ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

ショウ王太子の部屋

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 もう一人の私が話した内容を覚えている。何かの映画を見せられている様な感じがするだけだったのに、どうして倒れたのかその理由が分からない。

 どっちも私だから、当初に感じていた違和感が馴染んだのか、今はない。ナーオ・ロウへ置いてきぼりにした私の魔法が、もう一人の私になっていただけなので、知ってしまえば怖くない。

 魔法のない日本で暮らすのに、誰かに大事なモノと引き離されてしまって、凄く寂しくて泣いていたのを覚えていたが、まさかそれが、自分自身の魔法だとは思っていなかった。

 倒れてから意識がなくなる短い時間の間に誰かが言っていた言葉を聞いた気がする。王妃の魔法。あれが王妃しか使えない魔法なの?!ミュン王妃様なら、私の聞きたい事を知っているかもしれない。

 さっきまでを思い出すと、白花は諦めと退屈な毎日の中で、白星から解放され、外に出たいと熱望していた。

 白星は、女装して「妹の赤湖」として生きて、屈折してしまった。そのせいで、自分を楽しませるだけのオモチャを探しているだけの子供だった。だから他人を思いやれないワガママな子供のまま、大きくなってしまった。

 毒を仕込んだメイドは、自分でしたい事をして今までを生きて来たのだから、あの中では一番幸せだったのかもしれない。でも、私は、あのメイドの様な生活をしたくはないけれど。

 …ん?!私、布団の上にいる?…ま、さ、か、祥さんの布団の上?…頭の中をよぎる過去のあれこれ…。で、でも、晩餐に呼ばれているし、ど、どうしよう?!

 コンコンコン。「王太子様、イッチェン様とカーナ様がいらっしゃいました。」
「今、行くと、伝えてくれ。」「かしこまりました。」

 足音が遠ざかっていった。今のうちに起きよう。いかにも、今、気付いたようにしなくちゃ。

「あ、あれ?!」と声を出して、ここが何処だか分かっていない風を装った。

「お気付きになられましたか?ここは、ショウ王太子様の部屋の寝室でございます。」
 メイドさんが答えてくれた。黙っている私を気遣い、続けて言った。
「ドレスを着替えさせたのは私ですので、ご安心下さい。」
「ありがとうございます。」

 よ、よかったー。祥さんが着替えさせていたら、今頃は無事じゃないもんね…。

「ユーイお嬢はん、気ぃ付いたようやな。」ロートもいたんだ。そうか、専属だから近くにいるのは当たり前か。
「ロート!床に倒れる前に支えてくれて、ありがとう。床に倒れるとばかり思っていたから、助かったー。」
「覚えてはるんやね。」
「映像記録を見ているみたいな感じだったけど、ね。なんとか。」

「あれが王妃の魔法やって、王様が言っておったけど、ユーイお嬢はん、知ってましたんか?」
「全然知らなかった。だから、自分でも驚いているんだよね。でも、もう一人の私が王妃の魔法?!」

 よく分からない。魔法の事は日本で育ってきた私には無縁なものだった。あくまで、想像の中の産物なだけであったのだから。

「そないな事言われはってもな、ユーイお嬢はんも混乱するやろし。だからかもしれへんな、王太子はんが王妃様とお嬢はんとで話が出来る様にしてくれはるって言ってましたわ。」

「そうなんだ。ロート、伝えてくれて、ありがとう。」

 祥さんが、王妃様と話が出来る様にしてくれるなら、問題ないと思う。だって、「王妃の魔法」って言われているんだもの。王妃様に聞くのが一番。その魔法の話が聞けるまでは、私が悩んだってどうにも出来ない。まずは、王妃になる勉強をするべきだと思う。

 その前に、今、一番、肝心な事を聞かなくちゃ。

「私の部屋が何処だか、ロートは知ってる?」
「いんや、知らんのですわ。王太子はんが説明してくれはるんと思いますが。」
「じゃあ、戻って来てくれたら、私の部屋は何処ですかって聞いてみるしかないよね。」

 でも、なかなか戻ってこない祥さんにしびれを切らして、「お茶を飲みたい。」と控えていた2人のメイドさんに言ったら、ベッドのある寝室から応接間?居間?みたいな所へ案内されました。

 私が起きた時に声をかけてくれたメイドさんが、お茶を淹れてくれました。もう一人いたメイドさんには、祥さんの様子を見に行ってもらいました。

 一人でお茶を飲むのも味気ないので、ロートを無理矢理お茶に付き合わせていますけれど。

「このお茶、美味しい。」
「ありがとうございます。」
「このお茶、淹れ方が上手いのでしょうか。美味しいですね。」

「あ、こっちは、私の専属護衛のロートです。あなたのお名前は?」
「ユーイ様の専属侍女として働かせて頂く、マリンカと申します。宜しくお願い致します。」
「マリンカさんの得意な事は何ですか?」
「お掃除です!綺麗になった瞬間がとうといのですわ!!」

 これはまた、私がマリンカさんの何かのスイッチを押してしまったのではないだろうか。ロートは笑いを堪えているようだし、どうしたものでしょう。マリンカさんのお掃除談義が止まらないです。

 10分経過してもまだ掃除に対する愛を説いています。ここで、お茶のおかわりを頼んでみましょうか。

「マリンカさん、私とロートのお茶のおかわりを頼みますわ。」
「はい。ですが、ユーイ様、「マリンカ」と呼んで頂きたいのです。お願い致します。」
「ええ、分かりました。今までの話で、マリンカの掃除に対する愛情と情熱は誰にも負けないと理解したのだけど、お茶菓子を頂いても晩餐に影響はない?大丈夫かしら?」
「そうですね、少量であれば、大丈夫だと思います。」
「では、お茶はマリンカの分も淹れてちょうだい。私の作ったお菓子を出すわ。」

 マリンカが3人分のお茶を用意したので、ロートを立ち合いにして、ブレスレットから栗バターまんじゅう、苺大福、ミカン大福を出しました。小腹が減ったし、晩餐前にお腹が鳴らない様にしておかないと。

 3人でお茶して食べながら話をした後、晩餐の為に私は違うドレスに着替える為、部屋の中を移動した。私の部屋は、祥さんの部屋と内扉で繋がっている部屋でした。マリンカさんは、目上の私が尋ねないと答えられなかったのだそうで、ご案内出来ずに申し訳ありませんと謝罪をしてくれました。

 分かり易く言うと、祥さんの寝室に風呂、トイレ、衣裳部屋が付いている、祥さんの書斎、祥さんの居間?と言うか応接間、私と祥さんの寝室に風呂トイレ付き、私の居間、私の書斎兼勉強部屋、私個人の寝室に風呂、トイレ、衣裳部屋が付いているんです。私が使える部屋がそんなにあるのにも驚いたし、衣裳部屋には、私のサイズに合ったドレスや靴が用意されていました。祥さん、いつの間に用意したんだろう?

 ちなみに、祥さんの執務室はこことは違う棟にあるんだそうです。王城は「ロ」の字のような形で、住む場所と王城として機能している場所に分かれているそうです。

 ドレスは私にはよく分からなかったので、私がトイレに行っている間に、マリンカさんが選んだ藍色のドレスにしました。

 藍色のドレスに着替えて、化粧をし直してもらい、髪も結い直してもらって、アクセサリーを変えました。長手袋を付ければ出来上がり。私が自分の居間へ移動すると、ロートが待っていました。ロートも立っているのは疲れるだろうとイスを勧めて座ってもらい、私も座って、祥さんがエスコートしに来るのを待っていました。 
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