え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

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第二部  復興編

4.作戦会議

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全員シャワーでさっぱりして、ボリューム満点の夕食を食べてから、会議室で作戦会議をスタートした。 

まず他の土地に行くに当たって、ここの管理をどうするか。 

ライド王子、ザウス、リネルはもちろんのこと、やり方に精通した兵士も連れて行きたいのだ。 

他の場所で一から教えている時間は無い。 

これから大小合わせて7つの都市を回り、最後は王都まで復興となると、月イチペースだ。 

それにプラスして、移動にかかる時間もある訳で。 

何より、これから先はガザル王子の妨害も視野に入れなければならない。 

ここを離れる際には、制限していた立ち入りも解除するから、異変はすぐに王宮が知ることとなる。 

「何か方策はありませんか?シシル宰相」 

頼みの綱である宰相に、ライド王子が目を向ける。 

「……まず、ここの補充兵士は王都から派遣させよう。50人程度ならすぐに動かせる。派遣された兵士達の教育は残ったここの兵士達に任せればよかろう」 

「おお、そうしたら50人程度は連れて行けそうですね」 

ザウスの目が輝く。 

うん、それならやりやすいな。 

大人数での移動は目立つし、機動性にも欠けるもんな。 

「リネルがやっている管理運営は、私の部下を充てよう」 

「えっ!良いのですか?宰相様の部下の方達は皆さん優秀な方ばかりですから、安心してお任せできます」 

リネルが飛び上がらんばかりに喜んでいる。 

相当優秀なメンバーを抱えてるんだなぁ。 

まあ宰相だもんな。国の中枢を担うエリートが集まってるよな。 

「次は着手する手順だが……アキラ殿、何か案を持っているな?」 

おっと、考え込んでいたら宰相から指名されてしまった。 

「ん~……ここで工事をしてみて思ったんですけど、一番時間を食うのは灌漑設備の構築なんですよね」 

「ほう」 

俺は頭で思い描いた構想を、みんなに話してみる。 

「水を掘って供給するのはそんなに時間はかからないけど、貯水場を作ったり畑へ水路を引くのが大変なんですよ。こればっかりは人手に頼らないとダメなんで」 

とにかく土方の日々だったもんな。 

俺、向こうに戻ったら日雇い土方のバイト楽々やれそうだもん。 

「なので、先に設備の建設を進めて、完成した所から俺が行って井戸を掘るのが一番いいかなと」 

「うん、それは効率が良さそうですね」 

ライド王子もうんうんと頷いている。 

「ただ、始めに俺がサーチで水脈の位置を特定しないと建設場所が決められないという欠点があります」 

でも、水不足は待ったなしだ。 

「……ならば、2本立てで行ったらどうか?」 

「2本立て?」 

シシル宰相の案はこうだ。 

行った先で、まず俺がサーチをかけて貯水場の位置を決める。 

次に、離れた場所に小さい簡易水場を作って、雨雲で水を供給する。 

ここで部隊を2つに分けて、グループAは現地の兵士達と共同で本格的な貯水場と灌漑設備を建設する。 

グループBと俺は次の都市に向かい、サーチでその土地の建設場所を決める。 

グループAは、設備が出来たらグループBを追いかけて、また灌漑設備を作る。 

「これを繰り返して、完成した所にグループBとアキラが戻って井戸を掘る……というのはどうかな?」 

「ほぉ~、無駄がない」 

スザールが感心したように呟く。 

「確かに。それならば大々的に工事しているところには俺もライド王子もいないから、敵に尻尾を掴まれにくいな」 

さすが帝国の頭脳、サクサクと案が出てくる。 

「良い案だと思いますが……」 

ザウスは逆に渋い顔をしている。 

「水が湧きだして聖女の奇蹟の話が広まれば、すぐにガザルの知る所となります。そこで灌漑工事をしていれば、ガザルの手の者が監視に付き、井戸を掘る際にライド王子とアキラが捕まる危険が高まるでしょう」 

少ない護衛では防ぎきれるかどうか、と顔を顰める。 

う~ん、それな。 

そこの詰めが甘いとは思ってるんだが、こればっかりはな。 

ライド王子はともかく、俺はその場にいないと起こせない奇蹟だからな。 

「でも俺がせい………っ」 

自分で墓穴を掘りたくなくて、言葉がぐっと詰まった。 

絶対に自分のことを聖女だとか言いたくないっ。 

「……俺が奇蹟を起こしてるって、外部には漏れてないじゃん?ライド王子がその場に居なければ捕まらなくね?」 

何とか言い回しを変えて言ったのに、みんな口元がヒクヒクしてやがる。 

くそ~、回し蹴り食らいたいか? 

アデル姫だけ、思いっきり吹き出して笑っている。 

姫さんや、あなたの笑いが一番精神ゴリゴリ削られるんですってば。 

可愛いけどさ。 

ツラいわ~。 

「フフフ……ふう。その危険は、私が聖女を騙って攪乱させますわ。そうすれば危険度が下がるでしょう?」 

「ほえっ?」 

変な声出た。 

やっと笑いが収まったと思ったら、なにやらとんでもない発言をしなかったか? 

「なっ……何をおっしゃっているんですか、アデル様!」 

姫の護衛役のテイルが悲鳴を上げる。 

「え~、だってここまで来たのに協力もせずに帰れませんわ」 

「いやいや、帰るんですよ!身代わりがバレたらみんなタダじゃ済みませんよ」 

「あら、聖女様が降臨なさったらそれどころじゃないでしょう?王都も大騒ぎになりますもの」 

「それはそうですが……」 

テイルが焦ってるけど、どこの世界でも口では女性に勝てないのは一緒なんだな。 

口の達者な妹を思い出して、俺も遠い目になった。 
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