ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
15 / 207
日本編

指輪を買いに行きます

しおりを挟む
 アパートの退去が日曜で、その前々日の金曜には家電を引き取りに来るので、頑張りました。
 木曜日までは荷造りと書類書きで忙しく、木曜夜は夜中まで掛かってしまいましたが、睡眠時間もとれてスッキリと起きたら金曜の朝でした。

 布団をすぐ干して、午前中に日を当ててから、布団専用の収納袋に入れました。

 段ボール箱だらけの部屋の中、陽太郎さんが昼過ぎに来ました。私達から書き終えた分の申請書類を見て、祥さんに何かを渡していました。

 未記入の申請書類や、購入していないけど、先に書いておいた分の申請書類は陽太郎さんに渡していない筈なので、そっちはまだ小さい方のスーツケースに入っています。

「これから、陽太郎立ち会いの元、荷物を入れるから見ていて。」

 祥さんのニコニコ顔につられて、ニコニコしたら、

「結衣子さんはビックリすると思うけど、祥や俺のする事を黙って見ていてくれるかな。」

 2人に言われたので、ビックリするだろうけど黙って見ていようと、首を縦に振って、了承の意を示してみた。

「………。」

 祥さんが何かを呟いているけど、私が聞き取れない。祥さんの隣で、陽太郎さんも呟いている。

 荷造りした荷物が光ったから、眩しくって目を瞑ったら、「目を開けていいよ。」と、祥さんの声がした。

 目を開けると、あれだけあった荷物がスーツケース4つを残して、何処にも見当たらなくなっていました。

「え?!荷物は?あんなに沢山あったのに?」

「分かり易く言うと、魔法なんだ。結衣子さん、ビックリした?」

「そう、さっき陽に渡されたブレスレットに荷物を入れたんだ。」

「普段は許可されないんだけど、引っ越す時だけは使用許可がとれるんだよなー。なぁ、祥。」

「追加の荷物も、移動直前に入れるから。その時は、また陽が立ち会うよ。」

「あ、説明してなかったのかよ、祥。結衣子さん、申請書類に記載されていないと、ブレスレットには入らないんだ。弾かれた荷物だけが残っちゃうんだよ。だから、申請書類を書いてもらうんだ。」

 なんであんなに申請書類を書くの!!と、文句が出そうになったけど、荷物がブレスレットに入るって説明も無かったかったから、全く知らなかったし!!
 少しはいきどおったけど、私が移住する国には、(異世界だから当たり前かもしれないけど、)魔法があるんだ!!きゃー!!本格的だー!と喜んでしまった。ああ、現金な私…。

「勉強して、魔法を練習しないと普通は使えないけどね。魔法は持って生まれた才能にも左右されるんだよ。結衣子の持っている魔法の種類判定と、魔力量測定をしないと分からないんだけど、ね。」

 祥さんの説明で、夢が膨らんでいく気がした。

「それでも、魔法が使えるのは凄いですよー!!わー!異世界っぽいですね!!」

「いや、結衣子さん、異世界人ですよ、あなたも…。」陽太郎さんの突っ込みが入った。

 陽太郎さんはそう言うけど、空想や想像と違ってて、私には現実になるんですよ!喜んだって良いじゃないですか!!わーい!わーい!

「ごめん、陽。結衣子はそういう話が好きみたいで、古本屋に売る本をまとめていた時に結衣子の持っている本を見たんだけどさ、数少ない本の中身が異世界モノだったんだ。」

「仕方ないさ。耳が生えなかったら、結衣子さんだって、最初から祥の話を信じなかったんだろうし、な。」

 その後、電化製品の引き取り担当の人が来て、うちにある電化製品の確認を一緒にしてから、陽太郎さんが立ち会って、2つあるアパートの鍵のうち1つを引き取り担当の人に預けました。

「後は、任せて大丈夫だから。2人を俺の車に乗せてホテルまで送るわ。」と、スーツケース4つを祥さんと陽太郎さんが持って、車のトランクに入れました。

 祥さんと私をホテルに送った陽太郎さんにお礼を言ったら、陽太郎さんが帰りました。

 ホテルは移住を決めてすぐ予約していたと祥さんに言われていたので、緊張しないで済みました。

 フロントで祥さんが名前を言って鍵を受け取り、ホテルの人が宿泊する部屋までの説明も、ホテル内の施設の案内もスムーズでした。
 部屋に着いてスーツケースを置いても、まだ夕方だったので、私の希望していた結婚指輪を祥さんと私で買いに出掛けました。

 初めて入った宝石店に緊張して冷汗をかき、しり込みする私と違って、祥さんは堂々としていました。その祥さんと手を繋いでいる私は、その場から逃げも隠れも出来ませんでした…。

 店員さんが寄って来たので、祥さんが結婚指輪を探している事を言うと、予算や好みを聞かれましたが、(宝飾品なんてよく解からない私に聞いても、答えるのが無理だと知っている)祥さんが、
「特に決めてないんで、色々見せて下さい。」と店員さんに言っていました。
 少しだけホッとして、緊張も少しだけほぐれてきました。

 私達の目の前に、店員さんが沢山の結婚指輪を出して来たので、色々見せてもらっていると、祥さんが気に入ってお勧めしてきた指輪がありました。
 金色のリングだけど、小さな黒い石が1つだけリングの中に埋め込んである指輪でした。

「耳の色と髪の色の黒色と同じ、黒い石が付いている。それに金色のリングだ。私はこれが気に入って良いと思うんだけど、結衣子はどうかな?」

「私が結婚指輪をしたいって言ったけど、指輪に理想とか夢を見た事はなかったんです。祥さんがつけていられる指輪を選んで欲しかっただけなので、祥さんが決めて下さい。」

 そう祥さんに伝えたら、祥さんが「これにします。すぐつけていくので、刻印とかは必要じゃないですが、鑑定書だけは付けて下さい。」と言いました。

 お店の人が私達の指輪のサイズを測ってから、私がお店の中の宝飾品を見ている間に、いつの間にか祥さんが会計を済ませてました。

 在庫を確認した店員さんが私達のサイズの指輪を出して来ていたので、その場で祥さんが私の左手薬指に指輪をつけてくれました。
 祥さんには、私が指輪を左手薬指につけましたーー。

 店員さんに「おめでとうございます。」と言われて、恥ずかしいやら、嬉しいやら。これで祥さんと一緒に居られるとも思ってしまって、ちょっとだけ涙目になっちゃいましたけど。

 それから、鑑定書と領収書とリングケースを受け取った祥さんと私で、手を繋いだまま、ホテルに戻りました。

 部屋に着いて、お茶を飲んでいると、祥さんが「ホテルで食事をしよう。」と誘ってきました。
 ホテルでの食事は高いけど、今日だけは指輪をつけた記念日だと割り切って、「はい。」と答えました。

 私がこの前買ったばかりの可愛らしいワンピースに着替えている間に、祥さんはスーツに着替えていました。その後、ホテルのレストランで食事をしてから、ホテルのバーでカクテルを飲んで、ほろ酔い加減で部屋に帰りましたが…。

 …その夜は、祥さんに何度もペロリペロリと食べられて、おかわりもされてしまい、翌日は昼まで起き上がれませんでした…。ううっ。

 アパートへの確認は、祥さんからのメールと電話で事態を把握したであろう陽太郎さんが引き受けてくれたそうです。恥ずかしい…。

 その日は、祥さんが甲斐甲斐しく私の世話をしてくれました。

 当たり前だよね。動けなくなったのは、祥さんのせいだもん!と開き直って世話をしてもらいましたが、自分で何でも動いたり、自分で何かをするのが当たり前だったので、祥さんに世話してもらうのを未だに気恥ずかしく感じています。合間合間にキスをしてくる祥さんに、一々反応して赤くなってしまう顔を隠せませんでした。

 そして、それを見る祥さんが嬉しそうなのも何だか少しだけ悔しかったです。

 だからかもしれませんが、その日の夕方になって、やっと普通に動けるようになってホッとしました…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

処理中です...