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第一部 離宮編
15.農場稼働開始
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翌日、城の農園でストック用の種や備蓄食材の確保という朝のルーティーンが終わると、俺達は農場に急いだ。
今日中にここを軌道に乗せたい。
「あれ?増えてる…?」
ざっと見た感じでも分かるくらい、畑に来ている町民の数が増えている。
昨日働いた人達が、口伝で広めてくれたようだ。
子連れの女性陣も増えている。
よしよし、この調子で農民を増やしていけば、ますます復興に拍車がかかるな。
人事の女性に農民登録をしてもらってから、畑の開拓作業に入ってもらう。
大工達は既に作業を始めていて、託児所はもう骨組みが組み上がる寸前までいっていた。
「おお~、おっさん達仕事が早いな」
「久しぶりの現場だからな、楽しみで早起きしちまったよ」
うん、職人魂に火がついたな。
すげー楽しそうに釘打ちしてるもんな。
「美味いもん食って、力も出るしな」
賄い付きは効果抜群だ。
昼前には屋根も乗って完成するようなので、それまでは子供達にはリルの葉っぱ拾いを遊びながらしてもらおう。
さて、今日から作物の出荷体制を確立せねば。
昨日耕し終えた場所に、女性達に野菜の種を撒いていってもらう。
その後は水路からの水やりも頼み、俺達は託児所の横に集まった。
ここに簡易の選果場を作る。
兵士達やザウスと一緒に、リル材を加工して台やら木箱やらを作っていく。
残った女性数人には、城から持って来た動物の皮を縫ったり貼り合わせたりして木箱の内側の緩衝材を製作してもらう。
年配の人達には、籠を編んでもらった。
みんな何かしらの手作業が得意で助かるわ。
こっちの世界には無かった土木作業で使う一輪車を作ったら、またライド王子とリネルからキラキラの目で見られた。
「おお、これは使いやすいですな」
ザウスが転がしてみて、右に左に方向転換できる一輪車にしきりと感心していた。
畑の中で、作物を避けながら収穫するのに便利だと思ったんだよな。
これなら女性でも簡単に扱えるだろうし。
「これは名前はあるのですか?」
「名前……?」
リネルに聞かれて、ぼんやりと思い出した。
土方のバイトをしている友人から聞いたことがあったな。
「業界用語ではネコって呼ぶらしいよ。由来は知らないけど」
「ネコ……ですか」
みんな微妙そうな顔をしている。
こっちの世界にネコはいないだろうから、ピンと来ないよな。
「えっと………こんな感じの動物だな」
黒いペンキみたいな塗料があったので、一輪車の側面にネコの顔をさくっと描いてみた。
絵心なんて無いから、絵文字みたいなヤツね。
「なんか可愛い~」
意外にも女性陣にウケた。
ちょっと嬉しい。
後に増産された一輪車の側面に、全てこの絵が描かれたのを知ったのはかなり後だった。
ちょっと、ハズい。
「リネル、種と株は?」
「こちらに準備してあります」
馬車から下ろしてきたのは、行商人から買った薬草の種や苗。
スイカの売れ行きが好調だかだから、薬草が買えるようになったんだ。
でも、どうせなら自分の所で作れれば更に良いじゃん?
この気候で栽培可能な種類を選んで苗と種を購入しておいたんだ。
むしろ逆に出荷できりゃサイコー。
昼前までに耕せた所に、この苗を植えて種も撒く。
全員休憩も兼ねて畑から上がってもらい、水分補給をしてからお祈りタイムにする。
お祈りってのは、これから聖女様に奇蹟を行って頂くので、全員城の方を向いて祈りを捧げましょうっていうパフォーマンスだ。
みんな聖女様はお城にいるって思ってるからね。
うん、頑張るからな。
みんなが一心不乱に祈っている隙に、俺は畑に加速を掛ける。
今日は出荷まで漕ぎつける為に、完熟までもっていく。
「おお!聖女様の奇蹟が届いたぞ!」
ザウスが驚いたように叫ぶと、みんなが振り返ってワッサリと実る畑に目を見開いた。
「ええっ!嘘っ!……これは一体…」
「うわあーっ!」
「信じられない……これが聖女様のお力…」
飛び跳ねて喜ぶ人や、跪いて祈る人、抱き合って喜ぶ人。
いつ見ても弾ける笑顔はいいもんだなあ。
「おお聖女様、ありがとうございますぅ~」
「お優しい聖女様、ばんざーい!」
いやいや、お前ら。
何も知らない町民達はいざ知らず、ザウスを含めて兵士達の笑顔は、ニコニコというよりはニヤニヤだった。
絶対にわざとだろ!
「聖女様ぁ~」
と体をクネらせている兵士達に、こめかみにビシッと青筋が立つ。
お前ら全員、城に帰ったら回し蹴りな。
午後からは全員で収穫に勤しんで、なかなかの量になった。
選別・箱詰めされた野菜や薬草は、すぐに出荷にもっていく。
選別時に小さいサイズや変形で除外したものは、みんなの昼食として賄いに回す。
向こうで言うところの規格外ってヤツね。
でも味には問題が無いから残さず使い切るよ。
完璧なサステナブルだ。
明日からは更に農地を拡大しつつ、作物は段階的に実るように調整すればいいいだろう。
大工達には選果場の屋根の設置とシャワー施設の建設を進めてもらおう。
今日中にここを軌道に乗せたい。
「あれ?増えてる…?」
ざっと見た感じでも分かるくらい、畑に来ている町民の数が増えている。
昨日働いた人達が、口伝で広めてくれたようだ。
子連れの女性陣も増えている。
よしよし、この調子で農民を増やしていけば、ますます復興に拍車がかかるな。
人事の女性に農民登録をしてもらってから、畑の開拓作業に入ってもらう。
大工達は既に作業を始めていて、託児所はもう骨組みが組み上がる寸前までいっていた。
「おお~、おっさん達仕事が早いな」
「久しぶりの現場だからな、楽しみで早起きしちまったよ」
うん、職人魂に火がついたな。
すげー楽しそうに釘打ちしてるもんな。
「美味いもん食って、力も出るしな」
賄い付きは効果抜群だ。
昼前には屋根も乗って完成するようなので、それまでは子供達にはリルの葉っぱ拾いを遊びながらしてもらおう。
さて、今日から作物の出荷体制を確立せねば。
昨日耕し終えた場所に、女性達に野菜の種を撒いていってもらう。
その後は水路からの水やりも頼み、俺達は託児所の横に集まった。
ここに簡易の選果場を作る。
兵士達やザウスと一緒に、リル材を加工して台やら木箱やらを作っていく。
残った女性数人には、城から持って来た動物の皮を縫ったり貼り合わせたりして木箱の内側の緩衝材を製作してもらう。
年配の人達には、籠を編んでもらった。
みんな何かしらの手作業が得意で助かるわ。
こっちの世界には無かった土木作業で使う一輪車を作ったら、またライド王子とリネルからキラキラの目で見られた。
「おお、これは使いやすいですな」
ザウスが転がしてみて、右に左に方向転換できる一輪車にしきりと感心していた。
畑の中で、作物を避けながら収穫するのに便利だと思ったんだよな。
これなら女性でも簡単に扱えるだろうし。
「これは名前はあるのですか?」
「名前……?」
リネルに聞かれて、ぼんやりと思い出した。
土方のバイトをしている友人から聞いたことがあったな。
「業界用語ではネコって呼ぶらしいよ。由来は知らないけど」
「ネコ……ですか」
みんな微妙そうな顔をしている。
こっちの世界にネコはいないだろうから、ピンと来ないよな。
「えっと………こんな感じの動物だな」
黒いペンキみたいな塗料があったので、一輪車の側面にネコの顔をさくっと描いてみた。
絵心なんて無いから、絵文字みたいなヤツね。
「なんか可愛い~」
意外にも女性陣にウケた。
ちょっと嬉しい。
後に増産された一輪車の側面に、全てこの絵が描かれたのを知ったのはかなり後だった。
ちょっと、ハズい。
「リネル、種と株は?」
「こちらに準備してあります」
馬車から下ろしてきたのは、行商人から買った薬草の種や苗。
スイカの売れ行きが好調だかだから、薬草が買えるようになったんだ。
でも、どうせなら自分の所で作れれば更に良いじゃん?
この気候で栽培可能な種類を選んで苗と種を購入しておいたんだ。
むしろ逆に出荷できりゃサイコー。
昼前までに耕せた所に、この苗を植えて種も撒く。
全員休憩も兼ねて畑から上がってもらい、水分補給をしてからお祈りタイムにする。
お祈りってのは、これから聖女様に奇蹟を行って頂くので、全員城の方を向いて祈りを捧げましょうっていうパフォーマンスだ。
みんな聖女様はお城にいるって思ってるからね。
うん、頑張るからな。
みんなが一心不乱に祈っている隙に、俺は畑に加速を掛ける。
今日は出荷まで漕ぎつける為に、完熟までもっていく。
「おお!聖女様の奇蹟が届いたぞ!」
ザウスが驚いたように叫ぶと、みんなが振り返ってワッサリと実る畑に目を見開いた。
「ええっ!嘘っ!……これは一体…」
「うわあーっ!」
「信じられない……これが聖女様のお力…」
飛び跳ねて喜ぶ人や、跪いて祈る人、抱き合って喜ぶ人。
いつ見ても弾ける笑顔はいいもんだなあ。
「おお聖女様、ありがとうございますぅ~」
「お優しい聖女様、ばんざーい!」
いやいや、お前ら。
何も知らない町民達はいざ知らず、ザウスを含めて兵士達の笑顔は、ニコニコというよりはニヤニヤだった。
絶対にわざとだろ!
「聖女様ぁ~」
と体をクネらせている兵士達に、こめかみにビシッと青筋が立つ。
お前ら全員、城に帰ったら回し蹴りな。
午後からは全員で収穫に勤しんで、なかなかの量になった。
選別・箱詰めされた野菜や薬草は、すぐに出荷にもっていく。
選別時に小さいサイズや変形で除外したものは、みんなの昼食として賄いに回す。
向こうで言うところの規格外ってヤツね。
でも味には問題が無いから残さず使い切るよ。
完璧なサステナブルだ。
明日からは更に農地を拡大しつつ、作物は段階的に実るように調整すればいいいだろう。
大工達には選果場の屋根の設置とシャワー施設の建設を進めてもらおう。
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