタとしてる王子を置いて、俺は女性達の所に行く。
集まったのは年齢がバラバラの30人くらい。
「えー、まずこの中で商いの経験がある人はいるかな?帳簿付けとか」
ザワザワしている中から、スッと手が上がった。
おお、期待していなかったが一人いた!
30代くらいの女性で、出稼ぎで一時期商家に勤めていたという。
よしよし、この人には臨時で総務人事を受け持ってもらおう。
畑を会社に見立てて、勤怠を管理してもらうんだ。
出勤した人を帳簿に付けて、まとめて城に申請して給料を出してもらい、支払いもやってもらう。
高校生の俺が何で知ってるかって?
そりゃあ、ちょっとお高いマウンテンバイクが欲しくて、引っ越し業者のバイトととかしたからね。
現場作業だけかと思ったのに、人手不足で事務までやらされた経験がこんなところで役に立った。
その時に、こういった仕事は男性も女性も同等に活躍してしてるって知ったんだ。
畑仕事は力がいるから男性に、その他の仕事は女性にお願いしたいってわけ。
総務人事が決まったら、次は労働環境の整備だ。
残りの女性達には、リルの木の下に落ちた塩と葉の回収をお願いする。
この人数なら、そんなに時間はかからないだろう。
ただ、子供を連れた二人の女性達には、こちらに来てもらった。
ライド王子には子供連れもオーケーと言っておいたが、何をやるか分からない状況で応募してくるご婦人はそうそういないよな。
俺はその2人に、他の子供達の相手も出来るか聞いてみた。
「他の子供達の世話……ですか?」
「そう、託児所……あー、他のお母さん達がここで畑仕事をしている間、その子供達の面倒をみてもらいたんだ」
「ああ、それなら大丈夫ですよ」
緊張していた2人の顔が、安心したように緩む。
「いつも近所の子供達を預かったりしてますから」
子供達の面倒をみるのが仕事になるから給金も出ると聞くと、二人は更にニコニコになった。
「まあ、それは嬉しいわ」
「あ、そうしたら近所のお友達にも声をかけてもいいですか?小さい子供がいるので応募出来なかった人もいるんです」
ナイス!それを狙ってたんだ。
「もちろんです。人手はまだまだ沢山必要なんで、人づてで広めてもらえますか?」
「分かりました!」
嬉しそうに町に向かう二人を見送っていると、ライド王子とリネルが目をキラキラさせながら近寄ってきた。
うお、この二人がそんな顔をするとアイドルオーラみたいなもんが発生するな。
「アキラ……素晴らしい発想ですね。そんな人員の確保など、全く思いつきませんでした」
この世界では、子供がいる家庭では子供が大きくなるまで母親が家庭にいて、ずっと面倒を見るのが常識になっているらしい。
孤児なんかは教会で面倒を見ているが、一般的な保育園の発想はないのか。
女性が働くこと自体は禁忌じゃないのなら、貴重な戦力だからどんどん外に出てもらおう。
水路の整備をしている兵士達の半分をこちらに呼んで、託児所になる小さな小屋の組み立てを始めてもらう。
あとは、煮炊きが出来る調理場も併設だな。
リルの板を運んで兵士達がワラワラやっていると、畑で作業していた男達の中から何人かがこっちにやってきた。
「なあ兵士さん達、何か建てるのかい?」
「ああ、小さめの小屋をここに建てるんだ」
「それなら、俺らがやった方が早くて正確に出来るぜ?」
見事な上腕二頭筋のオヤジ達は、大工だった。
忘れてたわ~、大工。
そりゃあいるわな、この世界でも。
偶然にも応募してきた中に大工が3人もいた。
この不況の中、大工も仕事がなくて困ってたんだと。
餅は餅屋だ、ぜひお願いしよう。
それならちゃんと土台からってんで、レンガとかも運び入れて作業開始。
兵士達には調理場作りに専念してもらう。
こっちは昼までに完成させなくちゃいけないからな。
丁度そのとき、広場で作業していた兵士から、シャワー施設がほぼ完成したとの連絡が来た。
急いで広場に行くと、水場の横に10人くらいが入れる箱が出来ていた。
水場は今日も賑わっていたが、これから『聖女様の奇蹟』が広場に届くので一時的に退避してくれと言ったら、潮が引くように人っ子一人いなくなった。
便利な文言だな、これ。
兵士達が布を持って回りを囲むと、俺は素早く乾燥を加速させてレンガを固定し、上部にある箱型の空間に温かい雨を降らす小さい雨雲をイメージして発生させる。
ある程度貯まってから、横に取り付けた防水皮の口を緩めると穴を開けた布に流れてシャワーが出るスタイルだ。
入る人数を決めて、浴びる・体を洗う・流すの順にすれば、途中途中で水が貯まるから無駄がない。
当面は誰でも無料で入れるようにして、後々安い使用料をとって、それを管理する水業者の給料にする。
バッチリじゃん。
少しの兵士と管理人に後を任せて、また畑にUターン。
忙しいっ。
調理場が完成していたので、城から運んできた食材を下ろし、リルの葉の回収を終えた女性陣に賄いの準備を頼む。
そう、この農場は賄い付きなのだ。
子供を預けて作業できて、昼飯付き。
託児所が完成したら、その横にシャワー施設も作って、仕事終わりにシャワーも浴びて帰れる。
どうよ?この職場環境。
説明したら、ライド王子達の目が更にキラキラになった。もう眩しいレベルよ。
土の掘り起こしでヘトヘトになった男達は、バーベキュースタイルの焼き野菜と具沢山のスープに歓声を上げて飛びついていた。
キンキンに冷えた果実水は一番人気だった。
箱の中に防水皮を貼った簡易クーラーボックスを用意しておいて良かった。
乾杯の音頭は、もちろん『聖女様の奇蹟』に感謝を!だった。
我らの声が届きますようにと口々に祈ってたけど、うん、しっかり届いてるからな。
昼前には小屋の土台が粗方積み上がっていたので、みんなが木陰で昼休憩している隙に布で覆ってサクっと乾燥。
すぐに木枠が乗せられる状態を見て、大工達が目を白黒させていた。
聖女様、小回り効くからね。
さて、明日は託児所が完成し次第、シャワー施設と野菜の出荷場を作ろう。
ここが軌道に乗れば、当面の危機は脱出できるだろう。
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