ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷と契約しました。

練太郎

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俺、奴隷と契約しました その2

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「それで、その……君のこととか、昨日のことをお聞きしても……?」

 俺は、張り切ってたくさん作った朝食を美味しそうにバクバクと食べている女性に質問をしてみる。
 彼女が奴隷であることは分かるし、状況的に俺が契約者になっているんだろうが、本当にそれであっているのか、あと何がどうなってこうなったのかを聞きたかった。
 
 彼女は食べる手を止め、口をナプキンできれいに拭いてから自己紹介をしてくれた。

「私はシエナと申します。奴隷市場にて私と契約してくださる方を探していましたところ、かの有名なエリック様を見かけたので即座に猛烈アタックし、無事に契約が成就しました。その後は、そのままこの家に連れてきていただき今に至るという感じです」

 やはり彼女は俺と契約した奴隷ということで間違いないらしい。しかしこんな美しい女性に猛烈アタックされていたのか……。記憶が無いのが悔やまれる。

「ありがとうございます。昨日は泥酔状態?だったらしくて、シエナさんと契約したときの記憶が消えているんです……。すみません。あと、なにか粗相とかしていたら申し訳ないです……」
「いえいえ! 確かにお酒に酔っている感じでしたが、私、何もされていないのでお気になさらず! それに、女性関係ではガードが固いとの評判だったエリック様とこうして契約できたのも、ああいう状態だったからだと思っているので、むしろありがとうございます!」

 『もう最悪でした!』と言われることを覚悟していたのだが、お礼を言われるという予想外のことが起きた。

 ガードが固いのかどうかは分からないが、確かにあの頭の狂ったユニークスキルのせいで女性との縁はほとんどなかったし、自分から近寄ることも基本的にはしなかった。ライセンスは持っていたら何かの役に立つかと思って取ってはいたが、実際に奴隷と契約を結ぶことは考えていなかった。彼女の言う通り、泥酔状態で特に何も考えずに奴隷市場に足を踏み入れ、その場の勢いで彼女と契約しないと今の状況は作り出せなかっただろう。ある意味グッジョブだし、何してくれてんだとも言える。

(まあ、過ぎてしまったのは仕方ない。これからは、俺がしっかりと責任と自覚を持ち、彼女が何不自由なく暮らせるように様々な面でバックアップをしよう!)

 心の中で決意を固めていると、シエナさんが少し不安そうな声音で

「もしかして……ご迷惑でしたか……? やっぱりこの契約は取り消しとかになっちゃいますか……?」

 と聞いてきた。俺は慌てて否定する。

「いやいや! そんなことは私の方からはしないですよ! ただ、自分みたいな人を契約者にして大丈夫ですか? 言いづらいですけど、私のユニークスキルは女性にとってはとんでもないものですし……」
「それは承知の上です! そもそもあれは不可抗力ですし、そのユニークスキルによって救われた人はたくさんいます。なので気に病む必要はないかと思います。それに私は……度々報告に上がってくる--じゃなくて、噂で聞いていたエリック様の人柄に惚れ込んで契約を申し出たのです! エリック様以外は契約者として眼中にないです!」
「な、なるほど……。ありがとうございます……」

 報告に上がってくるとかちょっとおかしな言葉が聞こえたような気がするが気のせいだろう。とにかく、彼女は俺が契約者で問題ないらしい。

(というか、俺に対する好感度が高すぎないか? 思わず照れちゃったぞ……。俺よりも良い奴なんて星の数ほどいると思うんだが。ま、まあシエナさんが目の前にいなければその場で飛び跳ねるくらい嬉しかったけども……)

 その後、しばらくの間。俺は俺で照れて何も言えなくなり、彼女は彼女で『本音が出すぎました……』と小声でつぶやくだけで、二人共お互いの顔を見れないでいた。


◆◆◆

 朝食を食べ終わり、二人で協力して片付けをした後。
 俺は今日のクエストを受けるための準備をする。初めはこのクエストをキャンセルしようかなと考えていたのだが、キャンセルに伴うペナルティはないと言えども直前に『あ、やっぱり今日はやめときます』とギルドに伝えるのは申し訳ないと思ったのだ。俺は真面目が取り柄なのだ。このあたりはきちんとしておきたかった。

 俺はシエナさんに『適当にくつろいでいてください』と伝えてから、自室で寝間着の服から冒険者の装備に着替えていく。
 ちなみに俺のジョブは剣士だ。
 元々は魔術師で中間ポジションをパーティーで担当していた。ただ、『女性を発情させてしまう』というユニークスキルの効果が分かってからは、男と一緒にパーティーを組むか、ソロで頑張るかの二択になってしまった。俺の場合、魔術師というジョブのままソロでモンスターと戦うには荷が重いと感じたため、剣士にジョブチェンジしたのだ。

 幸いなことに、才能にはなんだかんだ恵まれていたらしく、ジョブチェンジしても別に困ることはなかった。というか、魔術師よりも剣士の方が向いているんじゃないか、と思うくらい今では体に馴染んでいる。


 俺は動きやすい服に着替え終え、最後に大剣を抜身のまま腰のフックに下げる。
 今日は動きの遅いモンスターを討伐する予定なので、一撃の攻撃力を重視した大剣を選択したのだ。
 防具に関しては剣士というと鎧を思い浮かべるかもしれないが、俺は重くて動きづらいのが好きじゃないのと、自分の戦闘スタイルが一撃離脱を繰り返す、といものなので、必然的に身軽なものとなる。
 一通りの準備が終わったので、シエナさんに留守番をお願いしてから出かけるかと思っていたら、彼女がこの部屋の扉を少し開いてこちらを見ていることに気がついた。
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