ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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日本編

引っ越し前にはしなくてはならない事が一杯です2

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 それからが大変だった。

 移住に必要な書類が沢山あった。その中には、病院での健康診断証明書を作成するのに必要な書類に、抗体検査に必要な書類、私の予防接種履歴と病歴に至る書類まで書かされたので、思い出すのにも時間が掛かったのだった。予防接種を受けていない物に関しては、移住するまでに予防接種を打たなくてはならないので、その申込用紙とか、とにかく、移住に関して書かなくてはならない書類が多かった。そして、その書類に記入する時間が掛かってしまい、一段落して時計を見たら、もう、とっくに夜の10時過ぎになってしまっていた。

 書類記入でぐったりしていた私に、渡辺祥太郎さんが「お腹も空きました。夕食を食べに行きましょう。」と、誘ってくれたのだ。もちろん、部屋に入る前に言っていた祥太郎さんのおごりだ!

「私もお腹が空きました。」

 私のお腹も悲鳴のごとく、グルグルと空腹を訴えている。

「そうするか、祥太郎は夕食をどこにするつもりだ?」
「駅から来る途中にあったファミレスでいいかと思ったんだけど。」
「ファミレス!!私、入った事が無かったんです!嬉しい!」
「うわ!ファミレスに入った事が無かったんですか!良かったな、祥太郎!」
「喜んでもらえて何よりです。分からない事があったら、私に聞いて下さいね。」

 渡辺祥太郎さんが私に笑顔で何でも聞いてくれと言っている。ご機嫌な私はそれに「はい!」と返事をして鼻歌まで歌っていた。

 そのまま3人とも部屋を出て、ファミレスに向かって歩いていた。私はファミレスに入れると先頭を切って歩いていて、その後ろを男性2人が並んで歩いている。

 わ-い!!初ファミレスだー!それも無料おごりだー!と、私の意識がファミレスにいっているうちに、男性2人が何やら話していた様子が後ろを振り返った私の視界に入ったが、私は対して気にしなかった。


「なぁ、祥太郎、結衣子さんがファミレスにも入った事が無いほどだとは思わなかったよ。」
「ああ、恭太郎さんがどうやって暮らしていたかをこの何か月かで今までよりもより詳しく調査して判明したんだが、孫である結衣子さんをモノ扱いして邪険にして、まるで下働きや召使の様に扱って、暴力でない虐待までしていたとは、私でさえ思っていなかったんだ。」
「そうだな、俺も、あの調査報告書を読んだけど、孫でなく、恭太郎さんに都合の良い人質扱いだった事が見て取れたな。」
「それに、あの思考記録にもあったが、祖母であるあの恥知らずも、結衣子さんには散々ツラく当たっていたようだし、必要な物を渡さないで、召使の様にこき使っていた事も判明したんだ。」
「ああ、あの一族も、結衣子さんが帰国して、本当の事が公に広まれば、今までの様に大きな事を言えなくなるし、こちらが叩き潰す理由もたっぷりと日本で入手出来たしな。」
「陽が手伝ってくれたから、今回の事も迅速に片付いたよ。ありがとう。」
「当り前だろ。んで、おまえは結衣子さんとこれからどうしたいか決まったのか。」
「…決まったかな。親や周りの思惑に乗るのはイヤだったんだが、結衣子さんの隣にいられる権利を他の誰かに譲る気はなくなった。」
「じゃあ、3か月後には、「ファミレスに着きますよー!!」」
「詳しい話は、後でしましょう。」
「ああ。…結衣子さん!私と祥太郎を置いて行かないで下さい。」

 3人で入ってファミレスで食べた無料おごりの夕飯じゃなく、晩ご飯は、とっても美味しかったです。

 メニューを見て注文するのに緊張した私を見ても、お二人は馬鹿にしませんでしたし、メニューに載っていた綺麗な写真通りの物がテーブルに運ばれてきたのにビックリした私を見ても、それでも2人は揶揄からかったりもせず、微笑んで見守ってくれました。

 食べ終わった私が渡辺祥太郎さんに「美味しいご飯をありがとうございました。」と言ったら、渡辺祥太郎さんから「コンビニでの買い物もまだですが、お礼がわりに私を祥太郎の祥の字から『しょう』ってこれから呼んで下されば、私に対してのお礼になります。」

 へえっ?!年上を呼び捨てするの?!お礼がわりに!

「試しに呼んで頂けませんか。」
「え、っと、祥さん。」
「結衣子さん、もう一声!祥太郎を助けると思って!」

 ええい!女は度胸だ!
「祥!」「はい。結衣子さん。」
 祥太郎さんから、間髪を入れずに直ぐの返事が来た。何か照れる。初ファミレスに、初呼び捨て!それも男性だ!今日の私には何だか良い運勢がツイているのかも!!

「結衣子さん、まだ書類も揃っていないし、移住の説明も終わっていないので、コンビニへ寄ってからも部屋に伺ってもいいでしょうか?」
「説明まで辿りつけなかったので、私も一緒なんですが、いいでしょうか。」
「祥も、陽太郎さんも私の為に動いて下さっているんですから、構いませんよ。」
「では、コンビニで私達の分の物も沢山買いますから、結衣子さんも遠慮しないで下さいね。」
「祥太郎、私の分も良いんですか?」
「陽太郎にも世話になったし、コンビニぐらいでしたら、おごります。」
「じゃあ、1万円分を買い物しよう!」
「ええっ!そんなに!!」

 そんなに沢山、買ってもいいの?!一人に付き、3千円分も!!すごい!!

「給料をもらっても、趣味がなくって貯金ばかりしていますから、大丈夫です。」
「そーなんですよ。幼馴染の私が言うのもなんですが、祥太郎は日本でする趣味が無いんですよ。」
「日本でする趣味?」
「ええ、私のいた国、結衣子さんの移住する国ならば、する趣味があるんですけれど。今は結衣子さんをご両親に頼まれた私が迎えに来ただけ、一時的に日本へ来ているだけなんですよ。」

 え、祥太郎さんが日本へ来た理由が私?両親に頼まれて…。じゃあ、もしかして、移住先には祥太郎さんが一緒って事?知り合いもいない移住先の心配もしなくっていいの?!

 心が温かくなって、何だかウキウキとして嬉しくなった。

「じゃ、コンビニに着いたので、デザートから見て行きましょうか。」
 祥太郎さんが笑顔で、デザート売り場に向かうので、付いて行った。デザートやら、夜食のおにぎりやサンドウィッチ、陽太郎さんが酎ハイやらビールやらおつまみやらも買い物カゴに入れて、会計が1万5千円を超えてしまったが、陽太郎さんが、5千円越えた分を負担してくれたのでした。

 コンビニを出て、私の部屋に向かって歩いていると、神妙な顔つきをしている祥太郎さんが私に聞いてきた。

「陽太郎はあまり酒に強くないんですが、お酒が好きでして。飲むと寝る癖がありましてですね、結衣子さんへの危険はないのですが、酔って寝た陽太郎を置いて帰れないので、私も一緒に雑魚寝する事になるんですが、いいでしょうか。」

 おお!初ファミレス、初呼び捨て!初雑魚寝!もしかして、初家飲み会!すごいなー。祥太郎さんと知り合ってから、良い事が続くなー!祥太郎さんは私にとっての幸運の神様かっ!

「危険が無いなら、構いませんよ。物もあまりないですし。雑魚寝するなら、予備のタオルケットぐらいありますし。お風呂もついているので、バスタオルの予備もありますから、遠慮しないで下さい。」

 私が大学に入って直ぐ、祖父母が泊まるからってお金を渡されて良い物を用意させられたけど、一度も使わずにいた良い寝具が2組ある。高かったし、勿体なかったから、季節が変わる度に手入れして干したりカバーを洗い替えしているから使うのにも問題ないし、私には私が使っている寝具があるから大丈夫。

「では、遠慮なく使わせて下さい。助かります。結衣子さんは優しいですね。」

 別に優しくした覚えはないんだけど。祥太郎さんならいいんだよって思った。
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