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3章『転生×オメガ=溺愛される』

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お願い。止めて。来ないで。怖い。触らないで。
恐怖で何度も目を醒ました。叫んで、暴れて、泣いて、怯えて。疲れて、眠る。

そんな私に、在昌さんはずっと傍に居てくれた。その綺麗な肌に傷が付こうと、落ち着くまで抱きしめていてくれた。何度もキスをしてくれた。

汚れているから。と私が言えば、汚れていない。と何度も私を抱いた。まるで上書きするように、執拗に何度も秘部を愛してくれた。
とろとろになって、馬鹿になって、何度も痙攣して、頭が真っ白になって。

最初は在昌さんの腕が怖かった。けれど、その腕は私を傷付けない。愛のみを与えてくれる。

「真緒、真緒…」

何度も私の名を呼ぶ。私が真っ暗な底に沈まぬように、何度も耳元で私を呼んだ。

「在昌さん…」

私が在昌さんの名を呼べば必ず抱きしめてくれた。あやすように、何度も背中を撫でてくれた。

愛を囁かれ、身体を愛撫されて、ドロドロに愛されて――…

「ほら、真緒。あーんだよ」
「じ、自分で食べられますから…」

断っても、無視されて口に食べ物を運ばれる。

「ほら、頭下げて」
「じ、自分で洗えますから…」

断っても、無視されて身体を洗われる。

「ほら、シーシーして」
「流石におしっこは自分で出来ますから!!」

…断ったらトイレから去ってくれた。でもドアの前には居るのね。

「真緒、真緒。好きだよ」
「私も、好きです…」

恐怖で枕を濡らした日は、愛を囁き合う日々。

「真緒のここ、俺の形覚えたね。もう誰も入れないようにマーキングしちゃおうか」
「ぁ…!!」

ぐずぐずに蕩けたところに、穿たれて。

「あー、早く番にしちゃいたい。ねぇ、俺だけの真緒。ずっとこの部屋に二人で籠もっていようか」
「あぅ…!」

オメガの弱いところを甘噛みされて。

「ずっと俺だけを見ていて。ずっと俺の傍に居て。ずっと俺だけを感じていて」

――甘美は狂気となる。




「――で、真緒ちゃん復活したと同時に在昌がヤンデレになったと」
「いや、ヤンデレって訳では…」
「ほら、真緒の好きなホルモン焼けたよ」

在昌さんの溢れんばかりの愛によって復活した私は、有沢さんへの謝罪とお礼を込めて百番カルビにやってきた。百番カルビとは、全国区にある焼肉屋の事だ。リーズナブルで美味しく、アルコールも豊富にある為、連日賑わっている。

高級店にしか行かないイメージがあった二人だったが、意外な事にこう言った店が好きらしい。ファミレスにも行くんだって。

「いや、発言からしてヤンデレじゃないの。さっきだって男の店員の事睨んでたじゃん。店員さんビビっちゃって可哀想だったよ-?」
「それは店員が真緒に色目使うから」
「いやいや、使ってませんって!」

確かに在昌さんは例の件からずっとこんな調子だ。私は在昌さんをヤンデレとは思わないけれど、少し過保護だなって思う。でも、あんな事があったのだからしょうがないのではないだろうか。それに、嫌じゃないのだ。

「真緒は可愛いから。皆真緒の事ばかり見るよね。やっぱずっと家に居なよ、ね?」
「いや、それは在昌さんが素敵だから皆見ているのであって…」

これは私が正論だと思う。何度も言っているけれど、私の見た目は中の中だ。そこら辺にいるモブである。片や在昌さんはヒーローなだけあって、格好良くて、美しくて、素敵で可愛くて優しくて凄くて凄くて…ああ、語彙力が足りない。

そんな在昌さんだもの、皆見るよ。身長高いし。理想の男ってやつではないだろうか。

「在昌が壊れた…」
「有沢さん…壊れた訳では無くて…あの、多分少しネジが緩んだのだと…」
「ほら、真緒。これも焼けたよ」

器用にお肉を挟んで、ポイポイと私の更に肉のタワーを作る在昌さんは先程から全く口にしていない。口にしているのはビールだけだ。

「私の分は良いので在昌さんも食べてください!」

先程からそう言っているのだが、在昌さんは私に食べさせるのが使命だと言うかのように、適当に返事して流している。

「もう…、はい。在昌さん、あーん」
「!あ、あーん」
「…美味しいですか?」
「真緒の箸で食べたから美味しい」
「ぶはっ!!」

私達のやり取りを黙ってみていた有沢さんが我慢出来ずに吹き出す。

「や、もう…なんなの…マジで笑える。何コレ…本当に在昌?」
「紛うことなく在昌さんです」
「はぁ…はぁ…おもろ…。てかさ、在昌。何で番にしない訳?」

ひとしきり笑った有沢さんが真面目な表情を作り、在昌さんに詰め寄る。

「その方が安全じゃん?」
「……俺はいつでも番にしたい。けど…」

ビールに口を付けながら、在昌さんがチラリと私を見る。分かっている。在昌さんと有沢さんが思っている事を。

けれど、私には自信が無いのだ。現状の不安だってある。
勿論、在昌さんを永遠に愛する自信はあるよ。寧ろもう、在昌さんが居なければ生きていけないレベルだ。

けど、私自身にどんな魅力があるのだろうか。今、在昌さんは揺るぎない愛情を惜しみなく与えてくれる。それに応えたいって思う、けど。

どんなに愛し合っても、何れ終わりが来る日がある。こんなにも格好良い在昌さん。引く手あまただ。素晴らしい女性が日々寄ってくるだろう。そんな彼を私が縛ってもいいのだろうか。それも永遠に。

――番とはそう言う事、なのだ。

そんな私の気持ちを分かっているのか、在昌さんは何も言わずに噛まずにいてくれている。

「真緒、まだ考えなくて良いから、ね。今は元気になろう。ほら、いっぱい食べて」

黙った私に気を遣って再度更に肉のタワーを積み上げていく。私は困った表情を浮かべながら在昌さんの優しさを甘受する。

そんな私達を有沢さんは眉を顰めて見つめていた。



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