え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

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第二部  復興編

38.地下室

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目をギラギラさせる俺達の迫力にビビりながら、ファルムは地下室に案内してくれた。 

扉を開けて、暗い石段を下っていく。 

レンガだった両側の壁は、途中から岩の荒い面に変わっている。 

触ってみると、何か固いもので削り出した跡だった。 

「ここって、元は地下室じゃなかった……?…」 

「ああ、そうなんです。かなり昔に、この辺りから鉱石が取れたらしくて、掘り出した跡なんです。といっても、大して出なかったらしくて、他の場所はもう砂で埋もれてしまってていて。ここは上に小屋を建ててあったので残っていたらしいんです」 

そこを改築して町長が住んでいたと。 

なるほど、下に行くほどヒンヤリとしていて、小さな洞窟みたいだ。 

貯蔵にはもってこいな環境だな。 

下に着くと9畳くらいのスペースになっていて、棚が設置されて乾燥した穀物や薬草が整理して保管されている。 

「ああ、ここか……」 

丁度真ん中辺りの床に亀裂が走っていて、その回りが湿っている。 

近くの棚に置かれた薬草は、その湿気でカビが生えたんだろう。 

俺は意識を集中して、亀裂の下をサーチしてみた。 

「………お……おぉ…?……んん?…」 

予想通り、水はある。 

あるんだが、これは~。 

「あるのか?アキラ」 

スザールにせっつかれるが、何とも判断しがたい。 

「あるにはあるんだが…………こう、細いんだよなぁ。でも深くまで伸びてるから、その先に水脈があるのか判断出来ないんだよ」 

ただ、岩の床を割ってくるくらいの圧力がかかってるんなら、期待は出来るかもだ。 

「でも、この亀裂を開いたら、この地下室は水没すると思うぞ?最悪は上の家も吹っ飛ぶかも……」 

「家が……吹っ飛ぶ…んですか……」 

ファルムも青くなっている。 

三人でしばし無言で立ちつくした。 

家の下にあるとは、レアなケースだったわ。 

「……でも、決めるのは爺ちゃんなので」 

しばらく逡巡していた青年は、顔を上げるときっぱりと言った。 

「そうだな、まずはトト爺さんに話そう」 

スザールも頷いて、3人で地下室から上がった。 

 

「な、なんだって……!」 

状況を説明すると、トト爺さんはあんぐりと口を開いてしばし放心した。 

だよな、自分の家の床から水が噴き出すとか、あり得ないもんな。 

しかし、立ち直りは早かった。 

「ファルム、家から親父と畑から人を呼んで来い。すぐに引っ越しだ!」 

「は……?」 

呆けた孫を爺さんは急げと叱り飛ばす。 

「は?じゃあない!水が出るなら、ここを井戸にすればいいんじゃ。家の中の邪魔な物をすぐに外に出すんじゃ」 

えええ、井戸にしちゃうの? 

自分の家を? 

「さすが爺さん、即決即断なのは昔と変わらないな」 

スザールが爆笑している。 

いやいや、そんなにすぐ決めていいもんなのか? 

「水と比べたら、家なんぞ大事な部類に入らんわい。ワシは息子の家に間借りすればいいから大丈夫だ」 

聞けば、すぐそばに息子夫婦と孫のファルムが住む家があるらしい。 

その後は、集まった息子家族や親戚、周りの家の人達、俺達も一緒になってトト爺さんの家から家財道具を運び出す騒ぎとなった。 

みんなはいきなり引っ越し作業を手伝ってくれと言われてびっくりしていたが、地下から水が出ると聞いた途端に目の色を変えて動き出した。 

本当に鬼気迫る顔で必死に作業するもんだから、こっちのこ腰が引けてしまうくらいだった。 

それだけ水の確保が急務なんだと実感する。 

 

粗方運び出しを終えて、俺とスザールは地下室の亀裂の所にいた。 

「スザール、あんたも外に出てなきゃダメだって」 

「アキラだけじゃ危険だ」 

今回は小さな亀裂にリルの枝を刺し込まないといけない為、ある程度しっかり刺さるまで押さえておかないと外れてしまう。 

でも亀裂に固定する前に、一気に床が割れて水が噴き出す可能性もある。 

「お前が死んだり怪我したりしたら、取り返しがつかないんだからな。俺が押さえていた方がいいだろう?」 

「それはそうなんだがな……」 

この役目を他の人に頼めない理由があるんだよ。 

「だってさ、スザール。あんたも他の人達も、泳げないだろ?」 

「およ……ぐ?」 

目が点になってるスザールを見ながら俺は説明を始める。 

「地下室で亀裂から水が噴き出したら、あっという間に水位が上がって、ここはプール……水で満杯になっちまう。その時、泳げないヤツだと溺れちゃうだろ?」 

スザールが固まる。 

前に俺が砂漠で布を使ってお湯を貯めた風呂に頭から飛び込んだ時、スザールはスゲー焦ってた。 

まあ、水が極端に少なくて貴重なこの国にプールなんて代物は無いから、泳げる訳がないんだ。 

「だからこれは泳げる俺がやるしかないんだ」 

「………」 

唸りつつも他に案が無いスザールはしぶしぶといった感じでリルの枝を渡してきた。 

大丈夫、俺、潜水も得意だからさ。 
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