【完結】転生×オメガ=何になる?

よるは ねる(準備中2月中に復活予定)

文字の大きさ
30 / 46
2章『転生×オメガ=当て馬になる』

18

しおりを挟む


「だから?だとしても興味ねぇんだよ」

見せつけるように真緒ちゃんの寝顔に唇を落とす在昌は分かっている。恋に溺れた女の弱点はこういう事だ、と。
在昌が真緒ちゃんに愛を与えれば与える程、女の表情が絶望に塗れてくる。ふるふると震えながら、視線を逸らそうとする。

けど、俺は優しいからね!手袋を嵌めて、がっしりと女の顔を掴んでやる。え?顔が変形してるって?ごめんごめん。力の加減が難しくて。え?何で手袋するかって?汚いじゃん。

「ほいほーい、目を逸らさなぁい!めっ!」

…これでも俺だって怒ってる。真緒ちゃんは友達として好きだから。そんな子に酷い事する人は、ね。

「ほらぁ、見なよ。どう?どんな気分?お前が一番だと思っていたら実は真逆で嫌われて…いや、興味すら無い存在だったってさ。嬉しい?悲しい?あは、ぶっさいくな顔」
「あ、あんたは…誰よ!」
「えぇ、あの子はわかってくれたのにねぇ。あれじゃん、おめみつの愛が足りないからこんな目に遭ったんじゃないのー?自分しか好きじゃないもんね、あんた」
「っ!うっさい!私はこの世界のヒロインなの!!皆に好かれるヒロインなの!」

キャンキャン煩いなぁ。こんな煩いのがヒロイン?笑わせないで欲しいよ。ヒロインだったら真緒ちゃんで良いじゃん。おっぱいは足りないけど、可愛いし。ミニブタみたいで。…あ、太っているって意味じゃないよ。愛嬌的に、ね。

「煩いなぁ」
「ぎゃっ」
「俺ね、これでも怒ってるんだよ?」

桃ちゃんの前髪を思い切り掴みながらにっこりと笑みを向ける。ぶちぶち、と嫌な音がしたけれど、俺の髪じゃないから構わない。はげろはげろ。

「お前さ、現実見ろよ。お前が仕掛けた事、普通に犯罪なんだけど?ねぇ、ファンタジーの世界だから何をしても許されると思った?ヒロインだから?いやいや、お前が当て馬だよ」

そう。俺からしたら桃ちゃんこそ当て馬なのだ。見てよ。もう興味が失せた在昌の様子を。更にアチチになってるじゃん。
それは桃ちゃんにも気付いたようで、見苦しい程に嫉妬に溺れている。まぁ、そのまま溺死したらいいさ。

君には俺達の実験体になってもらうんだから。特にオメガは、ね。色々と未確認なところも多いから、高く売れ…非常に世の為になりそうだ。

「例え、ね。君が違う世界から転生したとしても、この世界は俺達にとって現実なの。異物はお前だよ。異物で当て馬って救われないね。まぁ、ザマァってジャンルになるのかな?」
「っ……」

真緒ちゃんに出逢ってから、転生とやらの本を読んでみた。店頭で買うには恥ずかしかったから、電子書籍で買ったさ。
普通に面白かった。特にザマァってやつは良かったね。スッキリする。人気ジャンルなのも頷ける。

「じゃあね。君はここで退場だ」

前髪を掴みながらぶすり、と首に注射する。先程用意した超々々々強力抑制剤だ。興奮していればしている程、効きやすい代物。…合法と、言わせて欲しい。こう言った強力過ぎる物は悪い方向にも使われるからね。気を付けてね。

ほら、この女。刺したと同時に、目をぐるんと回転させて気絶したでしょ?あ、気絶じゃなくて寝た、ね。

お、気付いたら男が在昌にボコボコにされてる。あいつ、足技凶器だからね。死なない程度にお願いしたい。あのアルファと、このクソオメガ。面白い実験になりそうだねぇ。

「…在昌、殺しちゃ駄目だよ」
「殺さないさ」

無表情で鳩尾に爪先を入れると同時に、胃液を吐き出しながら失禁する男。ああ、こんな女に捕まらなければこんな目に遭わなかったのにね。まぁ、馬鹿なオメガも居るなら馬鹿なアルファも居るよね。

「ちょっと山田さんに声掛けてくる」
「連絡くれた人?」
「ああ、山田さんが連絡くれなかったらどうなってたか分からなかった」

思い出したのか、ぎりぎり、と歯軋りしながら拳に怒りを収める在昌。きっと在昌も真緒ちゃんもこれからが大変だろう。今は混乱やら怒りやらの感情で冷静になれていないけれど、いざ冷静になれば状況は変わってくる。

真緒ちゃんの心の傷は深いだろう。見たところ、男のブツが貫通していた訳だし。俺は男だし、性事情は緩いから余り分からないけれど…真緒ちゃんみたいな純粋で、健気な子は自分を責めるだろう。

けど、在昌ならきっと大丈夫だと思う。…多分。
残念ながらこの話は俺が介入出来る事じゃない。真緒ちゃんと在昌の問題だ。俺はこうやって汚物を掃除してあげる事しか出来ないのだ。

まぁ、今回は良い拾いものをしたけどね!

「真緒ちゃん預かろうか?」

近くに止めていた車に荷物二つを押し込めながら、在昌に進言すればきっぱりと断られる。

「いや、傍に居るって真緒と約束したから」
「そっか。じゃあ回収したから俺は戻るわ。何かあったら連絡してちょ」
「…さんきゅ、迷惑掛けたな」
「いやいや、ごちそうさまって言いたいよ。色々とね?」

にっこりと意味深に笑ってやれば、硬かった在昌の表情が和らぐ。

「今度奢る」
「んー、焼き肉が良いなー」
「わかった。連絡するな。本当、助かった」

真緒ちゃんを抱いたまま工場へと足を向けた在昌を背に、俺は携帯を取り出して電話を掛ける。
何コール目かしたら出た相手は先程の後輩クンだ。

『せんぱーい!直ぐに戻ってきてくださいよぉ!上の人、カンカンですよ!』
「え、うんこって言った?」
『言いましたけど、そんなの直ぐバレるに決まってるじゃないですか!』

言ったんかい。

「今戻る。面白いアルファとオメガ連れて帰るから許してちょって言っといて」
『え?先輩、攫ったんすか』
「いやいや、犯罪者よ。けど、アルファとオメガの揉め事は事件扱いされないからね、前もあったでしょ?」
『…――。
…早く帰ってこいとの事です。ついでに人数分、珈琲とお茶請けを宜しく、と』
「甘党じじぃ共め」

何やら騒がしい声が聞こえたが、気付かない振りをして電話を切る。

運転席に乗り込み、静かに車を発進させる。
コンビニで良いかな。なんて思いながら、後ろで気を失っている彼等の未来に心躍らせるのであった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結】 大切な人と愛する人 〜結婚十年にして初めての恋を知る〜

紬あおい
恋愛
結婚十年、子どもも授かり、日々執務と子育ての毎日。 穏やかで平凡な日々を過ごしていたある日、夫が大切な人を離れに住まわせると言った。 偶然助けた私に一目惚れしたと言い、結婚し、可愛い子ども達まで授けてくれた夫を恨むことも憎むこともしなかった私。 初恋すら知らず、家族愛を与えてくれた夫だから。 でも、夫の大切な人が離れに移り住んで、私の生き方に変化が生まれた。 2025.11.30 完結しました。 スピンオフ『嫌われ悪女は俺の最愛〜グレイシアとサイファの恋物語〜』は不定期更新中です。 【2025.12.27追記】 エミリオンと先に出逢っていたら もしもの世界編は、諸事情により以下に移動しました 『今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜』 よろしければ、ご訪問くださいませ いつもありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...