え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

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第二部  復興編

21.ケルック

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朝から馬を飛ばし、翌日の昼過ぎにはケルックに到着した。 

俺が訪れたことがある町の中では一番大きい。 

都市の周囲が壁で囲まれていて、入り口では入る時に身分証を確認している。 

兵士達の身なりもちゃんとしていた。 

ここでは最初からスザールが身分を明かして、正式に入った。 

「ここの領主は、以前王都の騎士団長をしていて引退してこちらに来て領主になった人だ」 

なるほど、騎士上りの領主か。 

どうりで城塞都市っぽいわけだ。 

「へえ、じゃあかなり強い人なんだな」 

「剣の腕前は、俺より上だ」 

げっ!それじゃ俺なんか歯が立たないな。 

「ここでは全部事情を話して協力してもらう方が早い」 

シシル宰相からも信頼されていると聞いて、それなら安心だとほっとした。 

領主の館に向かう途中で通った中心地の広場では市が開かれていて、なかなか活気があった。 

「へえ~、結構賑わってるな」 

屋台で売られている野菜も、離宮のような干乾びだものではなく、それなりの鮮度もある。 

ただ、やはり水の料金は高めだった。 

「ここは井戸が2箇所あるんだが、最近は貯水量がかなり乏しくなったと聞いている」 

井戸か。 

今回はランドスの教訓を生かして、都市に入る前から水脈のサーチをかけているが、あまり大きなものはまだ見つかっていない。 

井戸が枯れてしまえば、ここも他と同じで、すぐに干ばつと飢饉に見舞われることになる。 

 

広場を抜けて緩やかな坂を上がっていくと、先に大きな岩壁が見えてきた。 

おお~、何かエアーズロックみたいな形だな。 

一枚岩っぽい感じも似ている。 

領主の館は、そのエアーズロックを背にする形で立っていた。 

スザールが門で取次を頼むと、館から執事のような出で立ちの男性がやって来た。 

「スザール様、お久しぶりでございます」 

「ローン、元気そうだな」 

顔見知りのようで、俺達はすぐに中に案内された。 

「ネイモス殿は御在宅か?」 

「はい、ちょうど先程戻って参りました。すぐにお会いになられるそうです」 

応接間に通されて座ると、すぐにドアが開いて大柄でガッシリ体型の壮年の男性が入って来た。 

「スザール!久し振りじゃないか。元気そうだな」 

「ネイモス殿もお変わりなく」 

スザールとガシッと二の腕をぶつける兵士の挨拶をすると、ネイモスがこちらに視線を向けてきた。 

「この者はお前の新しい部下か?しっかりと鍛えられているじゃないか」 

さすが武術に秀でている人間は、すぐに相手のポテンシャルの高さを見抜いてくるな。 

「いえ、残念ながら部下ではなく、ライド王子が異世界から召喚した者で、アキラといいます」 

「なに!聖女の召喚に成功したのか!」 

俺は床にガックリと頽れるのをギリギリ堪えた。 

その、召喚者は聖女って、なんの縛りな訳? 

俺をガン見しながら、なんで聖女って言葉が出るんだよ。 

マジで謎だ。 

「初めまして、異世界から来たアキラ・タカトウです。スキルは持ってますが聖女じゃないですよ」 

横でニヤニヤしてるスザールの脇腹をどついてから、俺は領主に挨拶した。 

「この国を救ってくれるんなら、聖女でも勇者でもいいぞ」 

豪快に笑う、ノリのいいおっさんでした。 

是非、勇者で! 

 

 

応接間で、俺とスザールはこれまでの経緯をネイモスに説明した。 

隣のランドスの領主をとっちめて捕縛した所では、爽快だと非常に喜ばれた。 

フェリペの事は、前から領民を大事にしないヤツで我慢ならなかったのだそうだ。 

元騎士団長だけに、正義感が強いんだろう。 

「それで、ここケルックはどうなんだ?水脈はありそうか?」 

「ここに来る途中であちこちサーチしてみたんですが、この都市を補えるような大きなものはまだ……」 

「……そうか」 

ネイモスは沈痛な面持ちで溜め息を吐いている。 

「井戸の水量はどうですか?」 

「かなり減っている。ここ半年で汲み上げる深さが倍になって、汲み上げに時間もかかる」 

「それは……もう時間の問題ですね」 

とりあえず井戸の回りを確認しようと、2ヶ所ある井戸を視察しに行った。 

どちらの井戸も地下の水脈は細くなっていて、十分な水量を確保出来るものではなかった。 

近くにも太い水脈は見当たらない。 

う~ん、これはマズい状況だ。 

井戸のそばに太いのがあれば、井戸を拡張すればまた量を確保出来ると思ってたんだが。 

もう陽が沈むので、領主の館に戻って明日また対策を考えることにした。 

 
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