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20・地球部ってなんぞ
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つまり、演劇部と映像研究部は、報国院とのつながりが『ガチ』らしい。
「まず演劇部。これは報国院の演劇部である『地球部』との接点が多い。同じ部活だから、という理由にとどまらず」
「グローブ?」
不思議そうな芙綺に先輩が頷く。
「とっても新鮮な反応いいね!そう、グローブとは、『地球部』と書いて『グローブ』と読む!」
「地球のほうか」
GLOVEではなくGLOBE、VじゃなくてBのほうだ。
てっきりキーパーのグローブを想像したサッカーオタクの芙綺だった。
「報国院の演劇部は、『地球部』っていう特別な呼び方をするの」
「どうしてですか?」
「知らん」
知らないのかい、と思わず突っ込みそうになった芙綺に、寿の姉がずい、と前に出た。
「もう、いいかげん覚えなよ。あのね、シェイクスピア知ってるでしょ?ロミオとジュリエットとか、リア王とかヴェニスの商人とかの作者」
聞いたことがあるので芙綺や一年生らは頷く。
「そのシェイクスピアが建てた自分の劇場が『地球座』、つまり『グローブ座』だったのね。いまはもうないけど。で、報国院は元々演劇部はシェイクスピアの研究をする部活から派生したんだって。演劇はあくまで研究の為ってことで、地球座からもじって地球部、って名前になったんだって」
「へえ」
成程、さすが文系の学校、そんないわれがあったのか。
「でも、いつの間にかシェイクスピアの舞台と、その他にも舞台をやるようになった。桜柳祭ってのが報国院の文化祭なんだけど、シェイクスピア劇と、創作歴史劇を年ごとに交替でやるの」
「それで去年はロミジュリ、というわけだったのかあ」
はあーと一年生らが感心した。
「という事は、今年はシェイクスピア劇ではないという事か」
なんだー、がっかりーと言うが先輩らは呆れた。
「言っとくけど去年のロミジュリがおかしかったんだよ。いくら報国院でもあそこまでぶっとぶの滅多にないし。つか、大抵、ハムレットとかじゃないかな」
「ロミジュリの前のシェイクスピア劇はヴェニスの商人だった」
あたし見たし、と三年生が手をあげる。
「そういやそっか。懐かしいなー、受験生なのにあれだけは見るって桜柳祭行った」
「おくらちゃんはそういや中学受験したんだっけ」
「しました。でも結局、こっちに来ちゃったんで」
「そういう人多いよ。中学受験したのに、結局ウィステリア来たいからってまた高校受験になっちゃう人」
「うちの学校あるあるだよね~」
成程、ウィステリアは相当な人気があるらしい。
(あんまり知らないで来ちゃったなあ)
芙綺からしたら、名前しか知らなかった。
幾久が薦めてくれたから迷いなくこの学校を選んだし、制服が可愛いと聞いていたけれど、忙しかったり親から逃げたりで、しっかりと確認する余裕がなかった。
この学校に来ている生徒らは、みんな笑顔でにこにこしていると思っていたけれど。
(当然か。好きな学校に来れてるんだから)
可愛い制服、お洒落な旧校舎、そして自由度の高い学校生活。
先生すらみんな女性ばかりで、芙綺にしたら気がやすまるばかりだ。
それに、やたら変な絡まれ方をされずに済むのが嬉しい。
「それよりだよ!折角ガチ勢いるんなら」
「そう!しっかりとお話しないと!」
うんうん、と先輩達が頷く。
「えーと、おくらちゃんだっけ?」
「奥平です」
「それと、ござる」
「かまわんでござる」
雑だ。
「せめて名前で呼んであげてください」
芙綺が挙手すると雅が「雅でござる」と言うので、先輩らも「みやびちゃんか」「よろしくねみやび」と次々に呼び捨てにしはじめた。
「雅、そこに入っているのは、報国院のジュリエットくん、だね?」
「はい。まごうことなく、報国院のジュリエット君でござる」
思い切り雅が頷き、芙綺は「はは」と小さな笑いが出てしまった。
「まさか、ストーカーする気でうちの映像研究部に?」
「まさかでござる。このワイ、ご本尊にご迷惑をかける気など毛頭なく、むしろ壁になって写真だけ撮りたい所存。入手経路はすべて公式からがワイのポリシーにござる」
きりっとして言い放つ雅に、先輩達は「おお……」と拍手した。
「で、おくらちゃんは?」
「わ、たしはどっちかっていうと、妄想系というか、あの、ロミジュリ二人が尊いっていうか。あえて言うなら推しはジュリエット君です。二人が尊い派です」
「成程。まあよし。君らは映研なら、先輩もいるしおかしな行動もしないだろう」
すると雅と奥平は頷いた。
「はい」
「勿論です」
「よーし。持っているのが公式というのは正しくて良い。絶対に隠し撮りとか禁止だからね」
「しないでござる」
「しません!」
「いやー、マジでやんないでね。もしやらかしたら、下手したら退学になるから」
へ?と一年生らが驚く。
「実は報国院って、生徒の情報が外部に漏れるの、めちゃくちゃ嫌がってるの」
すると雅が尋ねた。
「でも、生徒がインスタとか、割とSNSやってるでござるが」
「あれはちゃんと学校がチェック入れてるんだよ。ロミジュリの情報って、一部からしか出てないでしょ?」
「そういえば確かに」
「殆どロミオ君のインスタが情報源です」
奥平も頷くと、先輩らも同じく頷いた。
「報国院、もしやらかしたら警告なしで訴えてくるらしいから、そこんとこは気を付けてね」
「まじで」
「まじ」
雅もだが、芙綺も驚いた。
「まず演劇部。これは報国院の演劇部である『地球部』との接点が多い。同じ部活だから、という理由にとどまらず」
「グローブ?」
不思議そうな芙綺に先輩が頷く。
「とっても新鮮な反応いいね!そう、グローブとは、『地球部』と書いて『グローブ』と読む!」
「地球のほうか」
GLOVEではなくGLOBE、VじゃなくてBのほうだ。
てっきりキーパーのグローブを想像したサッカーオタクの芙綺だった。
「報国院の演劇部は、『地球部』っていう特別な呼び方をするの」
「どうしてですか?」
「知らん」
知らないのかい、と思わず突っ込みそうになった芙綺に、寿の姉がずい、と前に出た。
「もう、いいかげん覚えなよ。あのね、シェイクスピア知ってるでしょ?ロミオとジュリエットとか、リア王とかヴェニスの商人とかの作者」
聞いたことがあるので芙綺や一年生らは頷く。
「そのシェイクスピアが建てた自分の劇場が『地球座』、つまり『グローブ座』だったのね。いまはもうないけど。で、報国院は元々演劇部はシェイクスピアの研究をする部活から派生したんだって。演劇はあくまで研究の為ってことで、地球座からもじって地球部、って名前になったんだって」
「へえ」
成程、さすが文系の学校、そんないわれがあったのか。
「でも、いつの間にかシェイクスピアの舞台と、その他にも舞台をやるようになった。桜柳祭ってのが報国院の文化祭なんだけど、シェイクスピア劇と、創作歴史劇を年ごとに交替でやるの」
「それで去年はロミジュリ、というわけだったのかあ」
はあーと一年生らが感心した。
「という事は、今年はシェイクスピア劇ではないという事か」
なんだー、がっかりーと言うが先輩らは呆れた。
「言っとくけど去年のロミジュリがおかしかったんだよ。いくら報国院でもあそこまでぶっとぶの滅多にないし。つか、大抵、ハムレットとかじゃないかな」
「ロミジュリの前のシェイクスピア劇はヴェニスの商人だった」
あたし見たし、と三年生が手をあげる。
「そういやそっか。懐かしいなー、受験生なのにあれだけは見るって桜柳祭行った」
「おくらちゃんはそういや中学受験したんだっけ」
「しました。でも結局、こっちに来ちゃったんで」
「そういう人多いよ。中学受験したのに、結局ウィステリア来たいからってまた高校受験になっちゃう人」
「うちの学校あるあるだよね~」
成程、ウィステリアは相当な人気があるらしい。
(あんまり知らないで来ちゃったなあ)
芙綺からしたら、名前しか知らなかった。
幾久が薦めてくれたから迷いなくこの学校を選んだし、制服が可愛いと聞いていたけれど、忙しかったり親から逃げたりで、しっかりと確認する余裕がなかった。
この学校に来ている生徒らは、みんな笑顔でにこにこしていると思っていたけれど。
(当然か。好きな学校に来れてるんだから)
可愛い制服、お洒落な旧校舎、そして自由度の高い学校生活。
先生すらみんな女性ばかりで、芙綺にしたら気がやすまるばかりだ。
それに、やたら変な絡まれ方をされずに済むのが嬉しい。
「それよりだよ!折角ガチ勢いるんなら」
「そう!しっかりとお話しないと!」
うんうん、と先輩達が頷く。
「えーと、おくらちゃんだっけ?」
「奥平です」
「それと、ござる」
「かまわんでござる」
雑だ。
「せめて名前で呼んであげてください」
芙綺が挙手すると雅が「雅でござる」と言うので、先輩らも「みやびちゃんか」「よろしくねみやび」と次々に呼び捨てにしはじめた。
「雅、そこに入っているのは、報国院のジュリエットくん、だね?」
「はい。まごうことなく、報国院のジュリエット君でござる」
思い切り雅が頷き、芙綺は「はは」と小さな笑いが出てしまった。
「まさか、ストーカーする気でうちの映像研究部に?」
「まさかでござる。このワイ、ご本尊にご迷惑をかける気など毛頭なく、むしろ壁になって写真だけ撮りたい所存。入手経路はすべて公式からがワイのポリシーにござる」
きりっとして言い放つ雅に、先輩達は「おお……」と拍手した。
「で、おくらちゃんは?」
「わ、たしはどっちかっていうと、妄想系というか、あの、ロミジュリ二人が尊いっていうか。あえて言うなら推しはジュリエット君です。二人が尊い派です」
「成程。まあよし。君らは映研なら、先輩もいるしおかしな行動もしないだろう」
すると雅と奥平は頷いた。
「はい」
「勿論です」
「よーし。持っているのが公式というのは正しくて良い。絶対に隠し撮りとか禁止だからね」
「しないでござる」
「しません!」
「いやー、マジでやんないでね。もしやらかしたら、下手したら退学になるから」
へ?と一年生らが驚く。
「実は報国院って、生徒の情報が外部に漏れるの、めちゃくちゃ嫌がってるの」
すると雅が尋ねた。
「でも、生徒がインスタとか、割とSNSやってるでござるが」
「あれはちゃんと学校がチェック入れてるんだよ。ロミジュリの情報って、一部からしか出てないでしょ?」
「そういえば確かに」
「殆どロミオ君のインスタが情報源です」
奥平も頷くと、先輩らも同じく頷いた。
「報国院、もしやらかしたら警告なしで訴えてくるらしいから、そこんとこは気を付けてね」
「まじで」
「まじ」
雅もだが、芙綺も驚いた。
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