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二件目『ガーディニアス:木の聖域』

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クー様に別れを告げた私達は、次の巡礼地である木の聖域に向かっていた。水の聖域の時は元々クー様に加護を貰っていたから本当の祈りとやらを捧げていない。今回の巡礼こそ、本当の私の役割が始まるって訳だ。

「ナツ、緊張してる?」
「きゅ…」

そりゃそうだ。緊張するに決まっているだろう。
だが、緊張を乗り越える事も強さに繋がると思った私は己を奮い立たせる。そうすればハイネさんが私に拍手を送ってくれた。

「偉いね、ナツは。よーしよーし」
「きゅ!」

褒められた私は嬉しくて、ハイネさんの周りを駆け回る。
今回から、私も自分の足で歩くようにした。クー様に説明して、ハイネさんに伝えて貰えば少し渋ったものの、私のお願いする視線に撃たれオッケーしてもらった。

「きゅ!きゅ!」

歩く事がこんなにも楽しいなんて知らなかった。前世の時は歩く事が面倒でしょうがなかったけれど、この身体になってからは楽しい。
ストレス発散にもなるのだろうか。動けば動くほど身体が軽くなっていく。まぁ、夜には爆睡してしまうのだろうけど。

「疲れたらちゃんと言うんだよ?」
「きゅー!」

ハイネさんの声を背に、私は先を走る。と言っても足が短い為ハイネさんに追いつかれてしまうのだが。

水の聖域の森を抜け、街を通らず再び木々が生い茂る森に入れば先程の森とは雰囲気が違った。
それにしてもこの世界に来てから森ばかりに居る気がする。いつの日か街にも行ってみたいけれど、そんな日がくるのかな。

「ナツ。ここの森は迷いやすいから離れないでね」
「きゅー」

返事をしながら、私は周りを見渡す。
水の聖域の森はどの草木も瑞々しいイメージだった。この森を言葉にするのなら、深い森、とでも言ってみようかな。全体的に緑色が濃くて、水の聖域よりも緑の量が多い。
もしかして主の影響でも受けるのだろうか。

「水の聖域の森とは雰囲気が違うでしょ?ここの森は木の聖域に近いからね。五元の主の聖域が近い土地は色々と影響されやすいんだ」

お。私ってば冴えてる。
やはりそうなんだ。だとすると火の聖域付近の森はどうなっているのだろうか。も、燃えてるとか?

「……きゅ」

ふ、と攫われた時の事を思い出す。そう言えばあそこの森って全体的に赤かった気がする。気なしかほんのり暖かかったし。
もしかして火の聖域と近かったりするのだろうか。

まぁ、今は考える事じゃ無いよね。木の主の事を考えなければ。

「…ナツ。気を付けて。その先にモンスターが居るよ」
「きゅ!?」

ハイネの言葉に腰を抜かしそうになるが、昨夜の事を思い出す。
そうだ。私は強くなるのだった。その為には実践だ。

歩みを止めた私に、ハイネさんが不思議そうな表情をしながら私を見つめる。

「ナツ?」
「…きゅ」

ここは任せろ、と言ったつもりだ。通じているだろうか。通じていないのならこの瞳を見よ!

きょとん、とした表情が私の瞳に映る。おっと、モンスターが現れたようだ。
私は姿勢を低くし、がるがると鳴きながら威嚇する。後ろからほわぁぁ…という腑抜けた声は聞こえないふりで。

深い緑色の茂みから勢い良く出て来たモンスターは私と同じくらいの大きさのモンスターだった。

「き、きゅ…」

どうしてこの世界のモンスターはグロテスクな者ばかりなのだろうか。目の前のモンスターもそうだ。
見た目は木だ。だが、不自然に付いている目は爛れ、口からは樹液のような物を吐いている。一見手に見えたが、それは蔓のようで縦横無尽に暴れ回っていた。

「ナツ?下がろう?ね?」

私が戦う、とハイネさんに伝わったのだろう。上擦った声が私を止めに掛かる。だが、ここで引き下がる私では無い。私は生まれ変わったのだ。

背を低くしたまま、私は身体の筋肉を意識しながらモンスターへと飛び跳ねる。後ろから悲鳴が聞こえたが気にしない。

長い爪を利用して――…長くなかった!!先日切られたばかりだった!しまった!!作戦が!!引っ掻きアタックが失敗だ!
だが、手札はまだある。

「きゅ!」

犬パンチだ。
私はモンスターを殴り、華麗に着地する。そのまま体当たりするが、相手は中々硬く、逆に吹き飛ばされてしまった。

「きゅぅ!!」
「ああぁぁぁぁ!!いやぁぁあああ!!」

おい、私が痛いんだ。何故ハイネさんの方が絶叫するんだ。おかしいよ!
ズサーっと身体が滑り、木に当たる。めげない私は再び身体を低くし、攻撃しようとした時にはモンスターは塵となっていた。

「お前、ぶっ殺す!僕のナツを殴ったな!?」

何度も威力の高い火の玉…というレベルじゃ無い代物じゃないよね?…火の魔法を居なくなったモンスターへと打つけていた。
余りのクレイジーさに私の思考が止まるが、このままだと木々が引火して火事になりかねないので、必死にハイネさんを止めに掛かった。

「きゅ!きゅううう!!」

ハイネさんの頭に飛び乗り、必死に抱きつく。
息が切れるくらい取り乱しているハイネさんは初めてだ…。私は必死に願った。落ち着いてくれと。その願いが通じたのか、ハイネさんの動きが止まり、私の首根っこを掴んだと思ったら思い切り抱きしめられた。

「ナツー!僕は嫌だ!僕がナツを護る!ナツは後ろにいる!」
「きゅ!?」

言葉がおかしい。まだ興奮しているのだろうか。私は必死に言葉の意味を考える。
ようは、私がボコボコにされるのを見ているのが嫌だから今まで通りに僕に護られてて、ナツは鼻でもほじってろ、と?



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