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第6話
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アレはなんだったのかと言われても俺たちが知りたいくらいだった。
他のゲームで言えばフィールドボスと言われるモノだろう。
この街から少し足を伸ばしてあんなのが出現したとなれば迂闊に遠出もましてや黒側の陣地に行くなど夢のまた夢だ。
「あの……聞こえてますか?」
しまったと思った。
女性はとても不安そうな声をしていた。
「すいません。
俺達にもなんだかわかっていなくて。
エクスはどう思う?」
「ボスとしか言いようがないかな。」
名前はゴブリンキングとなっていたからゴブリンのボスである事は間違いない。
それはこの女性もわかっているはずだ。
なら、聞きたいのは何かのクエストかという事だろうか?
「ボスですか?
この辺りにはあんなのもいるのですね。
驚きました。
刃が通らない生き物がいるなんて。」
「仕方がないですよ。
初期装備なんですから。」
不思議な事を言う人だった。
ゲームで突然、とんでもなく強いボスと当たり1ダメージしか与えられないことなんて多々ある事だ。
そう思っていると女性は不思議な顔をした。
「初期装備?」
そして、腰の刀を抜いてジッと見た後に自分の身なりを見たり触ったりした。
「たしかにこの刃では肉は断ちにくそうですね。」
そこで、俺とエクスは何かがおかしいと顔を見合わせた。
「あの、すいません。
もしかしたらなのですがこういうゲームのご経験はありますか?」
エクスがそう試しに聞いてみた。
女性は一度納刀し、口を開く。
「いえ、初めてです。
それにこれまでゲームというモノを一度もやった事がありません。」
愕然とした。
この環境に経験が一度もない人が入り込んでしまっている現実にだ。
「なら、なぜこんな夜中にあんな場所に?」
問い詰めるように聞いた。
何も知らない人が一人で真っ暗で危険な森の中を彷徨って良いわけがない。
そして、女性の顔はどんどん俯いていく。
なんと話していいか考えているのだろう。
何度か口を開いて閉じてを繰り返す。
「不安だったからです。
この環境が何も知らない事がとても。
ただ、この世界に来た時、周りの人達が可笑しな生き物を殺しているのを見ました。
なので、そうすれば何かわかると思いあの場所にいました。」
ああ……最初の狩祭りみたいな騒ぎのせいか。
たしかに何も知らない人からすればアレが正解のそれに近づけるモノに見えるかもしれない。
「良ければですが、教えますよ。」
そう、エクスが言うと女性は「お願いします」と頭を下げた。
そして、エクスが一つ一つ説明した。
刃が通らない理由なども含めて。
「一つ一つ丁寧なご指導ありがとうございました。」
女性深々とお辞儀をした。
「いいですよ。気にしなくて。
ところで一つ相談なのですがよければ僕達と一緒に行動しませんか?
見ての通り、僕達は二人で行動していて人手が欲しい状況です。」
甘いマスクをしたエクスでも初対面の女性にその相談は流石に断られると思った。
そして、やはり考える素振りを見せ沈默してしまう。
「ちなみに僕とシキのレベルは貴方より随分低いと言っておきます。」
「……ん?」
エクスがおかしな事を言った。
ずいぶんと低いってどういう事だ?
この女性は初心者のはずだ。
「なあ、エクス。
あの人のレベルっていくつなの?」
「……15。」
エクスも若干顔を引き攣っていた。
15ということは俺よりも10近くも上だ。
「ちなみに経験ボーナスで筋力と速度パラメータがかなり高い。
まだ、ステータスポイントを振ってないけどかなり強いよ。」
思い返せば俺が声をかけるよりも速くゴブリンキングに一太刀入れていた。
しっかりみてはいないが思い返せばかなりの剣速だった。
「お答えにお時間を要してしまい申し訳ございません。
こちらからもお願いいたします。」
「よろしくお願いします。」
エクスが手を差し出すと握手を交わす。
続いて俺にも女性は手を差し伸べ、俺とも握手を交わした。
「あ、すいません。
自己紹介が送れました。
私は[ハルノ]と申します。
エクスさんにシキさん。」
「敬語なんて使わなくてもいいよ。」
「俺も大丈夫だよ。」
実際に敬語は距離感を感じて使われるのは俺は嫌いだった。
年齢も同年代に近いだろうし。
しかし、ハルノは首を横に振る。
「すいません。会ったばかりの人に敬語を使うのは癖みたいなモノですので慣れるまで待っていただけますか?」
「大丈夫ですよ。」
俺もそれに続いて頷く。
こうして、二日目にして仲間が一人増えた。
女性なのは意外だったがかなりの手練れだ。
この中で一番レベルが低いのは俺だ。
置いていかれないよう努力する。
そう決心した一日であった。
他のゲームで言えばフィールドボスと言われるモノだろう。
この街から少し足を伸ばしてあんなのが出現したとなれば迂闊に遠出もましてや黒側の陣地に行くなど夢のまた夢だ。
「あの……聞こえてますか?」
しまったと思った。
女性はとても不安そうな声をしていた。
「すいません。
俺達にもなんだかわかっていなくて。
エクスはどう思う?」
「ボスとしか言いようがないかな。」
名前はゴブリンキングとなっていたからゴブリンのボスである事は間違いない。
それはこの女性もわかっているはずだ。
なら、聞きたいのは何かのクエストかという事だろうか?
「ボスですか?
この辺りにはあんなのもいるのですね。
驚きました。
刃が通らない生き物がいるなんて。」
「仕方がないですよ。
初期装備なんですから。」
不思議な事を言う人だった。
ゲームで突然、とんでもなく強いボスと当たり1ダメージしか与えられないことなんて多々ある事だ。
そう思っていると女性は不思議な顔をした。
「初期装備?」
そして、腰の刀を抜いてジッと見た後に自分の身なりを見たり触ったりした。
「たしかにこの刃では肉は断ちにくそうですね。」
そこで、俺とエクスは何かがおかしいと顔を見合わせた。
「あの、すいません。
もしかしたらなのですがこういうゲームのご経験はありますか?」
エクスがそう試しに聞いてみた。
女性は一度納刀し、口を開く。
「いえ、初めてです。
それにこれまでゲームというモノを一度もやった事がありません。」
愕然とした。
この環境に経験が一度もない人が入り込んでしまっている現実にだ。
「なら、なぜこんな夜中にあんな場所に?」
問い詰めるように聞いた。
何も知らない人が一人で真っ暗で危険な森の中を彷徨って良いわけがない。
そして、女性の顔はどんどん俯いていく。
なんと話していいか考えているのだろう。
何度か口を開いて閉じてを繰り返す。
「不安だったからです。
この環境が何も知らない事がとても。
ただ、この世界に来た時、周りの人達が可笑しな生き物を殺しているのを見ました。
なので、そうすれば何かわかると思いあの場所にいました。」
ああ……最初の狩祭りみたいな騒ぎのせいか。
たしかに何も知らない人からすればアレが正解のそれに近づけるモノに見えるかもしれない。
「良ければですが、教えますよ。」
そう、エクスが言うと女性は「お願いします」と頭を下げた。
そして、エクスが一つ一つ説明した。
刃が通らない理由なども含めて。
「一つ一つ丁寧なご指導ありがとうございました。」
女性深々とお辞儀をした。
「いいですよ。気にしなくて。
ところで一つ相談なのですがよければ僕達と一緒に行動しませんか?
見ての通り、僕達は二人で行動していて人手が欲しい状況です。」
甘いマスクをしたエクスでも初対面の女性にその相談は流石に断られると思った。
そして、やはり考える素振りを見せ沈默してしまう。
「ちなみに僕とシキのレベルは貴方より随分低いと言っておきます。」
「……ん?」
エクスがおかしな事を言った。
ずいぶんと低いってどういう事だ?
この女性は初心者のはずだ。
「なあ、エクス。
あの人のレベルっていくつなの?」
「……15。」
エクスも若干顔を引き攣っていた。
15ということは俺よりも10近くも上だ。
「ちなみに経験ボーナスで筋力と速度パラメータがかなり高い。
まだ、ステータスポイントを振ってないけどかなり強いよ。」
思い返せば俺が声をかけるよりも速くゴブリンキングに一太刀入れていた。
しっかりみてはいないが思い返せばかなりの剣速だった。
「お答えにお時間を要してしまい申し訳ございません。
こちらからもお願いいたします。」
「よろしくお願いします。」
エクスが手を差し出すと握手を交わす。
続いて俺にも女性は手を差し伸べ、俺とも握手を交わした。
「あ、すいません。
自己紹介が送れました。
私は[ハルノ]と申します。
エクスさんにシキさん。」
「敬語なんて使わなくてもいいよ。」
「俺も大丈夫だよ。」
実際に敬語は距離感を感じて使われるのは俺は嫌いだった。
年齢も同年代に近いだろうし。
しかし、ハルノは首を横に振る。
「すいません。会ったばかりの人に敬語を使うのは癖みたいなモノですので慣れるまで待っていただけますか?」
「大丈夫ですよ。」
俺もそれに続いて頷く。
こうして、二日目にして仲間が一人増えた。
女性なのは意外だったがかなりの手練れだ。
この中で一番レベルが低いのは俺だ。
置いていかれないよう努力する。
そう決心した一日であった。
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