ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷と契約しました。

練太郎

文字の大きさ
1 / 7

俺、奴隷と契約しました その1

しおりを挟む
 夢を見た。
 奴隷の証である首輪を付けた物凄く綺麗で気品ある女性を、奴隷市場で見かけて衝動的に契約してしまった夢だ。
 ……おかしな話だ。俺、エリックはとあることで有名な冒険者なんだ。奴隷と契約したなんて皆に知られたらとんでもないことになるかもしれない。

 そうさ、昨日お酒を少し飲みすぎたから、それのせいで頭の悪い夢を見てしまったんだ。
 ハハ、もうそろそろ頭も冴えてきた頃だろうし、目を覚ますとしよう。そして、起きてすぐに冷たい水で顔を洗ってスッキリするんだ。

 思考が回り始め、日の明るさがまぶたを通り越して俺の眼球へと届き、周囲の音を拾えるようになってきた。

「……グスン……グスン……」

 すると、なにやら俺の顔の上から女性の泣き声が聞こえてくる。
 ……何故か分からないが、俺の頭が目を覚ますなと警鐘を鳴らし始める。

(おかしいな。俺は一人暮らしのはず。昨日、何かあったのか……?)

 思い出そうとするが……夜からの記憶がない。友人と酒を飲みに行ったところまでは覚えているんだが、その後の記憶は完全に抜け落ちていた。

「グスン……グスン……うえぇえん」

 あの夜、何があったんだろうかと思い出そうとするが、あまりにもわざとらしい泣き声が気になりすぎて何も思い出せない。普通、泣く時って『うわーーーん』とか「うぅぅぅ……」とか、そんな感じじゃなかろうか?

(なんだよ、「うえぇえん」って。思いっきり棒読みだったし、絶対にウソ泣きだろ。今すぐ目を起き上がってツッコみてぇ……)

 そんな俺だったが、未だに起きようと決心することが出来ないでいた。というのも、非常にまずい予感--さっきの夢が現実だったのでは? という感じがしたからである。

 俺が生きるこの世界では、奴隷の存在や彼らの売買自体は珍しくないし、国からも正式に認められている。昔は、劣悪な環境で命尽きるまでこき使われるというのが奴隷の実情だったが、現在ではそういうことは一切ない。
 というのも、奴隷を購入するには結構合格率の低い国家試験を合格し、ライセンスを取得しないといけないというハードルが設けられたために、奴隷へのあたりがキツかった悪徳業者などは壊滅。優良な業者や契約者だけの市場となり、労働環境が大幅に改善されたのだ。
 また、人権なども国によってきちんと保障されるようになり、今では普通に働いたり冒険者をするよりも、奴隷になって契約者に契約された方が良い人生を送れる、なんて言われることも多いのだ。最近では、『奴隷』という名称を変えてはどうか? という機運も高まっているらしい。

 で、なんでそんな奴隷と契約したことがまずい、と俺の場合なるのか。それは、さっきも言ったように俺がとあることで有名な冒険者であることと密接に関係している。

 実力? まあ、そこそこだ。
 権力? まあ、それもそこそこだ。
 俺が有名なのはそういうことではない。

 俺は……ということで有名になったのだ。
 『カッコいい姿を見て興奮する』とかそういう話ではない。『発情』と言ったように、俺がユニークスキルというものを使って戦っていると、女性がエッチな気分になってしまうのだ。

 もう一度言おう。俺は女の人を発情させてしまう。それも大事な大事な戦闘中に。
 想像してみて欲しい。女性がいるパーティーで俺が戦った時のことを。
 想像通り、それはもう大変だった。あの時は、回復役が女性だったのだが、俺がユニークスキルを発動して戦闘を開始した途端、突然発情しだして、自慰を戦場でし始めたのだ。
 パーティーには俺の他にもう一人男が居たのだが……すっごいムンムンしながら敵と戦うはめになり危うく死にかけた、という誰も得しない出来事があった。

 決してわざとやったわけじゃない。当時、俺は駆け出し冒険者で自分のユニークスキルのことをそこまで把握できていなかった。パーティーを組むにも基本的には男とだったし、そのパーティでは何も問題は起きていなかったのだ。まさかユニークスキルを使うと女性を発情させるなんて夢にも思っていなかった。

 戦闘終了後、回復役の女性には誠心誠意謝り、許してもらえた。特に駆け出しのときは、ユニークスキルの全容を把握しきれていない場合が多々あることは知られおり、女性もハプニングは想定済みだったらしい。流石に発情させられたのは想定外だったと言われたが……。

 その後は、こういう事故が起きないようパーティーを組むときは基本的に男と組んで魔物を討伐していたのだが、ある程度冒険者稼業をやっていると、魔物に襲われ危ない状況になっている男女混合のパーティーに遭遇することが多々ある。救えるなら救いたいというのが俺の基本方針なため、彼らに助太刀をするということをしていたのだが……その際、不可抗力ではあるが女性を発情させてしまっていた。

 助太刀した彼ら彼女らには感謝され、発情のことに関しても謝れば『全然気にしていないですよ!』と笑顔で許して貰えていたのだ。

 ただ、そんなことを何度も何度も繰り返していくうちに、俺は『ピンチのときに颯爽と現れ魔物を倒し、女性を発情させて消えていく男』として名が知れ渡ってしまったのだ。
 いや、別に悪意があってそういう名を吹聴している訳ではないのだろう。その名を口に出している複数人に俺にどういうイメージを持っているのかと赤の他人のふりをして聞いても『彼に救われた人たちからは良い話しか聞かないし、ヒーローみたいな印象を持っているよ』と言われるだけだった。なので悪い印象は持たれていない……はず。

 ただ、女性を発情させてしまうユニークスキル持ちの俺が、女性の奴隷と契約したなんて知れたら、変な思考の深掘りをされてせっかくの評判が崩れ去ってしまうかもしれない。まあ、俺の周りの冒険者はみんな優しいからそんなことにはならないのかもしれないが。

(というか、今までは赤の他人ということで、そういう場面を見てしまったとしてもなんとか興奮しないでいれたが、俺とある程度近しい関係になるであろう奴隷の女性が自慰なんてし始めたら……理性が吹き飛んで何かをやらかしかねん……)

 やばいな、どうしようと不安になってアワアワしていた俺だったのだが、

「うえぇえん……うえぇえん……んー、まだ起きないのでしょうか? かれこれ一時間ほどずっと泣き真似をしていたのですが……なかなか難しいものですね」

 顔の上からまた声が女性の声が聞こえてきた。
 どうやら俺が狸寝入りを決め込んでいることには気がついていないらしい。
 一時間以上泣き真似をしているのは流石にどうなんだ? と思ったが、泣き真似じゃない普通の彼女の声を聞いて、聞き覚えがある声、具体的に言うと夢で見かけた女性の声だと思った。どうやら、奴隷を買ったというのは現実だったらしい。
 
 これからのことを思うと起きたくないのは山々だったが、今日は朝からソロでクエストを受けることになっていたので、それを本当に受けるにしてもキャンセルにしてもどのみちもう起きなければいけなかった。

 ということで、俺は意を決して目を開ける。すると……そこには、やはり夢に出てきた美しく、そして気高いオーラを放っている女性が俺の顔の目の前にいた。
 透明感はありながらもしっかりと血色がある肌に、色素が薄い人特有の茶色い髪、しかも手入れがしっかりとされているのか、長さはかなりのものなのにキラキラと光を美しく反射している。

 奴隷の証である首輪はデザインが凝ったネックレス型になっており、おしゃれな感じで何かの宝石もついていた。服なども裕福なご令嬢が所持しているレベルで良い生地、センスの良いデザインだ。
 
(--えっ……なにこの女性……美しすぎません……? 俺の好みにどストライクなんだけど……。てか、こんなきれいな人が俺の家に来てくれたという事実だけで今後生きていけそうだわ……)

 彼女に思わず見惚れていると、

「あっ! 起きてくださいましたか! その……寝起きということで大変申し上げにくいんですが……私、お腹と背中がくっついてしまうくらいお腹が減っていて……何か食べるものをいただけないでしょうか? できれば量は多めでお願いしたいです……。私、大食いらしいので……すみません!」

 目の前の彼女がご飯を作ってくれないかと上目遣いで頼んできた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

処理中です...