ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
19 / 207
日本編

祥太郎、色々考える

しおりを挟む
 その日は、買い物をして、一兄いちにい夫妻が来るまでに、申請書類を書いていた。

 月曜日夜に加奈さんが来ると結衣子と約束していたので、2人が来た。部屋に入ってもらったが、ホテルの部屋に入って来たばかりの一兄夫妻が、突然、私達に向かって頭を下げたのだ。

「水曜日に帰るって聞いていたが、加奈も連れて行ってもらえないだろうか。お願いします。」
「私からもお願いします。」

 どうしてなのか思い付いたが、ハッキリしておいた方がいいと思って、あえて聞いてみた。

「もしかして、一兄と加奈さんに子供が出来た?」
「ああ、今朝分かったんだ。」

「そうなの。ここの所、具合が良くなかったから休暇で休んでいたんだけど、昨日夜から吐き気が止まらなくて、ね、慌てたいちが病院へ朝一番の診察を捻じ込んで、周りには怒られたけど、いちに診察してもらったの。」

「そうなんだ、8週目なんだよ!!!本国へ加奈を先に帰してから、こっちでの片付けを2,3日中に終わらせて、私も急いで帰る事にしたんだ。」

「おめでとう、一兄に加奈さん。」
「一郎さんと加奈さん、おめでとうございます。」

 一兄が、にやけながら話す。

「多分、2人か3人の多胎だと思う。」
「ますます、おめでたいじゃないですか。」

 一兄の家系は、子供が他の人よりも生まれにくい系統で、双子か三つ子で産まれるのは非常に珍しいのだ。その証拠に、一兄は一人っ子なのだ。

 だからだろう、一兄は本国で加奈さんを早く休ませてやりたいのだなと思った。

「だから、大事を取って、加奈を先に帰したいんだ。加奈を家でのんびりさせてやりたい。」

「陽に電話して手続きとか雑用をしてもらいますので、お茶でも飲んで待っていて下さい。」
「ああ、待ってる。」

 一兄と加奈さんが結衣子とお茶を飲みながら話している間に、寝室へ移動してから陽へ電話した。
 陽がなかなか電話に出なかったが、しつこく何度も電話しておいて陽からの折り返し電話を待っていたら、携帯電話が震えて「陽」と表示された。

「すまん、ちょっと帰国準備や週刊誌の対応で電話に出られなかった…。何かあった?」

「一兄と加奈さんが部屋に来ているんだが、加奈さんが多胎で妊娠したと今朝、判明したそうだ。ついては、水曜に一緒に帰還させたいと頼まれてしまった。
 一兄も2,3日中に片付けて、本国へ早急に帰国するって言っている。
 一兄帰国の手続きも今の業務と並行して行わなければならない。
 その報告と、加奈さんの帰国手続きを迅速に追加して欲しい。」

「おめでたいけど、一兄の家での双子以上の妊娠自体が珍しいな。
 早急な帰国理由になる案件だ。加奈さんと祥と結衣子さんの帰国が一緒になるように頑張るわ。
 同時に、一兄の早急の片付けの手配に、早々に帰国しそうだから、そっちも手配する。」

「で、婚約者へ送る指輪は準備出来たか?」

「2組のつがいから話を聞けたんで、準備出来た。協力を感謝してる。」

「陽は、私達と一緒に一時帰国して、その足でプロポーズしに行くんだろ。スキンは買ったのか。」

「段ボールにギッシリ詰めたのを用意した。暴走してもいい様に、薬もあれこれ手配したよ。加奈さんの説教は祥と結衣子さんを見ていて、身に染みたからな。」

「止まれなかったからな。気付いたら、朝だった…。
 一兄には「気持ちも身体もよーーーーく分かるが、結衣子さんの事も考えろ…。」って、肩を叩かれて言われたよ。」

「…一兄の言葉が経験から発せられた言葉だって分かるから、深くて重みがあるな…。」

「まったくだ。経験したからこそ、出る言葉だと思う。」

「明日は我が身か…。」
「じゃあ、頼む。」
「分かった、手配する。」

 内容はともかく、しんみりしてしまった陽との電話を終わらせた。

 寝室から出て、結衣子が何をしているかと見れば、加奈さんから常識や細々した知識を教えてもらっていた。それを微笑ましく見ている一兄いちにい

「帰る時にはロングスカートが良いって聞きましたけど、持ってないんです。私は明日部屋から出れないんですよね、どうしましょう。」

「私が明日、買ってくるよ。要る物があったら、明日までに紙に書いておいて欲しい。」
「そうします。」

 そんな私達の様子を見ていた一兄が、
「幸せそうだな。」
「これからも幸せになりますよ。」と、私が答えた。

「2人して話してないで、晩ご飯へ行きましょう。いち、私、あっさりした物なら食べられそうなの。」
「あと食べたい物は?」
「んー、食べてみないと分かんない。」

 加奈さんを甲斐甲斐しく世話する一兄を羨ましく思いながら、自分と結衣子で想像すると、顔がにやけてきた。幸せが増えるんだな…って思って。

 晩ご飯では、加奈さんが米で出来たお粥なら食べられる事が分かって、一兄がレトルトのお粥各種を加奈さんに持たせる荷物とした事。
 段ボール箱5箱に用意するぞ!!と私に嬉しそうに伝える一兄からの電話で話を聞いたのだった。

 その後何時間かして、私達との食事後に寄ったコンビニでたまたま見掛けたミカン缶詰を買って帰ったら、これまた加奈さんの口に合って、ミカン缶詰を嬉々として食べていると、メールで報告された。

 水曜朝の出発前までに一兄が24時間スーパーやコンビニを回って、ミカン缶詰を段ボールに嬉々として詰め込むであろう姿を想像してしまったが、気付かない振りをしようと決めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

処理中です...