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第二部 復興編
27.合流
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近づいてきた兵士達は、皆ガタイが良かった。
なるほど、あれがガザル第一王子の配下の兵士か。
雰囲気からして荒くれ者っぽい感じがするわ。
その中でも黒い装備をつけたやつがリーダーっぽかった。
「あれが隊長のルワブだ。ガザルの腰巾着だが、頭はキレる」
「なるほど」
ルワブは見た目はなかなかのイケメンだが、目がダメだった。
濁っているというのか、死んだ魚の目をしている。
正面から見つめられたら、寒気がしそうだ。
ルワブ達は15人で隊を編成している。
装備からして軽装で、長期移動が出来る格好ではない。
「あれなら、直接サザレーには向かえまい」
スザールは装備を見てとると、ニヤリと笑った。
ルワブ達は水源を確認しに来たようで、凄い勢いで流れ出ている水に驚き、次に崩れ落ちた岩山に目を剥き、更に岩壁に刺さった巨木にアゴがガクンと落ちていた。
まあ、そうなるよね。
自分の常識を覆された人はこうなる、の見本だ。
どういう状況~?ってか。
スザール達はその顔を見て、岩陰で必死に笑いを堪えている。
暫くして気を取りなおしたルワブ達は、馬の首を返して町に向かっていった。
「よ~し、行こう」
ある程度離れたところで、反対方向にそっと出発する。
岩山の後ろに回って見えなくなると、一気にスピードを上げて砂漠を進んだ。
ルワブ達は、これから領主の所に行き、そしてたらい回しにされる筈だ。
領主代行は町の見回りに出ていて明日戻るので、今日はもう陽も暮れますからどうぞこちらでお休み下さい~とか言われて酒でもてなされて、酔い潰される。
その酒には二日酔いを助長させる成分がたっぷりと入っているから、午前中は使い物にならない。
更に領主代行から聖女様の素晴らしい奇蹟の話を延々と聞かされ、昼食に出た料理で腹を下すから、早くても出発は明後日になるだろう。
スザールからそう説明されて、俺はどん引きした。
「容赦ねぇな、スザール」
「時間の稼ぎ方なんぞ、いくらでもあるからな」
馬上でいい笑顔を見せるお貴族様に、ちょっとだけ敵に同情してしまった。
ケルックの横を素通りして、ククルからの位置情報でサザレーへ向けて先行するライド王子達の後を追いかけ馬を飛ばすこと4日、ようやく砂漠の揺らぎの先に商隊の姿を捕らえた。
「アキラ!スザール!」
「ライド王子!みんな、お待たせ………おわっ」
馬を下りてライド王子と挨拶を交わそうとした瞬間、横からアデル王女が走ってきて胸元に飛び込んできた。
えっ?こんなに熱烈歓迎されちゃうの?
もしや王女、俺に惚れた?
ボボっと赤面する俺を、アデル王女はキラキラの目で見上げてくる。
「待ってたわアキラ!早く雨を降らせて水浴びをさせて!埃っぽくて我慢出来ないっ」
……そこかーい!
固まったまま、意気消沈する。
ですよね~。
「ぶっ……」
後ろで盛大に吹き出して笑い転げているお貴族様は、後でキッチリ締める。
「すまない、アキラ。飲み水は十分足りていたんだが、浴びるとなるとちょっと難しくてな。女性達には不便をかけていたんだ」
申し訳なさそうにしている王子に、俺はすぐに気を取りなおした。
「シャワーの良さを教えたのは俺だからね。責任は取るよ」
商隊が通るルートからも大きく外れている砂漠のど真ん中、見渡す限り影もないこの場所ならば、結構派手にやっても平気だろう。
「よーし、全員まとめて水浴びタイムだ!」
女性2人は幕の裏に回し、広い範囲で雨雲を作って馬も人も全部まとめてずぶ濡れにする。
「うおお~っ!久しぶりの水浴びだぜ!」
兵士達は雄叫びを上げて服を脱ぎ散らかし、石鹸で擦りまくっている。
馬達も強行軍だったから、歓喜の嘶きが上がっている。
「さいこーっ!」
むさい男集団で、更に臭かったら最悪だからな。
「しっかり擦りやがれ!」
ワイワイと兵士達が浴びてる横に、俺達先行隊はリルの枝を刺し、果物や麦の種を撒く。
王子に聞いたら、食料がかなりギリギリだったらしい。
今日合流出来なかったら、明日は食べ物が殆ど尽きていたと聞いてヒヤリとした。
日陰の無い砂漠の真ん中で食料が切れたら、水はあっても体力が急激に削がれる。
すぐに遭難だ。
「今度はもっと備蓄してから別れた方がいいな」
「そうだな。40人の大所帯で、兵士はガタイが良い分食べるしな」
スザールも真面目な顔で頷いている。
「ここからサザレーまでは、最短ルートでも10日以上かかる。向こうでもすぐに必要になる可能性もあるから、少しずつ蓄えていこう」
夕方には移動を止めて、臨時農業をしながらになるな。
移動プラントとか、前衛的だわ~。
取り敢えず、今夜は全員食い倒れコースを用意してやろうじゃないか。
なるほど、あれがガザル第一王子の配下の兵士か。
雰囲気からして荒くれ者っぽい感じがするわ。
その中でも黒い装備をつけたやつがリーダーっぽかった。
「あれが隊長のルワブだ。ガザルの腰巾着だが、頭はキレる」
「なるほど」
ルワブは見た目はなかなかのイケメンだが、目がダメだった。
濁っているというのか、死んだ魚の目をしている。
正面から見つめられたら、寒気がしそうだ。
ルワブ達は15人で隊を編成している。
装備からして軽装で、長期移動が出来る格好ではない。
「あれなら、直接サザレーには向かえまい」
スザールは装備を見てとると、ニヤリと笑った。
ルワブ達は水源を確認しに来たようで、凄い勢いで流れ出ている水に驚き、次に崩れ落ちた岩山に目を剥き、更に岩壁に刺さった巨木にアゴがガクンと落ちていた。
まあ、そうなるよね。
自分の常識を覆された人はこうなる、の見本だ。
どういう状況~?ってか。
スザール達はその顔を見て、岩陰で必死に笑いを堪えている。
暫くして気を取りなおしたルワブ達は、馬の首を返して町に向かっていった。
「よ~し、行こう」
ある程度離れたところで、反対方向にそっと出発する。
岩山の後ろに回って見えなくなると、一気にスピードを上げて砂漠を進んだ。
ルワブ達は、これから領主の所に行き、そしてたらい回しにされる筈だ。
領主代行は町の見回りに出ていて明日戻るので、今日はもう陽も暮れますからどうぞこちらでお休み下さい~とか言われて酒でもてなされて、酔い潰される。
その酒には二日酔いを助長させる成分がたっぷりと入っているから、午前中は使い物にならない。
更に領主代行から聖女様の素晴らしい奇蹟の話を延々と聞かされ、昼食に出た料理で腹を下すから、早くても出発は明後日になるだろう。
スザールからそう説明されて、俺はどん引きした。
「容赦ねぇな、スザール」
「時間の稼ぎ方なんぞ、いくらでもあるからな」
馬上でいい笑顔を見せるお貴族様に、ちょっとだけ敵に同情してしまった。
ケルックの横を素通りして、ククルからの位置情報でサザレーへ向けて先行するライド王子達の後を追いかけ馬を飛ばすこと4日、ようやく砂漠の揺らぎの先に商隊の姿を捕らえた。
「アキラ!スザール!」
「ライド王子!みんな、お待たせ………おわっ」
馬を下りてライド王子と挨拶を交わそうとした瞬間、横からアデル王女が走ってきて胸元に飛び込んできた。
えっ?こんなに熱烈歓迎されちゃうの?
もしや王女、俺に惚れた?
ボボっと赤面する俺を、アデル王女はキラキラの目で見上げてくる。
「待ってたわアキラ!早く雨を降らせて水浴びをさせて!埃っぽくて我慢出来ないっ」
……そこかーい!
固まったまま、意気消沈する。
ですよね~。
「ぶっ……」
後ろで盛大に吹き出して笑い転げているお貴族様は、後でキッチリ締める。
「すまない、アキラ。飲み水は十分足りていたんだが、浴びるとなるとちょっと難しくてな。女性達には不便をかけていたんだ」
申し訳なさそうにしている王子に、俺はすぐに気を取りなおした。
「シャワーの良さを教えたのは俺だからね。責任は取るよ」
商隊が通るルートからも大きく外れている砂漠のど真ん中、見渡す限り影もないこの場所ならば、結構派手にやっても平気だろう。
「よーし、全員まとめて水浴びタイムだ!」
女性2人は幕の裏に回し、広い範囲で雨雲を作って馬も人も全部まとめてずぶ濡れにする。
「うおお~っ!久しぶりの水浴びだぜ!」
兵士達は雄叫びを上げて服を脱ぎ散らかし、石鹸で擦りまくっている。
馬達も強行軍だったから、歓喜の嘶きが上がっている。
「さいこーっ!」
むさい男集団で、更に臭かったら最悪だからな。
「しっかり擦りやがれ!」
ワイワイと兵士達が浴びてる横に、俺達先行隊はリルの枝を刺し、果物や麦の種を撒く。
王子に聞いたら、食料がかなりギリギリだったらしい。
今日合流出来なかったら、明日は食べ物が殆ど尽きていたと聞いてヒヤリとした。
日陰の無い砂漠の真ん中で食料が切れたら、水はあっても体力が急激に削がれる。
すぐに遭難だ。
「今度はもっと備蓄してから別れた方がいいな」
「そうだな。40人の大所帯で、兵士はガタイが良い分食べるしな」
スザールも真面目な顔で頷いている。
「ここからサザレーまでは、最短ルートでも10日以上かかる。向こうでもすぐに必要になる可能性もあるから、少しずつ蓄えていこう」
夕方には移動を止めて、臨時農業をしながらになるな。
移動プラントとか、前衛的だわ~。
取り敢えず、今夜は全員食い倒れコースを用意してやろうじゃないか。
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