3 / 207
日本編
訪ねて来た人に面識はありません
しおりを挟む
身分証をまずは返さないと。
「身分証をお返しします。」
渡辺祥太郎さんに身分証を手渡した。
「確かにお返しして頂きました。」
渡辺祥太郎さんが身分証を仕舞っている間に、コップに入れた麦茶とお煎餅をちゃぶ台の上に置いた。クーラーもない扇風機だけしかない部屋なので、窓は網戸のままで外の風が入るようにして、扇風機のスイッチを入れて、来客の方へ扇風機の風が当たるようにした。
「どうぞ、ちゃぶ台に麦茶とお煎餅ですが用意しました。座って下さい。」
「それでは、失礼します。」
渡辺祥太郎さんが座ったので、私も、ちゃぶ台の反対側に座った。
「渡辺祥太郎さんと身分証にありましたが、私の親戚なのでしょうか?」
「厳密には違いますが、遠い親戚なのは間違いありません。私もつい最近まで外国にいたので、恭太郎さんが何年も前に亡くなっているとは知りませんでした。恭太郎さんの奥様も亡くなってしまっていて、帰国した私が恭太郎さんのお孫さんを探すのに、1月ほどかかってしまいました。」
「で、今になって私を捜す理由を知りたいのですが。」
「実は、海外赴任で日本に戻って来れない結衣子さんのご両親から、貴女を捜して欲しいと頼まれたのです。」
「産まれて物心がついてから、両親の話を祖父や祖母から聞いた事もありません。ましてや、親に一目でも会った事もないので、私の中では他人と一緒です。今更です。会いたくありません。」
渡辺祥太郎さんは、頑なな態度の私に呆れることなく、仕方なさそうに、やれやれと言った表情で説明をしてくれた。
「何か誤解なさっているようが、ご両親は恭太郎さん宛に毎年手紙を送って、その返事で結衣子さんの成長を知っていたのですが、ここ5,6年、ご両親の手紙が行先不明で戻って来るし、恭太郎さんと一切の連絡を取れなくなってしまっていたのです。」
「だから、何なんですか。」
「ある日、恭太郎さんが、自分の仕事に嫌気をさしてしまいましてね、奥様と、たまたま遊びに来ていたお孫さんの結衣子さんを連れて、行方をくらましたのですよ。そのせいで、結衣子さんのご両親は仕事に追われ、恭太郎さん達を探し出した時には、「戻らない!!」と宣言して、勝手に引っ越してしまったのです。その証拠の手紙がこれです。読んでみて下さい。」
渡辺祥太郎さんが古ぼけた手紙を渡してきたので、読んでみた。
『涼太郎、結衣さん、勝手に仕事を押し付けて、孫の結衣子まで連れて逃げたのは卑怯だったと思う。
でも、そうでもしないと仕事から逃げられなかったし、結衣子を連れて行けば、お前達に仕事を押し付けても、
私の手元に結衣子がいる限り、お前達が仕事を投げ出さないのでな。
このまま日本で、のんびり過ごそうと思っている。結衣子は問題なく大きくなっているので、お前達が仕事から 逃げ出さない限り、結衣子の近況を教えてやろう。ただし、写真を送ったりはしないので、そちらからも写真を
送らないで欲しい。お前達が居なくても、結衣子には問題ない。私達を両親だと思っている。
約束を破ったり、結衣子や私達の居場所を突き止めようとしたら、何度でも引っ越すからな。
私の代わりに仕事を頑張ってくれ。 恭太郎より』
育ててくれていた祖父がクズだった。いくらなんでも、私だって祖父や祖母を両親だとは思わない。私を人質にして、両親に仕事を押し付けて逃げてきたクズ。
その祖父の言いなりで、私の話を殆ど聞いてくれなかった祖母。祖父が一番で私は邪魔だと時々、祖父に愚痴を零していた祖母の姿を何度も盗み見たから、あの人達には期待しない事にした。期待しなければ、絶望する事もない。
周りからはいつでもどこでも親に捨てられた可哀想な子扱いだった。何度もクラスの人と仲良くなる前に転校したので、友達を作る事を諦めた私。貧乏で、必要な物を買ってもらえずに、誰かからの同情のお下がりを貰って過ごしていた。
そう言えば、祖父や祖母は新しくてキレイな服を着ていたな。2人共、毎晩、お酒を飲む余裕があるなら、私の服を買ってくれって頼んだら、ご近所のお下がりで充分だって言われたしな。
「貴女の心の声が聞こえました。酷い扱いを受けていたのですね。先週、25才になって、耳が生えてきてしまったと。貴女の目から零れて溢れている涙を拭いて下さい。」
優しい言葉にこの25年間、鬱積していたモノが心から溢れ出た。渡辺祥太郎さんの前で、号泣してしまいました。
暫く泣いて、少しだけスッキリしたら、猫耳の話をしてしまったのだと焦ってしまった!!どうしよう。
「身分証をお返しします。」
渡辺祥太郎さんに身分証を手渡した。
「確かにお返しして頂きました。」
渡辺祥太郎さんが身分証を仕舞っている間に、コップに入れた麦茶とお煎餅をちゃぶ台の上に置いた。クーラーもない扇風機だけしかない部屋なので、窓は網戸のままで外の風が入るようにして、扇風機のスイッチを入れて、来客の方へ扇風機の風が当たるようにした。
「どうぞ、ちゃぶ台に麦茶とお煎餅ですが用意しました。座って下さい。」
「それでは、失礼します。」
渡辺祥太郎さんが座ったので、私も、ちゃぶ台の反対側に座った。
「渡辺祥太郎さんと身分証にありましたが、私の親戚なのでしょうか?」
「厳密には違いますが、遠い親戚なのは間違いありません。私もつい最近まで外国にいたので、恭太郎さんが何年も前に亡くなっているとは知りませんでした。恭太郎さんの奥様も亡くなってしまっていて、帰国した私が恭太郎さんのお孫さんを探すのに、1月ほどかかってしまいました。」
「で、今になって私を捜す理由を知りたいのですが。」
「実は、海外赴任で日本に戻って来れない結衣子さんのご両親から、貴女を捜して欲しいと頼まれたのです。」
「産まれて物心がついてから、両親の話を祖父や祖母から聞いた事もありません。ましてや、親に一目でも会った事もないので、私の中では他人と一緒です。今更です。会いたくありません。」
渡辺祥太郎さんは、頑なな態度の私に呆れることなく、仕方なさそうに、やれやれと言った表情で説明をしてくれた。
「何か誤解なさっているようが、ご両親は恭太郎さん宛に毎年手紙を送って、その返事で結衣子さんの成長を知っていたのですが、ここ5,6年、ご両親の手紙が行先不明で戻って来るし、恭太郎さんと一切の連絡を取れなくなってしまっていたのです。」
「だから、何なんですか。」
「ある日、恭太郎さんが、自分の仕事に嫌気をさしてしまいましてね、奥様と、たまたま遊びに来ていたお孫さんの結衣子さんを連れて、行方をくらましたのですよ。そのせいで、結衣子さんのご両親は仕事に追われ、恭太郎さん達を探し出した時には、「戻らない!!」と宣言して、勝手に引っ越してしまったのです。その証拠の手紙がこれです。読んでみて下さい。」
渡辺祥太郎さんが古ぼけた手紙を渡してきたので、読んでみた。
『涼太郎、結衣さん、勝手に仕事を押し付けて、孫の結衣子まで連れて逃げたのは卑怯だったと思う。
でも、そうでもしないと仕事から逃げられなかったし、結衣子を連れて行けば、お前達に仕事を押し付けても、
私の手元に結衣子がいる限り、お前達が仕事を投げ出さないのでな。
このまま日本で、のんびり過ごそうと思っている。結衣子は問題なく大きくなっているので、お前達が仕事から 逃げ出さない限り、結衣子の近況を教えてやろう。ただし、写真を送ったりはしないので、そちらからも写真を
送らないで欲しい。お前達が居なくても、結衣子には問題ない。私達を両親だと思っている。
約束を破ったり、結衣子や私達の居場所を突き止めようとしたら、何度でも引っ越すからな。
私の代わりに仕事を頑張ってくれ。 恭太郎より』
育ててくれていた祖父がクズだった。いくらなんでも、私だって祖父や祖母を両親だとは思わない。私を人質にして、両親に仕事を押し付けて逃げてきたクズ。
その祖父の言いなりで、私の話を殆ど聞いてくれなかった祖母。祖父が一番で私は邪魔だと時々、祖父に愚痴を零していた祖母の姿を何度も盗み見たから、あの人達には期待しない事にした。期待しなければ、絶望する事もない。
周りからはいつでもどこでも親に捨てられた可哀想な子扱いだった。何度もクラスの人と仲良くなる前に転校したので、友達を作る事を諦めた私。貧乏で、必要な物を買ってもらえずに、誰かからの同情のお下がりを貰って過ごしていた。
そう言えば、祖父や祖母は新しくてキレイな服を着ていたな。2人共、毎晩、お酒を飲む余裕があるなら、私の服を買ってくれって頼んだら、ご近所のお下がりで充分だって言われたしな。
「貴女の心の声が聞こえました。酷い扱いを受けていたのですね。先週、25才になって、耳が生えてきてしまったと。貴女の目から零れて溢れている涙を拭いて下さい。」
優しい言葉にこの25年間、鬱積していたモノが心から溢れ出た。渡辺祥太郎さんの前で、号泣してしまいました。
暫く泣いて、少しだけスッキリしたら、猫耳の話をしてしまったのだと焦ってしまった!!どうしよう。
1
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる