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災難も幸せも、すぐそこに転がっている。

見つかった

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大きな荷物を抱えてマンションを飛び出し、結局向かったのは実家だった。
特急を乗り継ぎ、久しぶりに帰ったふるさと。
本当はもっと明るい気持ちで戻ってきたかったのに・・・
クスン。
駅に降り立った瞬間、なぜか涙がにじんできた。

ここは生まれ育った場所。
そして5年前、私は逃出した。
当時の私はボロボロだった。
心も体も傷だらけで、どうやって生きていたのかの記憶もない。
一刻も早くこの土地から離れたくて、東京の大学を選んだ。
そんな私を心配した母さんは、一年間私に付き添ってくれた。


「お帰り、茉穂」
駅まで迎えに来てくれた母さん。
「ただいま」
大きな荷物を抱えた私を見ても、何も言わない。

「ごめんね。しばらくお世話になります」
「何言ってるの、自分の家じゃない」

ありがとう。
言葉にはできないけれど、感謝している。

***

その日から、実家での引きこもり生活。
5年前と何も変わらない。
進歩のない私。


「仕事は?やめたのか?」
父さんは相変わらず厳しい。
地元の市役所に勤める公務員である父さんは、真面目で堅物。
小さい頃から厳しく育てられた。

「仕事なんて面白くないことばかりなんだ。それを、半年やそこらで逃出してどうする」
確かにそうだね。

昔から、父さんはそうだった。
小学生で不登校になった私に、「学校に行け。それがお前の仕事だ」と怒鳴った。
高校時代、いじめられ、傷つき、手首を切った私に、「何でお前はいつもそうなんだ」と悲しそうな目を向けた。
私はあの時の、父さんの顔を一生忘れない。

「いいじゃないですか、茉穂が決めたことですから」
母さんはいつもかばってくれる。


「父さんの言うことなんて気にすることないのよ。あれでも心配なのよ」
「うん」
大丈夫。父さんが不器用なだけだって、今は理解しているから。

そして、
男の人はみんな不器用だってことも。

***

「もう、いつまでパジャマでいるのよ。着替えて少しは外に出なさい」
言いながら、カーテンを全開にされた。

ウウ、まぶしい。

「起きなさいよ。今日は部屋の掃除をしますからね」
「はーい」

実家に帰って数日。
昔のような引きこもり生活に戻った私に、さすがの母さんもキレてしまったらしい。


「ごめんくださーい」
玄関から声。
「お客さんよ」
「はいはい」
パタパタと階段を降りてく母さん。

誰だろう、平日の昼間に。

しばらくして、
「茉穂-」
私を呼ぶ母さんの声。

「もう、なんなのよ」
ブツブツ言いながら、玄関へ向かった。


そこにいたのは・・・・

「嘘。どうして」

私は、息をするのを忘れてしまった。
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