ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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異界渡り(ワーオランドーラ国)編

獅子国では1

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 獅子国の王宮の一室では、宰相の白角と、孫娘の白虹が話していた。

「今回は仕方なし。王太子まで出てきてしまった時点で、阻止されるのは9割だったからのう。後は運だけだった筈だがの。あの小娘を国から追い出すのに、散々計画してこちらからも定期的に金を渡して生活させていたのに、あの爺と婆が先に死んでしまいおって、計画がとん挫しおったわ。」

「お爺様、私、あの王太子は好きじゃないの。父の様に母の手の上で踊っているのにも気付かなくて、権力があって贅沢させてくれるなら、多少は目をつぶるわ。私の手の上で踊って満足する男が良いわ。」

「青水仙は、前ならわしのお勧めじゃったが、猫耳娘に狂っておるからのう。今はまだ無理だしのぉ。どうしたもんか…。さて、白虹は気になる男は居ないのか。」

「見てみて、話さないと分かんないわ。お見合いしようかしら。お爺様なら、私の好みを知っていらしてるし。」

「白虹の手の上で踊っているのにも気付かなくて、権力があって贅沢させてくれる、見目も良い男か。そうだの、権力があって金もある男で見た目も良いのだと、中々、白虹の思う通りに動かんものだ。白虹の父の様な男は中々いないと知っておればよいが、難しいのう。洗脳しても、元々の気質が出て来てしまうから、厄介じゃて。」

「お爺様は意地悪ね。」

「白虹は異界渡りをしてでも、相手を探してくる気はあるかの?あっちでなら、白虹の理想な男が居ると報告があった筈じゃ。こっちよりも平和だから、うじゃうじゃ居そうじゃのぉ。」

「そうね、自力で探してくるのも面白いかも!護衛とブレインで、今回失敗した青水仙を連れて行くわ。後は、妹の赤湖をメイド代わりに連れて行くわ。お屋敷も伝手もあっちにはあるんでしょ。」

「赤湖は許可しない!青水仙を執事として、護衛を兼ねて連れて行けばいいじゃろうて。」

「んんもう、お爺様の意地悪!!」

「そんなワガママをいうなら、向こうでの生活費を少なくするぞ。それとも許可を取り消そうかのう。」

「分かりましたわ。赤湖は諦めます。成長を留め置く注射の手配をお願い致しますわ。あっちに言った途端に、何処かの誰かみたいに婆になりたくないし。あ、青水仙の分もね。お願いしますわ、お爺様。」

「それなら、手配しておこうかの。」
「では、失礼いたしますわ。」

 白虹が出て行った後、白虹の前では好々爺だった白角は溜め息をついた。その姿が溜め息一つで変化していた。獅子国皇帝、白炎の姿に。

「私がいつ、あの爺と入れ替わった事に気付くのか。白虹では無理か。」白炎が吐き捨てた。

「ええ、あの娘では無理ですわ。あなたの真の実力にも気付かなかった父と同じで、節穴ですわ。」

 それに答えたのは、皇帝正妃の赤雪だった。

「まあ、いい。あの問題を起こした青水仙とセットであっちへ送れば、問題ないだろう。」
「それで、あっちでの定期的な注射に細工して、向こうで一生を終わらせると言う脚本シナリオですね。」

 可憐な女性が姿に似合わない言葉を述べた。

「赤湖、いや白星。白虹が向こうへ行ったら、立太子の儀を行う。女装もそろそろ年齢的にも限界だろうし、な。」
「父上、母上のおかげで、あの爺に殺されなくて済みましたし、姉もあっちで番の青水仙と幸せに暮らせそうですし、いいんじゃないでしょうか。」

「私も、あの憎たらしい爺の真似をこれ以上しなくて済むので、助かる。」
「ええ、あの使えない頭の悪い父の姿を王家の隠し牢以外で見なくて済むようになるなら、歓迎致しますわ。」

 赤雪は艶やかに嬉しそうに笑った。

「では、白虹の異界渡り関連の手配をするか。」

「父上、猫耳の国にも一刻も早く正確な情報を伝えなければ、あらぬ誤解を受けます。」
「その手配も謝罪も既に密書を送って、済んでいる。後は国内の爺の派閥に残っている、ぐうたら貴族を処分するだけだ。」

「そうですか。では、白虹姉上の出国日はいつになるでしょうか?」

 ウキウキと楽し気に白星は父に尋ねた。

「明日から準備させて、3日で出そうかと思っている。」

「では、あと3日のうちに、愚かなご令嬢に頭の軽いご夫人の一覧リストを仕上げておきます。そんな血を獅子国皇家には入れたくありませんので。お見合い一覧リストから外していただかねば。」

「そうだな。白虹と赤湖が姉妹だと信じて、白虹が後継ぎと勘違いしていたせいで、赤湖に嫌がらせや呪いを仕掛けてきていた愚かな者共達か。外すのは当たり前だ。良い一覧リストを期待している。」
「勿論です。詳細な一覧リストを父上にお目にかけますので。」
「母も、その一覧リストで今までのストレス発散をしたいわ。白星、私にも詳細な一覧リストをもらえるかしら。」
「父上、母上にもお渡しして宜しいでしょうか?」
「構わん。赤雪、楽しく遊ぶのだぞ。間違っても、じゃれ過ぎて甚振いたぶり殺したりするな。でないと、私の楽しみが減るからな。」
「まっ、白炎様ったら。」

「お2人の仲が良くて羨ましいです。今度こそ、頭の悪い兄弟は要りませんので、普通か私と同じ位の兄弟を頼みます。」
「ああ、努力はする。」
「では、父上、母上、私は執務へ戻りますので、失礼致します。」

 白星は自分の部屋で、届いたばかりのワーオランドーラでの報告書を読み直す事にした。
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