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第二部 復興編
23.どうするよ
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大慌てで館まで駆け戻り、着くなり俺はサーチを発動した。
館から巨大な岩までは500メートルくらいだ。
「……やった!あったぞ………ひえっ」
「あったか!……その、ひえってのは何だ?」
ギョッとしてる俺を変な目で見るスザールを放っておいて、俺はすぐにネイモスを探しに館に飛び込んだ。
駆けこんできた俺にぎょっとしている執事のローンを捕まえる。
「ネイモス殿はどこに?」
急ぎだと察したローンは、すぐに執務室に案内してくれた。
「お、どうしたアキラ?水脈が見つかったのか?」
ネイモスは入って来た俺の様子に、すぐに反応して立ち上がった。
「見つかりました」
「なにっ、どこだ?井戸のそばか?離れた所でもすぐに…」
俺は黙って窓の外を指さした。
「…ん?…………っ!まさか…」
そう、あったんだよ、確かに。
まさかのミニエアーズロックの中に。
ネイモスも状況が分かって思わず絶句している。
そこへスザールも入って来た。
「……あの中に、どのくらいの量がありそうなんだ?」
「かなりというか、ぶっちゃけ満杯ですね。どれくらい圧力がかかっているか分かりませんけど、穴が開けば噴水みたいに吹き出すかも」
岩山の中は俺がビビるくらい水がギッチリ詰まっていた。
岩に穴を開けるのも難しいが、開けた後の処理もかなり難しい。
う~ん、難題だ。
しかも時間は無いときてる。
どうするよ?
3人揃って窓の外の岩山を見上げて、呻いた。
「まずは状況を整理しよう」
スザールが最初に延々と続く唸り声を止めて、提案してきた。
それもそうだ、唸っててもしょうがないもんな。
向かい合わせにソファーに座ると、すかさずローンがお茶を入れてくれた。
有能な執事だなぁ。
お茶を飲んで少し落ち着いてから、まずは状況を共有する。
「あの岩山は、石をくり抜いて中に水を入れてひっくり返して伏せたような状態です。更に、下にかなり太い水脈があって、その水を押し上げている感じなんです」
「何とも贅沢な水瓶な訳だな。しかし、どうにかして穴を開けたとして、どうなる?」
「その水脈自体は相当深くて俺のサーチじゃ届かないので、実際にどれくらいの圧が来てるかは、開けてみないと分からないですね」
「………そう言えば、何代か前の領主の記録に、その当時の岩山の高さが記録されていたんだが、今はその2倍の高さになっているのだ」
「げ……じゃあ、もしかしたら下からの水圧で徐々に持ち上げられているとか?」
うーわー、それって相当な圧じゃね?
俺の脳裏にシャンパンのコルクがポンッと吹き飛ぶ様が浮かんだ。
絶対に危険なギャンブルだわ。
かといって、この水瓶は諦めるには惜しすぎる。
「そもそも一枚岩の岩山に穴が開くのかどうか。そこはこれからあの上に登って厚みを確認してみます」
「うむ、そうだな。穴は開くという前提で、その後だな」
「高台にあるこの屋敷は大量に吹き出す水の直撃を受けるし、そのまま坂の下までドドーっと流れて町は水浸しになる可能性が高いと」
ズサールも想像して眉間に皺を寄せている。
うん、どう見積もってもその確率が高い。
「……………」
ネイモスは腕を組んで考え込んでいる。
俺も解決策が浮かばない。
「…………今は時間が惜しい。まずは岩山の状態をしっかりと確認しよう」
お、さすが領主。切り替えが早い。
「そうですね、日が沈むまでに見ておきましょう」
俺達はすぐに登る為の装備と人員の確保に移った。
登山というほど高くはないが斜度はそれなりにある岩山を、俺達と領主館に配置されていた兵士6人でえっちらおっちら登る。
もともと登る必要のない所だったので登頂ルートが分からず、探しているうちに結構時間を食った。
「へえ~、こうなっているのか」
「わしも登ったのは初めてだから、知らなかったな」
ネイモスも面白そうに辺りを見回している。
登り切った岩山の上は、予想に反してクレーターのように凹んでいた。
エアーズロックみたいに丸い背中を勝手に想像してたわ。
水が出たら火口湖みたいになりそうだ。
中央の低い所まで下りて、そこでサーチをかけてみる。
おっと、これは……?
「……薄い…」
「薄いのか!」
回りで固唾を飲んで見守っていたネイモスや兵士達が、おおっと嬉しそうに叫ぶ。
「厚みはどれくらいだ?」
スザールに聞かれて、再度岩に手を当てて水の位置を慎重に確認する。
「んん~……離宮の時よりも浅いな……12.3メートルだな」
離宮の時は30メートル弱くらいあったから、その半分くらいか。
ただ、土じゃなくて岩だけどな。
「………アキラ」
「?はい…」
ネイモスに静かに呼ばれて振り返る。
「ここは放置して、明日ランドスに発ちなさい」
「へっ?」
スザールと俺の声がダブった。
何ですと?
館から巨大な岩までは500メートルくらいだ。
「……やった!あったぞ………ひえっ」
「あったか!……その、ひえってのは何だ?」
ギョッとしてる俺を変な目で見るスザールを放っておいて、俺はすぐにネイモスを探しに館に飛び込んだ。
駆けこんできた俺にぎょっとしている執事のローンを捕まえる。
「ネイモス殿はどこに?」
急ぎだと察したローンは、すぐに執務室に案内してくれた。
「お、どうしたアキラ?水脈が見つかったのか?」
ネイモスは入って来た俺の様子に、すぐに反応して立ち上がった。
「見つかりました」
「なにっ、どこだ?井戸のそばか?離れた所でもすぐに…」
俺は黙って窓の外を指さした。
「…ん?…………っ!まさか…」
そう、あったんだよ、確かに。
まさかのミニエアーズロックの中に。
ネイモスも状況が分かって思わず絶句している。
そこへスザールも入って来た。
「……あの中に、どのくらいの量がありそうなんだ?」
「かなりというか、ぶっちゃけ満杯ですね。どれくらい圧力がかかっているか分かりませんけど、穴が開けば噴水みたいに吹き出すかも」
岩山の中は俺がビビるくらい水がギッチリ詰まっていた。
岩に穴を開けるのも難しいが、開けた後の処理もかなり難しい。
う~ん、難題だ。
しかも時間は無いときてる。
どうするよ?
3人揃って窓の外の岩山を見上げて、呻いた。
「まずは状況を整理しよう」
スザールが最初に延々と続く唸り声を止めて、提案してきた。
それもそうだ、唸っててもしょうがないもんな。
向かい合わせにソファーに座ると、すかさずローンがお茶を入れてくれた。
有能な執事だなぁ。
お茶を飲んで少し落ち着いてから、まずは状況を共有する。
「あの岩山は、石をくり抜いて中に水を入れてひっくり返して伏せたような状態です。更に、下にかなり太い水脈があって、その水を押し上げている感じなんです」
「何とも贅沢な水瓶な訳だな。しかし、どうにかして穴を開けたとして、どうなる?」
「その水脈自体は相当深くて俺のサーチじゃ届かないので、実際にどれくらいの圧が来てるかは、開けてみないと分からないですね」
「………そう言えば、何代か前の領主の記録に、その当時の岩山の高さが記録されていたんだが、今はその2倍の高さになっているのだ」
「げ……じゃあ、もしかしたら下からの水圧で徐々に持ち上げられているとか?」
うーわー、それって相当な圧じゃね?
俺の脳裏にシャンパンのコルクがポンッと吹き飛ぶ様が浮かんだ。
絶対に危険なギャンブルだわ。
かといって、この水瓶は諦めるには惜しすぎる。
「そもそも一枚岩の岩山に穴が開くのかどうか。そこはこれからあの上に登って厚みを確認してみます」
「うむ、そうだな。穴は開くという前提で、その後だな」
「高台にあるこの屋敷は大量に吹き出す水の直撃を受けるし、そのまま坂の下までドドーっと流れて町は水浸しになる可能性が高いと」
ズサールも想像して眉間に皺を寄せている。
うん、どう見積もってもその確率が高い。
「……………」
ネイモスは腕を組んで考え込んでいる。
俺も解決策が浮かばない。
「…………今は時間が惜しい。まずは岩山の状態をしっかりと確認しよう」
お、さすが領主。切り替えが早い。
「そうですね、日が沈むまでに見ておきましょう」
俺達はすぐに登る為の装備と人員の確保に移った。
登山というほど高くはないが斜度はそれなりにある岩山を、俺達と領主館に配置されていた兵士6人でえっちらおっちら登る。
もともと登る必要のない所だったので登頂ルートが分からず、探しているうちに結構時間を食った。
「へえ~、こうなっているのか」
「わしも登ったのは初めてだから、知らなかったな」
ネイモスも面白そうに辺りを見回している。
登り切った岩山の上は、予想に反してクレーターのように凹んでいた。
エアーズロックみたいに丸い背中を勝手に想像してたわ。
水が出たら火口湖みたいになりそうだ。
中央の低い所まで下りて、そこでサーチをかけてみる。
おっと、これは……?
「……薄い…」
「薄いのか!」
回りで固唾を飲んで見守っていたネイモスや兵士達が、おおっと嬉しそうに叫ぶ。
「厚みはどれくらいだ?」
スザールに聞かれて、再度岩に手を当てて水の位置を慎重に確認する。
「んん~……離宮の時よりも浅いな……12.3メートルだな」
離宮の時は30メートル弱くらいあったから、その半分くらいか。
ただ、土じゃなくて岩だけどな。
「………アキラ」
「?はい…」
ネイモスに静かに呼ばれて振り返る。
「ここは放置して、明日ランドスに発ちなさい」
「へっ?」
スザールと俺の声がダブった。
何ですと?
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