え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

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第二部  復興編

34.危険な取引

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「聖女様が現れたことと、部下が暴力をふるった事に何の関係があるのだ?」 

更に突っ込まれて、ルワブの部下達もアワアワと慌てている。 

「い、いえ……早く聖女様を保護しようと、こいつらに居場所を聞いていたんですが、知らないと言い張るもんで……その…」 

ライド王子はルワブの部下達をジロリと見渡してから、ルワブに視線を戻す。 

「お前はどこに行っていたのだ?」 

「……部族長達に状況を聞きに行っておりました」 

「それで?」 

「………部族長会議の席に、聖女様が現れた、と」 

「そうだな。私もその場にいたので確認している。それで、聖女様はその後何処にいかれたと?」 

「!…………っ、奇蹟をお見せになってから、霧と共に消えてしまわれたと…」 

悔しそうに答えるルワブに、ライド王子もとても残念そうに首を横に振る。 

「そうなのだ。素晴らしい奇蹟を見せて頂いたのだが、その後すぐに消えてしまわれた。聖女様は奇跡をおこされる時にしか顕現されないようなのだ。多分、普段は女神様の身許におられるのだろう。あの美しさだ、女神様にとても愛されているのだろうな」 

あ、危なかった、もう少しで吹くところだった。 

ライド王子、演技上手すぎだろ。 

腹が捩れるからヤメテ。 

「ということは、民達はお姿を見てはいない訳だ。見ていないものをどこにいると聞かれても答えられる訳がなかろう」 

再び睨まれて、ルワブ達はぐっと詰まっている。 

「無実の民に危害を加えるなど、これは重大な罪だ。しかもその凶行は、私の目の前で行われた。これを見過ごすことは到底出来ぬ。ルワブ、部下の不始末は上司の責任。ガザルの元に戻って不始末を報告し、部下共々処罰を受けるがよい」 

「それは………私共は聖女様を保護するというガザル殿下の勅命を賜っております。王都に戻っている時間はございません。私共はガザル殿下の配下、ライド殿下の指示はお受け致しかねます」 

敵もさるもの、ルワブはあくまでガザルの威光を盾にして従わない。 

そりゃそうか。 

ここまで俺達の後をずっと追いかけてきているルワブ達。 

どう見てもライド王子と聖女が同行しているか、どこかで通じていると結論づけている筈だ。 

ここへきて今更のこのこと王都に戻るようなことはしないだろう。 

下手すると、この先ずっと張り付かれる可能性が高い。 

困った事態になった。 

「潔白の民に危害を加えるような者共に、大切な聖女様の保護はまかせられぬ。だが、そうだな……」 

ライド王子の視線が、一瞬チラリと俺に向けられた。 

何か嫌な予感がする。 

「ここまで、聖女様は私の移動に伴って顕現されることが多かったように思う。どういったお考えなのかはもちろん私などが知る由もないがな。なので、私はこれから王都に行って王に謁見してみようかと考えているのだ」 

おっ、おいおい! 

「王子!それは…」 

俺が叫ぶよりも早く、ザウスが反応した。 

アデル姫もヤバいが、ライド王子だって王に謁見するとかヤバいだろう! 

絶対にガザルにとっ捕まるって。 

「ほう……」 

ルワブの虚ろな目がギラリと光る。 

「私が王に謁見して、そこで聖女様が顕現なされば、一番安全に保護できるだろう?」 

ライド王子の目も挑戦的に光っている。 

「ただ、今サザレーの地は新しい農業改革を始めたところなのでな。私の部下達はその補助をしているのでまだここを離れられないのだ。だから王都への護衛をお前達が兼務するというなら、行ってもよいかと思う」 

まてまて、なんだその条件は。 

俺が王都に行ってやるから、お前らここで悪さしないでついてこいよ?上手くすると聖女様もついて来るよ?ってか? 

ルワブの方にしか旨味が無いじゃんか。 

いや、俺とルワブを引き離せるから、残りの土地は回りやすくなるってのは確かだが。 

危険過ぎるだろ~。 

「…………そうですね。ライド殿下だけでは王都までの道中は危険ですから、私共が護衛につきましょう」 

うっすらと笑うルワブの顔を今すぐ張り倒したいが、いち兵士の俺は口も出せない。 

「ザウスよ、お前は言われなくても同行するんだろう?許可してやる」 

「………はい」 

上から目線でルワブに許可を出されたザウスは、ギリギリと歯を食いしばりながら唸るように答えている。 

細かい組織図は分からないが、第二王子の護衛のザウスよりも第一王子の部下の方が立場的に上なんだろう。 

まあ、ライド王子一人をルワブ達と行かせるなんてとんでもねえから、それは良かったけど。 

問題は王都に到着するまでに他の都市を回って整備を完了出来るかだ。 

無理ゲーじゃね? 

なんてグルグル考えていたら、ルワブの視線がこっちに向いた。 

「……それから、お前。名前は?」 

げ、イヤな予感。 
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