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第二部 復興編
48.イヤな予感
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果樹園管理者の指示の元、農園作業員達が木の伐採や植え替えをしていく。
さすが力持ちのメンバーだけあって、サクサクと作業が進む。
準備が終わった園から、俺は加速をかけて木を成長させる。
どの園の木をどこまで育てるかは、管理者達に判断してもらっている。
全部を一気に実らせてしまっても収穫が追いつかないし、出荷の調整も必要だからだ。
その辺りは管理者が一番分かっているからな。
将来的にまた川の水量が落ちる危険も考慮して、今ある井戸だけでなく他の場所にも井戸を掘ることにした。
もちろん、水源が違うものをチョイスする。
他の土地もそういった保険で別の井戸とかを作っておきたかったが、何しろ時間が無い。
まあ、ライド王子達の進捗状況は、宰相からの報告で大体の所は掴めているんだけどね。
なんと驚いたことに、スザールが部下の一名をライド王子とザウスが連れていかれる一行に荷物持ちとして紛れ込ませることに成功していた。
確かにサザレーを出発する前に、王子達が増えた分の荷物などを運ぶ者をルワブが何人か募っていた。
王子殿下を連れていくのに、テントや食事など兵士達と同じ質素なものという訳にはいかないからだろう。
ライド王子も、ここぞとばかりに王族のキラキラ感を強めに出していたからなぁ。
機転が利く王子様だわ。
その中に、いかにも力があって素朴な民に扮した兵士を入れた訳だ。
やるなぁ、スザール。
さすが宰相直轄の部下だけのことはあるわ。
その兵士が宰相に報告を届けている為に、あちらの進捗状況が分かっている。
思いの外、進みが悪くてまだ王都までは5日くらいかかるようだ。
それというのも、途中でザウスを含む数名が原因不明の腹痛を起こして立ち往生したからだと。
それって、やっぱりあれ?
憶えているだろうか?以前ランドスでルワブ達を足止めする為に、新領主が食事に混ぜた腹痛を起こす薬。
紛れ込ませた兵士から王子には、その時にもらっておいた薬がコッソリと渡されていた。
それを王子が使ったってことだ。
エグいな、王子。
ザウスも腹痛に倒れたのは、疑われないようになんだろうけど。
いや~、容赦ねえな。
でもそれで何とか間に合うかもしれないのだから、ここはザウスに手を合わせておこう。
すまん、お前の犠牲で時間が稼げたよ。
それでも明後日には出発しないとヤバい。
とにかく明日中に終わらせないとだ。
この数日で農園をだいたい復興させたので、今日の午後から井戸の候補地を回って井戸作りだ。
毎日限界まで体力を消耗して、気絶するように寝る日々。
今日も兵士達の声が脳内で親方~に変換されていく。
もう麻痺してきて、聖女でも親方でもどうでもよくなってきたわ。
「アキラ、少しだけ時間を頂戴」
「え……?いいけど…」
告白…じゃないのはその顔色を見れば分かる。
出発準備をしているところにアデル姫から声がかかり、俺達は兵士達から少し離れた所に移動した。
タンパル復興中に何度かアデル姫から物言いたげな視線を感じたが、とにかく忙しくて話が出来なかった。
これから俺達は王都まで強行軍で飛ばすので、アデル姫と護衛のテイル、他に8名の兵士は別行動となる。
この先、話をする機会は暫く無いだろう。
「これは私の憶測なので、根拠がある訳ではないの。だから確証を掴んで欲しいの」
思いつめた表情で懇願してくる姫に、俺は黙って頷いた。
「実は私、離宮に行く前にドメス王とお会いしているの。ご病気になってから何度もお見舞いに行ったのだけれど、いつも面会はさせてもらえなかったのよ。でもその日は寝室の護衛が以前私の護衛をしていた者で、短時間だけこっそりと入れてくれたの」
その時の王の様子を、アデル姫は沈痛な面持ちで話してくれた。
ドメス王は弟の子供であるアデルを可愛がっていた。
父を亡くしたアデルと母を亡くしたライド王子、同じ境遇になったふたりを一緒に遊ばせて仲良くさせたのも王だった。
「久し振りに会えた叔父様は、熱が高くて苦しそうなご様子だったわ。部屋はカーテンが引かれていて、更に天幕も半分かかっていて、暗くて表情はほとんど見えなかったの」
そんな状態でも、民の様子とライド王子を心配していたと。
「あまり時間が無かったのだけれど、汗をかかれていたから、布で額を拭いて差し上げて……後でその布を見たら、ルカンダの汗と同じく緑色だったの…」
「!っ……まさか…」
俺はアデル姫が言いたい事を知って、愕然とした。
「ドメス王の肌の色は見ていないから、確証はないの。でも、今思うと肌の色を隠そうと部屋を暗くしていたのかもって考えて……」
そりゃあ、あんなゴーヤ色の肌を見たら、ただの病じゃないってすぐにバレるもんな。
「……でも、そうなると……医者を始めとしてドメス王の回りにいる人物は全部疑ってかからないといけないってことに…」
マジか~。
寄ってたかって毒殺しようとしている?
宰相や味方になりそうな人間は遠ざけられているとなると、その線が濃厚か。
賢王なのに、なんで?
ガザル第一王子一派だけなら分かるけどさ。
う~ん、どっちにしてもイヤな予感しかしないじゃん。
それでも俺達は、最終目的地の王都に向かって出発した。
第二部 完。
さすが力持ちのメンバーだけあって、サクサクと作業が進む。
準備が終わった園から、俺は加速をかけて木を成長させる。
どの園の木をどこまで育てるかは、管理者達に判断してもらっている。
全部を一気に実らせてしまっても収穫が追いつかないし、出荷の調整も必要だからだ。
その辺りは管理者が一番分かっているからな。
将来的にまた川の水量が落ちる危険も考慮して、今ある井戸だけでなく他の場所にも井戸を掘ることにした。
もちろん、水源が違うものをチョイスする。
他の土地もそういった保険で別の井戸とかを作っておきたかったが、何しろ時間が無い。
まあ、ライド王子達の進捗状況は、宰相からの報告で大体の所は掴めているんだけどね。
なんと驚いたことに、スザールが部下の一名をライド王子とザウスが連れていかれる一行に荷物持ちとして紛れ込ませることに成功していた。
確かにサザレーを出発する前に、王子達が増えた分の荷物などを運ぶ者をルワブが何人か募っていた。
王子殿下を連れていくのに、テントや食事など兵士達と同じ質素なものという訳にはいかないからだろう。
ライド王子も、ここぞとばかりに王族のキラキラ感を強めに出していたからなぁ。
機転が利く王子様だわ。
その中に、いかにも力があって素朴な民に扮した兵士を入れた訳だ。
やるなぁ、スザール。
さすが宰相直轄の部下だけのことはあるわ。
その兵士が宰相に報告を届けている為に、あちらの進捗状況が分かっている。
思いの外、進みが悪くてまだ王都までは5日くらいかかるようだ。
それというのも、途中でザウスを含む数名が原因不明の腹痛を起こして立ち往生したからだと。
それって、やっぱりあれ?
憶えているだろうか?以前ランドスでルワブ達を足止めする為に、新領主が食事に混ぜた腹痛を起こす薬。
紛れ込ませた兵士から王子には、その時にもらっておいた薬がコッソリと渡されていた。
それを王子が使ったってことだ。
エグいな、王子。
ザウスも腹痛に倒れたのは、疑われないようになんだろうけど。
いや~、容赦ねえな。
でもそれで何とか間に合うかもしれないのだから、ここはザウスに手を合わせておこう。
すまん、お前の犠牲で時間が稼げたよ。
それでも明後日には出発しないとヤバい。
とにかく明日中に終わらせないとだ。
この数日で農園をだいたい復興させたので、今日の午後から井戸の候補地を回って井戸作りだ。
毎日限界まで体力を消耗して、気絶するように寝る日々。
今日も兵士達の声が脳内で親方~に変換されていく。
もう麻痺してきて、聖女でも親方でもどうでもよくなってきたわ。
「アキラ、少しだけ時間を頂戴」
「え……?いいけど…」
告白…じゃないのはその顔色を見れば分かる。
出発準備をしているところにアデル姫から声がかかり、俺達は兵士達から少し離れた所に移動した。
タンパル復興中に何度かアデル姫から物言いたげな視線を感じたが、とにかく忙しくて話が出来なかった。
これから俺達は王都まで強行軍で飛ばすので、アデル姫と護衛のテイル、他に8名の兵士は別行動となる。
この先、話をする機会は暫く無いだろう。
「これは私の憶測なので、根拠がある訳ではないの。だから確証を掴んで欲しいの」
思いつめた表情で懇願してくる姫に、俺は黙って頷いた。
「実は私、離宮に行く前にドメス王とお会いしているの。ご病気になってから何度もお見舞いに行ったのだけれど、いつも面会はさせてもらえなかったのよ。でもその日は寝室の護衛が以前私の護衛をしていた者で、短時間だけこっそりと入れてくれたの」
その時の王の様子を、アデル姫は沈痛な面持ちで話してくれた。
ドメス王は弟の子供であるアデルを可愛がっていた。
父を亡くしたアデルと母を亡くしたライド王子、同じ境遇になったふたりを一緒に遊ばせて仲良くさせたのも王だった。
「久し振りに会えた叔父様は、熱が高くて苦しそうなご様子だったわ。部屋はカーテンが引かれていて、更に天幕も半分かかっていて、暗くて表情はほとんど見えなかったの」
そんな状態でも、民の様子とライド王子を心配していたと。
「あまり時間が無かったのだけれど、汗をかかれていたから、布で額を拭いて差し上げて……後でその布を見たら、ルカンダの汗と同じく緑色だったの…」
「!っ……まさか…」
俺はアデル姫が言いたい事を知って、愕然とした。
「ドメス王の肌の色は見ていないから、確証はないの。でも、今思うと肌の色を隠そうと部屋を暗くしていたのかもって考えて……」
そりゃあ、あんなゴーヤ色の肌を見たら、ただの病じゃないってすぐにバレるもんな。
「……でも、そうなると……医者を始めとしてドメス王の回りにいる人物は全部疑ってかからないといけないってことに…」
マジか~。
寄ってたかって毒殺しようとしている?
宰相や味方になりそうな人間は遠ざけられているとなると、その線が濃厚か。
賢王なのに、なんで?
ガザル第一王子一派だけなら分かるけどさ。
う~ん、どっちにしてもイヤな予感しかしないじゃん。
それでも俺達は、最終目的地の王都に向かって出発した。
第二部 完。
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