え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

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第一部  離宮編

16.根本対策

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さて、町の生活復旧も目処が立ったところで、根本的な対策を始めないといけない。 

今は俺の魔法で水の確保ができてるけど、いなくなったらその魔法が継続されるとは考えづらい。 

この世界に俺がいられるのは一年。 

実質あと10ヶ月くらいだ。 

ジオゲネス帝国には大小あわせて7つの都市があるらしい。 

王都を入れると8。 

ってことは、だいたい月イチペースで復興させにゃならんってこと? 

どんな無理ゲーよ。 

会議室にいるメンバーがみんなキラキラした目で見てくるけど、無理だからな? 

俺、人間ですから。 

そういうことは神様にお願いしようね? 

「何かいい案がある人はいないのか?」 

沈黙が痛い。 

そうだよなぁ、あるならずっと前にやってるよな。 

一応、俺の能力である『探知(サーチ)』で周辺の土地を探してみたんだよ。 

遠くの山にある水源からここまで川があったんじゃないのかと思ってさ。 

あるにはあったんだよ、川。 

それこそ、広場のど真ん中を通ってたわ。 

ただし、地下深くを。 

多分30メートルくらい。 

そんな深さまで土を掘るのに、どれくらいかかるか。 

30メートルって、10階建てのマンションくらいの高さだぜ? 

「元々、この国では建物はレンガを積んで建てるだけですので、掘削という技術も工具も無いのです」 

ライド王子が難しい顔で首を振る。 

「地震が無いのか、この国は」 

「……地震…とは?」 

おおう、概念すら無いのかい。 

幸せだなぁ。 

地震大国出身としては、羨ましい感覚だぜ。 

じゃあ基礎の杭打ちなんて知らんわな。 

う~ん、頭打ちだ。 

足の下に水があるのに届かない悔しさよ。 

みんなで頭を抱えて、会議は一旦中断する。 

 

気分転換も兼ねて王宮の畑に出て、ぼんやりと座り込む。 

「地面を掘る機械なんて、今から作れねえしなぁ……」 

そもそもパワーショベルの構造なんか知らないし。 

高校生にそんな知識あるかっての。 

井戸さえ掘れれば、他の土地でも水脈を見つけて回りを整備すれば簡単に水不足が解消する。 

「あ、アキラ様~」 

畑で収穫の籠を持った女性達がニコニコと手を振ってくる。 

おお、美人達の笑顔は気持ちが上がるぜ。 

「良い所にいらっしゃいましたな、アキラ様」 

ニヤニヤしながら手を振り返していたら、後ろからいきなり声を掛けられてビクっとなった。 

「お……テッセルか」 

振り返ると、医師のテッセルがこちらに向かって歩いてきた。 

かなりの老齢にも関わらずテッセルは腰も曲がっておらず、しっかりとした足取りで歩く。 

「今度、出荷用に花を混ぜ込んだリルの石鹸を作ろうと思いましてな。試作用にリルの木を1本加速して育てて頂けないでしょうか」 

「へえ~花入りか」 

花の入った石鹸か、それは女性陣にウケそうだな。 

甘い香りもするし、貴族達にも売れるだろう。 

あ~、あっちの世界にも色んな香り付きの石鹸あったなあ。 

「そうだ、フアーカの葉を入れたヤツとかもどうかな?」 

フアーカは葉っぱがライムみたいな香りがする植物だ。 

実は桃みたいだけどな。 

「おお、それも良さそうですな。一緒に作ってみましょう」 

あれなら男性にもウケそうだ。 

これからは男も体臭に気を使う時代だぜ。 

「とりあえず1本でいいか」 

少し離れたところで、1本のリルに狙いを定めて加速を開始する。 

加速と降雨はとても利用価値が高かったが、探知はイマイチ成果が上がらないせいか、何だかなぁと思ってしまう。 

もちろん水脈を見つけることは重要なんだが、見つけても利用出来ないのでは意味が無い。 

「………様……アキラ様!危のうございます!」 

加速しながらつらつらと考え込んでいた俺は、テッセルの叫び声にはっと我に返った。 

「!うわっ」 

ぼーっと加速を続けていたせいで、リルの木は緑樹を通り越してカラッカラに干乾びていた。 

痩せ細ったせいで幹の回りに隙間が出来て、こちら側にグラリと木が傾いた。 

「あっぶね~」 

横倒しまでは行かなかったが、結構傾いている。 

いくら乾燥していても、この大木の下敷きになったら、ペチャンコだ。 

距離をとった俺に、テッセルや近くにいた兵士達が慌てて近づいてきた。 

「大丈夫ですか?アキラ様」 

「ああ、大丈夫。ごめん、考え事をしていたら加速し過ぎた」 

45℃まで傾いた完全に干からびたリルの木に、兵士達が笑う。 

「こりゃあカラッカラだ。良く燃えるぜ」 

葉っぱまで枯れてしまっては、全部薪にするしかない。 

「やっちまったなぁ」 

頭を掻く俺に、兵士達はニコニコ笑って首を振る。 

「いやぁ、ここまで乾燥してると引っこ抜くのが楽で助かりますよ」 

あー、根っこの部分な。 

俺は傾いたリルの木に、反対側から近づいてみた。 

「へえ~、リルってかなり深く根を張るんだな」 

まるで掘ったように丸く空いた穴を覗きながら呟くと、兵士のひとりが頷く。 

「これだけ大きく育つ木ですからね。地上の幹の高さの半分くらい深く根を張りますよ」 

………根……乾燥……穴………薪…? 

「……あ……ああああぁ!これだぁ!」 

閃いた! 

すげー、俺って天才じゃね? 
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