え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

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第二部  復興編

37.強行軍、再び

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やると決めてから出立の準備を速攻で終えた俺達は、ルルガを連絡役として残し、日が沈む夕暮れ時に紛れるようにサザレーを出た。 

部族長達が全面協力してくれてルワブと王子達を引き止めてくれたらしく、あちらの出発は明日に延期になってる。 

よしよし、アドバンテージが増えるのは大歓迎だ。 

俺達は前にも増して強行軍になるので、アデル姫と二手に分かれることにした。 

休憩時間は数時間という鬼の強行軍に、姫さんを同行出来ないからね。 

アデル姫とテイル、他45名の兵士はタンパルに先行してもらい、俺とスザール、他に4名の兵士でスーカを目指す。 

スーカを速攻で攻略出来れば、タンパルへの到着はほぼ一緒になる計算だ。 

二つの明るい月に照らされた砂漠を馬で走りながら、俺はスザールにスーカの町の概要を聞いた。 

「スーカは小さな町だが、薬草の栽培で有名な土地だ。この帝国の薬草の殆どがスーカ産だ」 

へえ、薬草作りに特化した町か。 

「水の採取方法はケルックと同じで、町に2ヶ所井戸があって、それを活用している」 

「あ~、そしたら最悪はケルックと同じく『井戸の中に雨雲作戦』が使えるのか」 

なるほど、少し安心したわ。 

まあ、出来たら恒久対策打ちたいけどね。 

 

仮眠を2時間だけとって、朝にはスーカに到着した。 

スーカは都市じゃなくて町だというのが良く分かった。 

簡単な柵で囲った場所に数件単位で家が建ち、後は薬草畑や木が生えている。 

それが中心地までずっと続いている。 

俺の世界の田舎と同じ景色だな。 

和むわ~。 

町というより、もう村に近い。 

買い物なんかは、サザレーが近いから市が立つ日に行って買い出すらしく、大きな商店なんかも無い。 

そうは言っても水を運ぶのは大変だし、薬草畑は結構水を必要とするらしい。 

だから井戸の枯渇は一大事。 

中心地は少し下った場所にあり、真ん中に町長の家があった。 

 

「おお、スザール殿!お久しぶりです。やっと来て下さった」 

町長はシワシワのお爺さんで、スザールを見て大歓迎していた。 

「トト爺さん、待たせたな。生きてるうちに来れて良かったぜ」 

「なんの!まだまだ若いもんに後は譲りませんぞ」 

お互い軽口を交わすくらい仲が良いみたいだ。 

「先に井戸を見せてくれ」 

「分かりました。ファルム、案内をして差し上げろ」 

「はい」 

孫だという青年と俺達は一つ目の井戸を見に行った。 

少し離れた所の家が集まった真ん中に、小さめの井戸がある。 

すぐにサーチをかけてみると、確かに底の水脈が細くなっている。 

これだとそろそろ汲み上げづらくなってきているだろう。 

近くに大きな水脈は見当たらない。 

「………もう一つの方を見に行こう」 

俺の表情で察したスザールは、すぐに次の場所へ移動しようとファルムに案内を頼んだ。 

「こちらの方は畑用に使っている井戸です」 

畑の中に設けられている井戸も調べるが、こちらも同じく水脈は細くなっていた。 

近くに使えるものも見当たらない。 

「……応急処置しかできないか…」 

残念だが、すぐに使用出来そうな浅い位置を流れる水脈は見当たらず、取り敢えず両方の井戸の下の方に雨雲を作った。 

 

町長の家に戻って、トト爺さんに井戸の状態を説明する。 

「やはりそうですか。汲み上げロープがだんだん伸びてきていたので、枯渇し始めてるのではと思ってました」 

近くに太い水脈が見当たらないことを告げると、悲しそうに目を伏せた。 

「わしの代で村をたたむことになるかもしれんのう」 

すぐにタンパルへ発つという俺達を、トト爺さんはせめてお昼を食べて行きなされと食事を用意してくれた。 

「お、これ美味いな」 

出された薬草の炒め物が、スパイスが効いていて美味い。 

野菜炒めの中華風みたいな感じだ。 

ピタパンみたいな袋状のパンの中に入れると、食べやすい。 

「これは薬草を8種類混ぜてあるので、体にいいんですよ」 

ファルムは料理が得意で、いつも作っているらしい。 

「このピリっとする黄色の実も薬草?」 

「ええ、これは筋肉の疲労に効くんです。日持ちするので、少し持っていって下さい」 

乾燥してあるものを持ってくると言って、ファルムは地下の保管庫に入っていった。 

最近は筋肉を酷使してばっかりだから助かるな。 

みんなでモリモリと食べていると、ファルムが困惑した様子で戻ってきた。 

「爺ちゃん、地下室に何か入れた?薬草が湿ってカビが生えてる。これじゃ使えないよ」 

「む?わしは何も入れとらんぞ。ただちょっと前に床にヒビが入ったんだが……」 

なに?カビとな? 

俺がカビという単語に反応して顔を上げると、同時にスザールも顔を上げていた。 

ガタっと同時に立ち上がって、ファルムに詰め寄る。 

「ちょっと地下室を見せてくれ」 

「は、はい…」 

これはいけるかもだ。 
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