クリスマスイブ🔔

紅城真琴

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かわいいライバル

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当たり前のことだけどお産も病気も時と場合を選んではくれない。
クリスマスだからといって患者が少ないわけでもないし、街がお祭りムードで浮かれている分忙しく働く者としてはテンションが下がってしまう。

こんな日に限って朝から5件の出産。
さすがに外来が混雑する事はなかったけれど、病棟はてんてこまいだった。

完全にお昼の時間を過ぎてから病院併設のレストランに向かうと、そこにはいつもより華やかなメニューが並んでいる。
こんなところまでクリスマスなのね。

「あの、西村先生ですか?」

突然声をかけられ振り向くとそこにいたのは若い女性。
色白で細身でゆるくウエーブがかかった髪を肩まで伸ばした綺麗な人。

「えっと、」

私は子供の頃から記憶力だけが自慢だった。
でも、目の前に現れた女性に見覚えがない。

「私、法勝寺綾香ほうしょうじあやかと申します」

法勝寺といえば地元の名家。
確か華道の家元のおうちだったはず。と言う事はこの人はお嬢様・・・

「私に何か御用でしょうか?」
この先の展開にいくつかのシュミレーションをしながら私は冷静に尋ねていた。

***

向かい合って座り、私の目の前に置かれたコーヒーが冷めかけている。
綾香さん用件は、大河についてだった。

「日彩さんは、それでよろしいんですね?」
「ええ」

3日前綾香さんのもとに舞い込んだ急な縁談。
以前から付き合いがある中山家との縁談は意外なものではなかったけれど、大河に長く付き合った女性がいることを知っていた綾香さんは直接確認するためにやってきたらしい。

「大河さんには付き合っている人がいると聞いていましたから、正直驚きました」
「そう、ですか」

今、綾香さん23歳。大学を卒業し華道の師範をしながらの家事手伝い。
綾香さんのお兄様と大河が友人だったこともあり、私の事は以前から聞いていたらしい。

「私の初恋の人は大河さんなんですよ」
「え?」
「大河さんとの縁談の話をもらって、正直うれしかったんです」

誰にでも優しくて、温厚な大河だから女性にもてるのも納得できる。
何で私なんかと付き合っているんだろうと、時々不思議になるもの。

「本当にいいんですか?」
真っすぐに見つめられ、
「ええ」
私は静かに答えていた。

全ては身から出た錆。
私には不満を言う資格はないし、大河をつなぎとめておけるだけの魅力が自分にあるとも思わない。

ブブブ。
PHSの呼び出し。

「すみません」
綾香さんに断って出てみると、患者の急変だった。

なんだかあまり話せていない気もするが、これ以上患者を待たせることもできず私は綾香さんと別れて病棟へ戻ることにした。
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