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第二部 復興編
5.偽聖女アデル降臨
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アデル姫が言った作戦は危険なんだが、確かに効果は高そうなんだよな。
陽動作戦としては、秀逸だ。
実際、こんな美人さんが聖女ですよって現れたら、そりゃあケロッと信じるもんな。
「ちょっと試してみましょう」
と言って、アデルは部屋を出ていった。
残された男共は、うう~むと唸って代案を考えたが、そうそう浮かぶ筈もなく。
「お待たせしました」
と言って入って来たアデルの姿に、俺は釘付けになった。
長いストレートの黒髪に、司祭が着るような白の衣装。
ええ?それってカツラか何か?
頭から半分透けるベールを被って、目元から下は透けない布で隠されている。
唯一出ている目は濃いシャドーで縁どられて、額には謎の文様が赤く描かれていて神秘的だ。
う~ん、これぞまさにザ・聖女様って感じだ。
イメージを壊さないのって大事だと思う。
「皆の者、安心するが良い。これから、わたくしがこの世界を救いましょう」
演技がハマり過ぎて、聖女というより既に女神様レベル。
スッと右手を斜め上にかざすので、俺もつい乗ってその上にミニ雨雲を作って小雨を降らせてみた。
丁度窓際だったので小さな虹も出て、ますます神秘さが増す。
みんなの口から、ほおお~と溜め息が漏れる。
小さな頃からアデルを知ってるライド王子ですら、ポカンと見つめている。
効果はバッチリだな~。
「それじゃ、陽動作戦はこれで行きましょ」
ニッコリと笑った姫さんに反対出来る強者はいなかった。
まあ、危険なことにならないように、対策とタイミングはしっかりと練ろう。
翌朝、シシル宰相は戻らないといけない為、護衛のテイルとスザールを残して王都に出立した。
テイルはアデルの護衛だからいいとして、スザールはシシル宰相の護衛なのだが、非常に腕が立つので臨時貸し出ししてくれた。
いいのか?とびっくりしたが、元々宰相の指示であちこちと飛び回っている為、いなくても別段疑われないそうだ。
多分、総合力ではザウスの上を行く気がするから、有り難い。
でも、後で体術の手合わせをしてくれと言ってくる辺り、戦闘マニアな気配がするんだよな~。
心強いけどな。
出発の準備として、俺達は頑丈な馬車を数台用意して、商隊の仮装を施した。
通常よりもスピードが出せる頑丈な馬車に、向こうで畑に撒く種や、携帯用の非常食、売っても食べてもいいスイカも積み込む。
水がいらないので、他の物が沢山積めていいわ。
まず目指すのは、離宮の地から5日ほど離れたガルデーンという都市だ。
ここよりも人口が多く、そこそこ大きな都市だが、もれなく干ばつの被害にあっているそうだ。
そして、連れて行く兵士をチョイスする時に、ちょっともめた。
みんながみんな、ついて来たがったんだ。
ええ~?ここにいた方が土木作業少ないのになぁ。
やりたいの?
物好きが多いな~。
ここの兵士達は、みんなを助けたいって男気に溢れていて、カッコイイぜ。
俺は準備の合間にも、広場の水の湧き具合や畑の生育状態を都度見に行った。
やっぱ気になるっていうかさ。
もちろんどこも順調で、みんな笑顔で仕事をしていた。
大工の中に、ガルデーンに大工友達がいる人がいて、名前と場所を教えてもらったりもした。
あっちでも大工には協力してもらわないといけないから、助かる。
城の備蓄倉庫も、横にもう一棟建てて中をパンパンにしといた。
俺が安心したいだけなんだが、担当者がまたもやひれ伏して泣いてた。
なんかごめん。
離宮の回りや町の中、少し外れた所にも水が行き渡ってきて、あちこちで草が生え始めている。
もう少しすれば、前のように緑の大地に変わっていくだろう。
城に戻ると、空手教えてくれ~と群がってくる野郎共をバンバン吹っ飛ばしながら、着々と準備を進めた。
スザールはやっぱり覚えが早くて、俺の鍛錬にもなった。
シシル宰相達が立ってから4日後、交代要員の兵士達と宰相直属の事務官が赴任してきた。
宰相は自分が戻るよりも早く、伝令に指示の文を持たせて早馬を飛ばして準備をさせたそうだ。
抜かりないねぇ。
はやっ!と目を剥く俺達を尻目に、事務官はリネルから現況を聞き取りしてサクサクと引継ぎを進めていく。
マジで凄腕だ。
予想よりも早く出立できそうで助かるわ。
陽動作戦としては、秀逸だ。
実際、こんな美人さんが聖女ですよって現れたら、そりゃあケロッと信じるもんな。
「ちょっと試してみましょう」
と言って、アデルは部屋を出ていった。
残された男共は、うう~むと唸って代案を考えたが、そうそう浮かぶ筈もなく。
「お待たせしました」
と言って入って来たアデルの姿に、俺は釘付けになった。
長いストレートの黒髪に、司祭が着るような白の衣装。
ええ?それってカツラか何か?
頭から半分透けるベールを被って、目元から下は透けない布で隠されている。
唯一出ている目は濃いシャドーで縁どられて、額には謎の文様が赤く描かれていて神秘的だ。
う~ん、これぞまさにザ・聖女様って感じだ。
イメージを壊さないのって大事だと思う。
「皆の者、安心するが良い。これから、わたくしがこの世界を救いましょう」
演技がハマり過ぎて、聖女というより既に女神様レベル。
スッと右手を斜め上にかざすので、俺もつい乗ってその上にミニ雨雲を作って小雨を降らせてみた。
丁度窓際だったので小さな虹も出て、ますます神秘さが増す。
みんなの口から、ほおお~と溜め息が漏れる。
小さな頃からアデルを知ってるライド王子ですら、ポカンと見つめている。
効果はバッチリだな~。
「それじゃ、陽動作戦はこれで行きましょ」
ニッコリと笑った姫さんに反対出来る強者はいなかった。
まあ、危険なことにならないように、対策とタイミングはしっかりと練ろう。
翌朝、シシル宰相は戻らないといけない為、護衛のテイルとスザールを残して王都に出立した。
テイルはアデルの護衛だからいいとして、スザールはシシル宰相の護衛なのだが、非常に腕が立つので臨時貸し出ししてくれた。
いいのか?とびっくりしたが、元々宰相の指示であちこちと飛び回っている為、いなくても別段疑われないそうだ。
多分、総合力ではザウスの上を行く気がするから、有り難い。
でも、後で体術の手合わせをしてくれと言ってくる辺り、戦闘マニアな気配がするんだよな~。
心強いけどな。
出発の準備として、俺達は頑丈な馬車を数台用意して、商隊の仮装を施した。
通常よりもスピードが出せる頑丈な馬車に、向こうで畑に撒く種や、携帯用の非常食、売っても食べてもいいスイカも積み込む。
水がいらないので、他の物が沢山積めていいわ。
まず目指すのは、離宮の地から5日ほど離れたガルデーンという都市だ。
ここよりも人口が多く、そこそこ大きな都市だが、もれなく干ばつの被害にあっているそうだ。
そして、連れて行く兵士をチョイスする時に、ちょっともめた。
みんながみんな、ついて来たがったんだ。
ええ~?ここにいた方が土木作業少ないのになぁ。
やりたいの?
物好きが多いな~。
ここの兵士達は、みんなを助けたいって男気に溢れていて、カッコイイぜ。
俺は準備の合間にも、広場の水の湧き具合や畑の生育状態を都度見に行った。
やっぱ気になるっていうかさ。
もちろんどこも順調で、みんな笑顔で仕事をしていた。
大工の中に、ガルデーンに大工友達がいる人がいて、名前と場所を教えてもらったりもした。
あっちでも大工には協力してもらわないといけないから、助かる。
城の備蓄倉庫も、横にもう一棟建てて中をパンパンにしといた。
俺が安心したいだけなんだが、担当者がまたもやひれ伏して泣いてた。
なんかごめん。
離宮の回りや町の中、少し外れた所にも水が行き渡ってきて、あちこちで草が生え始めている。
もう少しすれば、前のように緑の大地に変わっていくだろう。
城に戻ると、空手教えてくれ~と群がってくる野郎共をバンバン吹っ飛ばしながら、着々と準備を進めた。
スザールはやっぱり覚えが早くて、俺の鍛錬にもなった。
シシル宰相達が立ってから4日後、交代要員の兵士達と宰相直属の事務官が赴任してきた。
宰相は自分が戻るよりも早く、伝令に指示の文を持たせて早馬を飛ばして準備をさせたそうだ。
抜かりないねぇ。
はやっ!と目を剥く俺達を尻目に、事務官はリネルから現況を聞き取りしてサクサクと引継ぎを進めていく。
マジで凄腕だ。
予想よりも早く出立できそうで助かるわ。
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