え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

文字の大きさ
43 / 68
第二部  復興編

23.どうするよ

しおりを挟む
大慌てで館まで駆け戻り、着くなり俺はサーチを発動した。 

館から巨大な岩までは500メートルくらいだ。 

「……やった!あったぞ………ひえっ」 

「あったか!……その、ひえってのは何だ?」 

ギョッとしてる俺を変な目で見るスザールを放っておいて、俺はすぐにネイモスを探しに館に飛び込んだ。 

駆けこんできた俺にぎょっとしている執事のローンを捕まえる。 

「ネイモス殿はどこに?」 

急ぎだと察したローンは、すぐに執務室に案内してくれた。 

「お、どうしたアキラ?水脈が見つかったのか?」 

ネイモスは入って来た俺の様子に、すぐに反応して立ち上がった。 

「見つかりました」 

「なにっ、どこだ?井戸のそばか?離れた所でもすぐに…」 

俺は黙って窓の外を指さした。 

「…ん?…………っ!まさか…」 

そう、あったんだよ、確かに。 

まさかのミニエアーズロックの中に。 

ネイモスも状況が分かって思わず絶句している。 

そこへスザールも入って来た。 

「……あの中に、どのくらいの量がありそうなんだ?」 

「かなりというか、ぶっちゃけ満杯ですね。どれくらい圧力がかかっているか分かりませんけど、穴が開けば噴水みたいに吹き出すかも」 

岩山の中は俺がビビるくらい水がギッチリ詰まっていた。 

岩に穴を開けるのも難しいが、開けた後の処理もかなり難しい。 

う~ん、難題だ。 

しかも時間は無いときてる。 

どうするよ? 

3人揃って窓の外の岩山を見上げて、呻いた。 

 

「まずは状況を整理しよう」 

スザールが最初に延々と続く唸り声を止めて、提案してきた。 

それもそうだ、唸っててもしょうがないもんな。 

向かい合わせにソファーに座ると、すかさずローンがお茶を入れてくれた。 

有能な執事だなぁ。 

お茶を飲んで少し落ち着いてから、まずは状況を共有する。 

「あの岩山は、石をくり抜いて中に水を入れてひっくり返して伏せたような状態です。更に、下にかなり太い水脈があって、その水を押し上げている感じなんです」 

「何とも贅沢な水瓶な訳だな。しかし、どうにかして穴を開けたとして、どうなる?」 

「その水脈自体は相当深くて俺のサーチじゃ届かないので、実際にどれくらいの圧が来てるかは、開けてみないと分からないですね」 

「………そう言えば、何代か前の領主の記録に、その当時の岩山の高さが記録されていたんだが、今はその2倍の高さになっているのだ」 

「げ……じゃあ、もしかしたら下からの水圧で徐々に持ち上げられているとか?」 

うーわー、それって相当な圧じゃね? 

俺の脳裏にシャンパンのコルクがポンッと吹き飛ぶ様が浮かんだ。 

絶対に危険なギャンブルだわ。 

かといって、この水瓶は諦めるには惜しすぎる。 

「そもそも一枚岩の岩山に穴が開くのかどうか。そこはこれからあの上に登って厚みを確認してみます」 

「うむ、そうだな。穴は開くという前提で、その後だな」 

「高台にあるこの屋敷は大量に吹き出す水の直撃を受けるし、そのまま坂の下までドドーっと流れて町は水浸しになる可能性が高いと」 

ズサールも想像して眉間に皺を寄せている。 

うん、どう見積もってもその確率が高い。 

「……………」 

ネイモスは腕を組んで考え込んでいる。 

俺も解決策が浮かばない。 

「…………今は時間が惜しい。まずは岩山の状態をしっかりと確認しよう」 

お、さすが領主。切り替えが早い。 

「そうですね、日が沈むまでに見ておきましょう」 

俺達はすぐに登る為の装備と人員の確保に移った。 

登山というほど高くはないが斜度はそれなりにある岩山を、俺達と領主館に配置されていた兵士6人でえっちらおっちら登る。 

もともと登る必要のない所だったので登頂ルートが分からず、探しているうちに結構時間を食った。 

「へえ~、こうなっているのか」 

「わしも登ったのは初めてだから、知らなかったな」 

ネイモスも面白そうに辺りを見回している。 

登り切った岩山の上は、予想に反してクレーターのように凹んでいた。 

エアーズロックみたいに丸い背中を勝手に想像してたわ。 

水が出たら火口湖みたいになりそうだ。 

中央の低い所まで下りて、そこでサーチをかけてみる。 

おっと、これは……? 

「……薄い…」 

「薄いのか!」 

回りで固唾を飲んで見守っていたネイモスや兵士達が、おおっと嬉しそうに叫ぶ。 

「厚みはどれくらいだ?」 

スザールに聞かれて、再度岩に手を当てて水の位置を慎重に確認する。 

「んん~……離宮の時よりも浅いな……12.3メートルだな」 

離宮の時は30メートル弱くらいあったから、その半分くらいか。 

ただ、土じゃなくて岩だけどな。 

「………アキラ」 

「?はい…」 

ネイモスに静かに呼ばれて振り返る。 

「ここは放置して、明日ランドスに発ちなさい」 

「へっ?」 

スザールと俺の声がダブった。 

何ですと? 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...