【全寮制男子高校】城下町ボーイズライフ【長編】

川端続子

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【14】星羅雲布~わたしの星の王子様

今も昔も男子高校生って奴は

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 あれで良かったのかな、と菫とほほ笑みあっていると、突然物音がした。
 がさがさがさっという音と、どすんっという音。
「ちょっ!待てって!」
「うわあっ」
「おいばか押すな!」
「いてええええ!」
 どっと目の前に黒い塊が落ちてきたと思ったら、それは報国院生で、地球部の一年生たちだった。
 土塀の陰からころがり出てきたので、多分幾久達を影からこっそり覗いていたんだな、と気づく。
 幾久は驚いて言った。
「晶摩?御空に万寿、普まで」
 なにやってるんだ?と思っていると四人は服のほこりをはたきながら立ち上がった。
 菫は驚きつつも幾久に尋ねた。
「いっくんのお友達?」
 幾久が答える前に、四人はずいっと近づいて言った。
「はいはいはい!友達です!大親友です!」
「なので怪しいものではありません!」
「僕もいっくんみたいにハグお願いしまーす!」
「お前ら!」
 山田が注意するも、他の三人は幾久と菫をわくわくした目で見ている。
「お前ら何やってんの?つか、覗いてたワケ?」
 幾久が言うと四人は首を横に振った。
「たまたまだよ、たまたま」
「そーそー!乃木さんで休んでてさあ、戻ろうとしたらすっげえ美人いるじゃん?」
「いっくん一緒じゃん?なんか雰囲気あるじゃん?」
「まあ気になるよな」
 山田も頷くので、幾久はため息をついて言った。
「つまり、覗いてたんだな」
「結果として」
「偶然」
「そうなってしまった」
「かもしれない」
 揃ったタイミングで言う四人に、菫は吹き出した。
「なにそれ!君ら面白いね!」
 菫が笑ったので、これは許して貰えたと、四人は勝手に話を始めた。
「いっくんばっかうらやましい」
「そうだぞ!こんなキレーなお姉さん、滅多にいねーぞ!俺初めてみたぞ!」
「なんでハグなんかしてんの。俺もしたい」
「気持ちは判る」
「御空まで……」
 幾久は呆れるが、まあ判らないでもない。
 男子校で、女性なんか見ないし先生もまかないさんも報国院は男性ばかりだ。
 やっと桜柳祭で女子が学校にやってきても、地球部の部活やなんやで忙しくてそう遊べない。
 しかもびっくりするくらいの美女ときては、気にならない訳がない。
「……お世話になってる人に関係ある人だよ。失礼すんなよ」
 六花の後輩だから間違いじゃないのでそう説明すると、四人はふーん、と納得する。
 可愛い顔で女の子大好きの普が言った。
「ぼくらもハグお願いします」
「普!」
 幾久が言うと、万寿が言った。
「おれもおれもおれも!」
「俺も」
「お前らいい加減にしろって……」
 幾久が言うが、菫は笑いながら言った。
「ハグくらいいーよ?いっくんのお友達なんでしょ?」
「はい!」
 なぜか四人全員が綺麗に声をそろえて答えたので菫はますます爆笑した。

 結局、菫に一瞬ハグされるという栄光を勝ち取った四人は、ほくほくと感覚を堪能していた。

「お前らほんっとなにやってんの」
 呆れる幾久だが、四人全員が言った。
「だってさ、こんな美人にハグとかもう絶対にチャンスねーじゃん?!」
「人生で一度きりのチャンスを棒にふるわけない」
「これはもう神のおぼしめし」
「美しいって正義だと思う」
「御空もするとは思わなかった」
 どちらかといえば固いのに、と幾久が言うと山田は答えた。
「正義には従う」
「あっそ」

 結局、菫と幾久、そのほか四人は一緒に学校のまわりをぐるりとめぐり、校門前まで歩いた。
「ほんっと、報国院生ってみんな馬鹿よね。昔とちっとも変らない」
 菫に幾久以外の四人が言った。
「おれら一応」
「鳳っすけど」
 タイが儀礼用の黒なので、鳳の四人はそう不満げに言うが菫は言った。
「知らないの?成績が良くても一番バカは鳳って地元じゃ有名よ?勉強を抜いたらやってること千鳥と変わらないって」
「えー?」
「そんなあ」
 ぶーぶーと文句を言うが、菫は楽しそうに笑ってる。
(良かった)
 幾久が微笑んでいると菫も気づき、微笑み返す。
 それを見て入江が言った。
「なに微笑み合ってんだよ。雰囲気ありまくり」
「ぼくも美人と微笑みあいたい!」
 そう三吉も言って菫に近づくが、幾久はため息交じりに言った。
「言い忘れたけどその人、雪ちゃん先輩のお姉さんだから、後から雪ちゃん先輩に叱られても知らないからオレ」
 すると四人は立ち止まり、顔を見合わせてさーっと青ざめた。
「ちょ……ッ!それおまえ先に言えよ!」
「やばいやばいやばい!雪ちゃん先輩、すげーシスコンだって聞いてるんだけど!」
「お姉さんに関してはちっとも冷静じゃないとか」
「えっ、まじやべーじゃん」
 四人で急に会議をはじめ、なにか話し合いを済ませると品川と三吉がダッシュで学校に向かった。
「どうしたの?」
「現状の問題を打破する解決策を」
 そう言ったのは山田だ。
「おい、幾、ちょっと付き合え。雪ちゃん先輩のお姉さま、まだお帰りになりませんよね?」
 雪充の姉と知って口調まで変わってしまった入江が尋ねると、菫は頷いた。
「うん。知り合いが待ってるから、マスターの出店の前にまだいるけど」
「ちょっと!ちょっとだけお待ちください!幾を派遣するまで先ほどの件は雪ちゃん先輩にはご内密に!」
「え?ちょ、万寿」
 いきなり引っ張られ幾久は文句を言うも、「いいから来い!」と言われ、引きずられる。
「あたし、マスターの所で待ってるね?」
「あ、ハイ、後から行くっす」
 幾久は引きずられるように、山田と入江に引っ張られ、鳥居のある校門前から校舎へ向かって行った。



 一人、マスターの出店の前に戻ってきた菫を見つけたのは六花だった。
「お帰り菫。いっくんはどうした?」
「あとからこっちに来ますよ。途中いっくんのお友達と会っていろいろ面白くて」
 そう言って菫が笑うと、六花は「そっか」と笑った。
「それよりあんた、まだここに居たの?」
 菫があきれ顔で言ったのは、毛利がまだ店の前に居たからだ。
「俺は外担当だからいーんだもん。みよが校舎内」
 毛利が言うと、六花が言った。
「じゃんけんでみよ負けたんだよ」
「あーね」
 つまりどっちかがサボりたかったというわけだ。
「どうだ、ボーズの感想は」
 毛利が尋ねた。
 菫はにーっこりと笑って言った。
「かわいいかわいい。ほんと可愛いかった。思わず抱きしめちゃったくらいには可愛くて」
「生徒に手ェ出すなよ」
 毛利が言うと菫が言い返した。
「おめーこそ手ェ出してねーだろーな。いっくん殴ってたらその五千万倍、私が殴りかえす」
「やめろ殴ってねーよ!」
「本当か?」
 凄む菫に毛利は何度も頷く。
「してねーしてねー!あいつおりこうさんだもん!してねーってマジで!」
 必死に首を横に振るので、菫は「そうか」と納得したようだ。
「でもほんと、なんか似てるのは判った。あれは可愛いって思いますね」
 菫が言うと、毛利も頷いた。
「なんか動きとか雰囲気とかな。後ろから見たら、時々びっくりする」
 おい杉松、お前なに制服なんか着て高校生やってんの。
 そう声をかけて笑いたくなるほど。
 タバコの灰を携帯灰皿に落とし、毛利は言った。
「杉松よりアイツは頑丈に出来てるよ。友達もバカばっかりだし、なんたって瑞祥ともうまくやってんだ。心配ねえよ」
「それが信じられなかったんだよね」
 杉松の弟の瑞祥は、むしろ似ていれば嫌うだろう。
 どこまでも杉松を愛していた。
 だから似ていたら、逆にうっとおしいと思うのじゃないかと、思っていた。
「みよは正気?」
「正気、正気。やっぱ少しは大人になってんな」
 杉松の強烈なシンパだった三吉も、勿論幾久を最初に見たときは動揺していた。
 ただ、ひた隠しにしていただけで。
 そこは立派だと毛利も感心したくらいだ。
「じゃあ青木のバカは?」
 尋ねた菫に、毛利が答えた。
「狂気。ご想像通り」
「うわあ」
「しっかり逃げてるけどな。ボーズ、サッカー経験者だから福原に懐いて遊んでる」
「あ、じゃあ心配ないか」
 福原と青木は犬猿の仲で、互いの弱点は互いに熟知している。
 あれで同じバンドをずっとやっているのだから、不思議な仲だ。
 菫も同じ年頃の青木や福原とは友人付き合いがあった。
 杉松に関わった人はみんな、いつの間にか知り合いになっていた。
 杉松が中心という訳でもなく、ただ杉松の近くに居たくなる、そんな雰囲気を持っていた。
「瑞祥もハルちゃんも可愛がってるなら、いいね」
 あの二人が幾久を追い出したりしていないのなら、それは問題がないという事だ。
「雑に扱っても堪えねーからなアイツは。体育会系らしーわ。そこが杉松と違うのかもな」
 違うと判っていても、似ていれば似ている場所をあえて探してしまう。
 だから余計に、違う所が目立って見える。
「若さはスゲーよ。こっちがためらってるモン、全部簡単に乗り越えていくからな。俺らもああだったか?って思うけど思い出せねーわ」
「バカさかげんではお前らが間違いなく上」
「そこは否定しない。近頃の子供はお行儀がよろしい」
「お前らが悪すぎたんだ」
 寮を壊し校内で暴れ、ウィステリアでも大暴れした。
 そのせいで報国院の生徒はウィステリアに入れなくなってしまったのだ。
 毛利とマスターが壊したものは数知れない。
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