クリスマスイブ🔔

紅城真琴

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意固地なアラサー

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ピコン。
朝7時になる前に入ってきたメールで目が覚めた。

『今日だけは絶対に会いたい』
まるで宣言のような内容。

正直、だから?って突っ込みたい気もするけれど、今は返信しない。

西村日彩にしむらひいろ。33歳。産科医。
もうクリスマスを喜ぶ年齢でもなくなった。
メールをくれた彼は、中山大我。31歳。公務員。
仕事で出会い、付き合いだして5年。
不規則な私の仕事と、政治家をしている彼の実家の事情があって、結婚に踏み切れないまま時間だけが過ぎてしまった。


はあー。
ベットから起きてため息を一つ。

困ったな。
いつまでも逃げるわけにはいかないけれど、面と向かって話す勇気もない。
こう見えて私は臆病者なのだ。
普段強がっている分、弱い自分をひた隠しに生きてきたから。

『いつでもいから、連絡ちょうだい』
『いつまでも待ってる』

私からは一切返信していないのに、一方的に送られてくるメールたち。
いつもこんな調子で、絶妙なタイミングで彼からのメールが来る。
普段から3度に1度くらいしか返信を返さないのに、文句も言わずに待ってくれている本当に優しい彼。
ありがたいと思いながら、「ありがとう」が言えない私は本当にバカだ。

***

ブブブ。
携帯の着信。
今度は病院から。

「はい」
眠さもあって不機嫌に出てしまった。

「すみません、302の山本さんに陣痛が始まりました」

それは、私がずっと見てきた妊婦出産の知らせ。
リスクのある出産だから立ち会う方がいいだろうな。

「20分で行きます」
「お願いします」

電話を切って洗面を済ませ、化粧もせずに手近にあった服を着る。

あーぁ今日はクリスマスなのに、最悪。
でもね、これが私。

***

普段から愛想が良いわけじゃないけれど、今なぜこんなに気分が落ち込んでいるのか?
好きで付き合っているはずの彼からなぜこんなに逃げているのか?
それには理由がある。

実は10日前、彼との約束を仕事ですっぽかしてしまったのだ。

産科医なんてしていれば急な仕事が入るのは珍しくもないし、約束したデートに行けないのも珍しいことじゃない。それは彼もわかっているから、文句も言われたことがない。
ただ・・・
その日はやっとこぎつけた彼のご両親との会食の日だった。

「ごめんなさい、患者の急変で」
電話でそう言った私に、
「わかった、仕事頑張って」
静かに言ってくれた彼。

しかし、翌日にはお母様が病院へ現れて、「息子と別れてほしい」と言われてしまった。
そりゃあね、彼の実家は代々の政治家で、お父様は今国会議員。彼も近いうちに政治家に転職して跡を継ぐんだろうと言われている。
そんな人に仕事で予定に立たない嫁なんていらないだろうって、誰にでもわかること。
「お願いしますね」と言って明らかに現金が入っている封筒を残して帰っていくお母様に、私は何も言えなかった。

その日からずっと、私は彼を避けている。
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