ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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日本編

私は今、住所不定の無職です

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 日曜日、アパートの引き上げの立ち会いを私と祥さんと、家電引き取り担当だった人と一緒にしています。

 アパートの管理会社の人に部屋の中を確認してもらい、「何も問題はありませんでした。」と言われて、4人で管理会社兼不動産屋へと移動しました。

 鍵を2本返して書類に署名をして、管理会社で(移住するのでと話し、前もって頼んでいたので)敷金礼金の清算をしたので、気軽です。

 管理会社兼不動産屋を出て、これでアパートの契約が終了出来たので、移住するまで間の私は、無職の上に住所不定となりました。思っていたよりも焦っていないし、余裕があります。祥さん効果でしょうか。

「家電引き取りから掃除、今日の立ち合いまで、ありがとうございました。」と担当の人に私が言うと、
「いえいえ、仕事ですから。では、立ち合いまで終わりましたので、私はこれで失礼します。」と、家電引き取りから掃除までしてくれた担当の人が帰って行きました。

 あの人も渡辺姓なんだろうなって思いながら、祥さんを見てみた。

 ふと、外だけど、周りに人がいないのを確認してから、疑問に思った事を聞いてみよう。

「ねえ祥さん、私って、戸籍や住民票ってどうなっちゃうのかな?」
「陽太郎が、結衣子の代理人として手続きしているから大丈夫。心配なら、陽太郎に会った時にでも聞けばいいよ。」

「そうする。でも、どうして、皆、「渡辺」姓なの?」
「国ごとに使える名前、いや苗字って言った方が結衣子には分かり易いか。使用する苗字が決まっているんだ。」

「他に使っていい名字があるの?」

「それは移住してから学ぶ事だから、今は知らなくても大丈夫。変に意識して身動きが取れなくなると困るから、結衣子には言ってないんだ。ただ、渡辺姓は同じ国の人だって分かっていればいいよ。」

「私は移住先の事を知らないから、番である祥さんの判断を信じるね。」

「そうしてくれると、助かる。どうして話せないのかは、追々分かるから。ごめん、話せなくって。」

「何か理由があるのなら、仕方ないよ。話せる様になったら、話してね。」
「必ず、必ず話すよ。約束する。」

 祥さんが言いづらそうだったので、話を変えよう。

「じゃ、この話はここでお終い。お昼ご飯、どうします?」

「ファーストフードはどう?行った事ある?」

「一回だけ。持ち帰りだったけど、祖父母が自分達が恥をかくとマズいからって理由で教える為に買ってくれたんだと思う。でも、どんな味か昔過ぎて忘れちゃった。食べた事があるって記憶だけかな。」

「じゃあ、食べようよ。エヌのマークがシンボルでね、注文してから作ってくれるファーストフードがあるんだ。美味しいし、好みに合わせてくれるし、お店の雰囲気もいいんだよ。私の一番好きなファーストフードなんだ。」

「そこで昼食出来るんだ、ワクワクする!」

 祥さんのお勧めファーストフードは、とっても美味しかった!シェイクって言うのが気に入ったけど、移住したら、食べられないのか…。ちょとだけしょんぼりしてしまったのを誤魔化す為、普通にしてみた。

 ホテルに歩いて戻りながら、コンビニに寄ってお菓子やお茶を買ってホテルの部屋へ帰った。

 ホテルで買うと高いから、ついついスーパーに行きたいんだけど、今以上、何となく荷物を増やしたくない心情なので、コンビニで必要最低限な買い物だけをしています。
 祥さんは気にするなって言うけど、あんまり物を持たない様に生活していたから、物が沢山あるのが気になって落ち着かないんだもん…。

 ホテルについたら、祥さんがルームキーを受取ったので、エレベーターで部屋のある階に移動している。

 祥さんとは色々な話をしているけど、移住先の事はあんまり外で聞かない方がいいのかと思って、出来るだけ2人きりの時か、部屋の中で聞くようにしていたけど、そろそろ、どんなお店があるのか聞いてもいいかな?

「結衣子は顔に気持ちが出るね。全く同じではないけど、日本を真似て、あっちにもファーストフードもファミレスもあるよ。」
「ほんと!!」
「だから、ガッカリしなくてもいいよ。」

 バレてたんだ…。あ、でもコンビニはないのかな?聞いてみよう。

「コンビニは?」
「コンビニみたいな品揃えの店はないけど、いろんな店もあるし、スーパーとかデパートみたいなのもあるよ。」

「じゃあ、祥さんと行けたらいいな。」

「行く日を仕事のない時に調整すれば、行けるから。」

 は!そうだよね、無職じゃ暮らしていけないもんね。ついうっかり、有給休暇から退職の流れで、忘れてた!!危なーーい、社会人としてあり得なかった質問だった!!

「あはは…、祥さんのお休みの時に行きましょう。」
「ぶははっ!そうだね!」

 笑っている祥さんを見ていたら、丁度、部屋の前に着いて祥さんが鍵を開けて入ったので、私も続けて部屋に入りました。

 ああ、もうー!危なーーい!私ったら、すっかり祥さんに甘え切って、ベッタリな毎日だったから、元の様な生活に戻れるかな、不安だーー!!…。

「国に帰ったら、朝と夜は一緒だよ。昼間は私も仕事だし、結衣子も国の勉強をしないとならないし、別々だけど、婚約しているから、休みの時はずーっと一緒に居れるよ。」

「また私の顔に書いてありました?」

 どうして祥さんにはバレるんだろう?

「結衣子の顔に書いてあった。」
「祥さんに隠し事をしたり、嘘をつく気もありませんので、バレてもいいです。無表情をしても読まれちゃうなんて、それだけは自信失くしちゃいます。」

 祥さんと話しながら、コンビニで買った物を備え付けの冷蔵庫へ入れて、2リットルのお茶のペットボトルとコップを2つテーブルの上に置いて、祥さんと私の分のお茶をコップに注いだ。

「んー、私だけが分かるんだよ。番だからね。
 陽太郎や一兄や加奈さんは気配にさといからだよ、多分、普通にしている時は、半分ぐらい予測して言っていると思う。普通なら、結衣子の無表情や愛想笑いとか微笑んでいる時は、殆ど読めてないと思うよ。」

「そっかー、祥さんが特別なのかー。」

「結衣子、今の言葉をもう一回言って。」

「ん?…祥さんが私にとっては特別なんだね。」

 祥さんが、ぎゅっと私の背中から私を抱きしめた。

「水曜には向こうへ行くけど、火曜日の夜には私の願いを聞いてくれる?異界渡りはね、何が起こるか分からないんだ。
 結衣子が移動して、移動途中で私と離れても、私だけには結衣子がどこにいるのか判るように、番だけが出来る行為、一種の儀式みたいなモノをしたいんだ。お願い出来る、かな?」

 すごく真剣で必死な声がする。

「何をするの?」
「結衣子に私の痕をつけてね、私の魔力を込めたモノを注ぐんだ。結衣子は私の番だってマーキングするんだよ。」

「朝まで抱き潰したりしない?」
「朝までしないよ。いつもと少しだけ違うけど、次の日に移動するから、1回だけ!1回で終わるから!」
「分かった。」

 少し不安そうな表情の祥さんにそう返事をしたら、いつもの祥さんに戻ったのだった。
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