5 / 7
第5話
しおりを挟む
ゴブリンキングは片目を抑えて、フラフラと蹌踉めく。
「片目を潰した!」
「奴の死角に回って身を隠そう。」
頷き、右前方の茂みに身を潜めた。
これで、茂みを荒らされない限りは大丈夫だ。
エクスも俺の視界にはいないが上手く隠れている。
今すぐこの場から離れたい衝動に駆られるが下手に動けば見つかる恐れがある。
ただ今はジッとすることを決めて、呼吸も自然と最小限になる。
そして、ゴブリンキングはというと片目をギョロつかせて辺りを見渡している。
俺たちを探しているようだった。
[スキル〈潜伏〉を獲得しました]
唐突に現れたそれに一瞬体が強張った。
スキル獲得?
[潜伏を発動しますか?]
そのメッセージをみて「はい」と答えると俺の体は僅かにだが半透明になった。
しかし、体感でどれほど潜伏力が向上したかわからない。
下手に動けないことには変わらなかった。
今だにゴブリンキングは俺達の事を探して、その場から動こうとしない。
「……?」
ゴブリンキングの動きが止まり、不自然に身を屈めた。
エクスがバレたのかと思った。
ゴブリンキングの視線の先にあるものは何かと先を見た。
しかし、そこには誰もいない。
何を見ている?
ただ、ゴブリンキングには俺には見えていない何かが見えていると咄嗟に思った。
出来る限り目を凝らし、ゴブリンキングの見つめる先を注視した。
[スキル索敵を獲得しました。]
[索敵を発動しますか?]
「はい。」
目の前は僅かにクリアになり、暗闇の中を注視した。
「誰かいる!」
暗闇の中で僅かに動いた人影を見た。
距離はそれなりにあると思えた。
ゴブリンキングとのエンカウントする範囲がどれだけ広いのかと驚かされる。
そして、ゴブリンキングの標的はあの人影に移ったわけだ。
生き残るためならば放置して、この場から逃げるのが得策だ。
それに、片目を潰している。
あの人も容易に逃げられはずだ。
そう、逃げる為の言い訳が頭をよぎる。
……慈善活動をしていいのは今までのゲームだけだ。
頭の中で結論づけてそう締め括った。
その時、一本の矢が茂みから飛び出していったのを視界で捉えた。
しかし、その矢はゴブリンキングではなくその人影の足元辺り落ちたように見えた。
エクスがあの人に危険である事を弓矢で伝えた。
そのプレイヤーも立ち止まりこちらを見た。
ドンッ!!
地響きが鳴った。
ゴブリンキングが見つかったと思ったのかその人影に向かって急激に加速したのだ。
「……なっ!?」
驚きで声を上げるが立ち上がるのに一瞬、躊躇をする。
どうする?
一度助ける事を諦めた。
だが、この場にまだいるせいで選択肢が頭の中に過ぎってしまう。
あの人影は1人だ。
あの、ゴブリンキングをどうにか出来るわけがない。
助けるか、助けないか。
敵は俺たちに背を向けた。
今なら両目を潰せれる。
思考が助けられるかどうかの段階にシフトする。
やれる!
俺は駆け出した。
エクスに援護を頼む事は言わなくても伝わるはずだ。
足音をできるだけ殺し、身を屈め、速くゴブリンキングに跡を追う。
目の前で金属同士の衝突で火花が散る。
戦闘は始まっている。
ゴブリンキングは完全に目の前の敵にフォーカスしていた。
背後は取った!
あとはタイミング!
敵が振りかぶった瞬間を!
……狙う!!
ゴブリンキングが大きく振り上げだ瞬間を狙った、右目。
こちらに視線が一瞬向いた。
しかし、遅い。
血飛沫が飛び、確実に両目を潰した。
「まだ!!」
しかし、油断はできない。
ゴブリンキングの背にあった錆びた大斧を取り出し、両足を斬りつけた。
ゴブリンキングは膝をつき、それを確認して、退く為の声をあげようとした。
「おいっ!」
手負いのモンスターだ。
いけると判断したのだろう。
もしくは、現れて早々に膝をついたところから雑魚と判断したか。
その人はゴブリンキングの首に一太刀。
しかし、刃は僅かに表面の皮膚を切り裂いたところで止まる。
「硬いっ!」
足を斬ったと言えど同じく表面切り裂いた感覚しかなかった。
すぐにコイツは立ち上がる。
ここまでやったのに決定打がなり得るものがない以上ここまでだ。
「そこの人!退くぞ!」
そう、声をかけた。
大人しく退くかはわからなかったが納刀したのを見た。
そのまま、エクスと合流してその場から足速に立ち去る。
***
街につき、腰のベンチに腰掛ける。
しかし、街に出る前と出た後で人数が1人増えていた。
「大丈夫でしたか?」
先程助けた長い黒髪の女性。
年齢はおそらく同じくらい。
装備は俺たちと同じ初期装備。
武器は刀。
「ええ、大丈夫よ。
ところで、アレはなんだったの?」
「片目を潰した!」
「奴の死角に回って身を隠そう。」
頷き、右前方の茂みに身を潜めた。
これで、茂みを荒らされない限りは大丈夫だ。
エクスも俺の視界にはいないが上手く隠れている。
今すぐこの場から離れたい衝動に駆られるが下手に動けば見つかる恐れがある。
ただ今はジッとすることを決めて、呼吸も自然と最小限になる。
そして、ゴブリンキングはというと片目をギョロつかせて辺りを見渡している。
俺たちを探しているようだった。
[スキル〈潜伏〉を獲得しました]
唐突に現れたそれに一瞬体が強張った。
スキル獲得?
[潜伏を発動しますか?]
そのメッセージをみて「はい」と答えると俺の体は僅かにだが半透明になった。
しかし、体感でどれほど潜伏力が向上したかわからない。
下手に動けないことには変わらなかった。
今だにゴブリンキングは俺達の事を探して、その場から動こうとしない。
「……?」
ゴブリンキングの動きが止まり、不自然に身を屈めた。
エクスがバレたのかと思った。
ゴブリンキングの視線の先にあるものは何かと先を見た。
しかし、そこには誰もいない。
何を見ている?
ただ、ゴブリンキングには俺には見えていない何かが見えていると咄嗟に思った。
出来る限り目を凝らし、ゴブリンキングの見つめる先を注視した。
[スキル索敵を獲得しました。]
[索敵を発動しますか?]
「はい。」
目の前は僅かにクリアになり、暗闇の中を注視した。
「誰かいる!」
暗闇の中で僅かに動いた人影を見た。
距離はそれなりにあると思えた。
ゴブリンキングとのエンカウントする範囲がどれだけ広いのかと驚かされる。
そして、ゴブリンキングの標的はあの人影に移ったわけだ。
生き残るためならば放置して、この場から逃げるのが得策だ。
それに、片目を潰している。
あの人も容易に逃げられはずだ。
そう、逃げる為の言い訳が頭をよぎる。
……慈善活動をしていいのは今までのゲームだけだ。
頭の中で結論づけてそう締め括った。
その時、一本の矢が茂みから飛び出していったのを視界で捉えた。
しかし、その矢はゴブリンキングではなくその人影の足元辺り落ちたように見えた。
エクスがあの人に危険である事を弓矢で伝えた。
そのプレイヤーも立ち止まりこちらを見た。
ドンッ!!
地響きが鳴った。
ゴブリンキングが見つかったと思ったのかその人影に向かって急激に加速したのだ。
「……なっ!?」
驚きで声を上げるが立ち上がるのに一瞬、躊躇をする。
どうする?
一度助ける事を諦めた。
だが、この場にまだいるせいで選択肢が頭の中に過ぎってしまう。
あの人影は1人だ。
あの、ゴブリンキングをどうにか出来るわけがない。
助けるか、助けないか。
敵は俺たちに背を向けた。
今なら両目を潰せれる。
思考が助けられるかどうかの段階にシフトする。
やれる!
俺は駆け出した。
エクスに援護を頼む事は言わなくても伝わるはずだ。
足音をできるだけ殺し、身を屈め、速くゴブリンキングに跡を追う。
目の前で金属同士の衝突で火花が散る。
戦闘は始まっている。
ゴブリンキングは完全に目の前の敵にフォーカスしていた。
背後は取った!
あとはタイミング!
敵が振りかぶった瞬間を!
……狙う!!
ゴブリンキングが大きく振り上げだ瞬間を狙った、右目。
こちらに視線が一瞬向いた。
しかし、遅い。
血飛沫が飛び、確実に両目を潰した。
「まだ!!」
しかし、油断はできない。
ゴブリンキングの背にあった錆びた大斧を取り出し、両足を斬りつけた。
ゴブリンキングは膝をつき、それを確認して、退く為の声をあげようとした。
「おいっ!」
手負いのモンスターだ。
いけると判断したのだろう。
もしくは、現れて早々に膝をついたところから雑魚と判断したか。
その人はゴブリンキングの首に一太刀。
しかし、刃は僅かに表面の皮膚を切り裂いたところで止まる。
「硬いっ!」
足を斬ったと言えど同じく表面切り裂いた感覚しかなかった。
すぐにコイツは立ち上がる。
ここまでやったのに決定打がなり得るものがない以上ここまでだ。
「そこの人!退くぞ!」
そう、声をかけた。
大人しく退くかはわからなかったが納刀したのを見た。
そのまま、エクスと合流してその場から足速に立ち去る。
***
街につき、腰のベンチに腰掛ける。
しかし、街に出る前と出た後で人数が1人増えていた。
「大丈夫でしたか?」
先程助けた長い黒髪の女性。
年齢はおそらく同じくらい。
装備は俺たちと同じ初期装備。
武器は刀。
「ええ、大丈夫よ。
ところで、アレはなんだったの?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる