ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
58 / 207
ナーオ・ロウ国編Ⅰ

獅子国では3 白星の後悔

しおりを挟む
 その日は翌日が楽しみで、仕事もはかどった。

 翌日の午後、空に浮かんで動いている黒い大きな虎を見たとナーオ・ロウ国で騒ぎがあったそうで、吉兆だと王国民が噂をしていると伝えられた。夕方の会議中に伝えられた事で、父がいつもは見ないような渋い顔をしていたのだ。その臣下からの報告を聞いている間中、渋い顔のままだったので、オレは笑いそうになったが我慢をした。

 さて、あの王太子達の謁見が終わった後、王弟の計画が動くと伝えられていたので自室へ戻った。

 部屋の鏡に、あの暴れ女を映してみた。王太子達の謁見が終わったのだろう、茶を淹れているようだな。

 王弟の計画が上手くいかないと読んでいたが、面白そうだったので敢えて、失敗するだろうという事を教えなかった。オレは、これから、どうなるのかとただ見ているだけの観客だ。

 だが、王太子の婚約者が突如、豹変した。

 次々と事実を告げていく。何なんだ?これは?どこから情報が漏れたのだ?

「な、何で知っているのよぉーーーー!白星様!助けて!役に立ったでしょー!」

 払い下げた女が喚いても、オレは何も感じない。自分で失敗しておいて、勝手にオレを呼ぶのかと腹が立った位だ。やっぱり暴れ女だった。暴れ女は何も変わっていなかったようだ。

「ワザワザ手の内を明かして楽しんでいるのは、白星が退屈だからでしょ。」

 ああ、退屈だ。父である皇帝からして油断がならない。母は、昔から父の言いなりで、父の味方であって、私には何も感じていなかった。捨て置かれていたのだ。

「番の白花は皇太子の言いなりだし、皇太子は馬鹿だから、他の人が迷惑だって思っているのが分からない。
 出来損ないの、見た目だけしかない、親の庇護にいる子猫の様な、ワガママで欠落している者。友人もいない、閨も下手くそで、男らしさもない、どこにも救いがないアホなのね。あら?図星だったみたい。怒って、わめき散らしているわ。

 …白花も言いなりにしているのは、煩くてワガママだからと知っているからなのね。番でなくても、他の人を探したいって思っているのね。でも、祥さんはダメよ。あなたを殺してでも渡さないわ。ええ、そう、諦めてくれるならいいわ。私もあなたには何もしないわ。

 私?祥さん以外に何かされるぐらいなら、自害する覚悟も出来ているわ。」

 オレがイライラしているのを知っているかのような口ぶりだ。激しく魔力が乱れたのか、気付くと、鏡以外の部屋の中の物が滅茶苦茶になっていて、部屋の中が荒れている。それにしても、何だ、この女は?気持ちが悪い。

「私の方が歪んでなかったわね。今、話している私は、この世界で切り離された魔法で出来た私。世界をずっと見守っていたんですもの。日本から魔法のないユーイが戻るのを待っていたの。戻ったから、分かれていた私も戻ったのよ。

 そうね、白星。女神さまの元でずっと修行していたから、私一人で、獅子国を滅ぼせるわよ。

 洗脳も出来ないし、魔法で操ろうとしても無理よ。白星の欲しいモノは、あなたが飽きないでいるオモチャでしょ。だったら、皇帝と遊べばいいじゃない。そうしたら、飽きる事が無いのにね。馬鹿だから気付いていなかったでしょ。皇妃もセットだし、長ーく遊べるわよ。あなたの寿命が尽きるまで。

 白花を番にしても、白い獅子は生まれないわ。そうね、あなたの愛人の中に今、子供を身籠っている女が3人いるでしょ、その中の1人が白い子を産むわ。城の皇太子宮で一刻も早く保護しないと、皇帝に秘密裏に処理されちゃうわよ。チャンスは一度しかないのよ。」

 子橙こだいだいと子紺を急いで呼んで、子を宿した3人を皇太子宮へ今すぐ移るように手配をした。2人は部屋の中を見たが、何も言わずに部屋の外へ出ていった。

 この世界を作った女神の元で修行していた?!獅子国を滅ぼせるというのか!!それに、オモチャ代わりに父や母を相手にはしたくない。いくら退屈しないでも、オレにだって遊ぶ相手を選ぶ権利がある。

「一緒に居るわ。私の話した事も感じた事も理解しているわ。

 どっちも自分だと認識しているって言っている。

 白花、聞いて?白花には、ジャコウネコの番がいるの。もう一人の番候補として女神さまが用意されていたの。白星がダメな場合を予想されていた女神さまが用意していたから、大丈夫よ。安心して。

 白星がこの国やワーオランドーラへ手を出さなきゃ、私は何もしないわ。手を出したらねぇ、国ごと皇家を潰すわよ。私の命と引き換えにしても、ナーオ・ロウを守るから。

 そうよ、キチンと書類で寄越してね。いつもの馬鹿にした書簡で寄越したら、国を半分機能しない様に止めてあげるわよ。いいわね。そう、3人とも皇太子宮で保護したのね。

 皇太子即位の儀には、この国からは誰も行かないわ。皇帝がこの国から行った者を人質にしようと、今、術式を練っているし。白星も気を付けてね。
 即位の最中に、皇帝の術式で呪いをかけられそうだわ。白星に子供が出来ないようにして、自分を皇帝でいられる期間を長くするみたい。

 白星の弟に跡を継がせる気でいるけど、皇帝と皇妃の間にも、側妃との間にも、もう白い獅子は生まれないのにね。広間に白星を不能にする術式がもう出来て用意されているから探してみたら?それだけは教えてあげるわ。こちらを信用する為にね。出来たら、あなたとは、もう二度と会いたくないから。………。」

 こんな変で怖い女を側妃になんてしたくない。さっき、保護する様にに言った3人は保護出来たのか?頭の中がまとまらない。部屋から飛び出て広間へ行こうとしたら、子橙こだいだいと子紺と鉢合わせた。2人にさっき聞いたばかりの術式の話を聞いた通りに告げてみた。一緒に広間へ行って、不能にする術式を探してくれるそうだ。

 その術式は広間のど真ん中に設置してあった。証拠となるように書き換え前の術式を正式な書類へと写し取り、魔法紙で術式が二度と使えない様に封印した。

 術式を読み取ると、父白炎が白星の機能を奪って白炎と入れ替え、不能にするという愚かしいモノだった。それを書き換えて、父の仕掛けた罠が発動しない様に出来たし、この術式を二度と使えなく出来たので、2人を連れて自室へ急いで戻った。 

 2人に先程聞いたばかりの話をした。そこで、ポツリと、子橙こだいだいが話し始めた。

 これは、我が一族の者だけが口伝で伝えられている話ですが。と。

 昔々、国が争いを繰り返していた頃、この世界を作った女神さまがその現状を嘆いていたら、勇気ある娘が女神さまの前で言ったそうです。
「私の命で争いが止められるなら、どうぞお使いください。」と。女神さまはその娘の心意気に感心して、娘の願いを叶える事にしたそうだ。だが、娘はとある国の王妃で、その上、子を身籠っていたので、子供を産むまで女神は待っていたのだと聞いています。

 その話を聞いた他国の王妃達が、王達の争いを止める為に我先にと、女神さまに願い出たそうです。私達の命で王の目を覚まし、民を守れるなら、私達の命をお使いくださいと。

 娘を待っている間に、王妃達の心意気に触れた女神さまは世界の隅々まで、最初の娘の話と王妃達の話をして、王達の目を覚まさせ、争いを止めたと伝えられています。

 その最初の娘がいた国がナーオ・ロウ国で、その国では女神の恩恵を受けた娘が王妃になるので、決して、攻め入ってはならないと戒めとして伝えられているそうなのです。

 だから、皇帝がナーオ・ロウ国へ何かしらを起こそうとした時は、私達がこの話をして、命を懸けて皇帝をいさめる様にと伝わっているのです。

 ですが、白炎様はこの話を信じず、笑って伯父上を切り捨てました。

 白星様が産まれた後にナーオ・ロウ国へ攻め入って、美姫と噂のある王妃を攫って、慰み者にしようとしていたのですが、女神の怒りに触れてしまい、それ以降、子を望めない身体になってしまったのだと父から内密に聞いております。白炎様の後宮の女達が年々減っていくのは、不能の為だと後宮内だけで、細々と囁かれていますから。

 何だそれ。父上がやらかしていたのか。オレの機能が父上と入れ替えられていても、あの女が言っていた通り、父では白い獅子は望めないという事か。

 父でなく、次代のオレがナーオ・ロウ国に攻め入らないと言う約束をあの女が欲しているのだろう。それを寄越さないと、国の機能を半分止めると言ってきたのだ。それを証明したのが仕掛けられていた術式と子が出来た女の保護だったのを理解した。

 そして、父がオレの見ていたモノを盗み見ていた事も、あの女の言う通りに、本当だろうと思った。父がどう出てくるか分からないので、その対策をしなければならない。

 書類を書く意図は解ったが、王弟の娘である白花を今後どうするかも考えなくてはならない。ナーオ・ロウ国では、王弟は王太子殺害未遂の主犯でその王太子妃の誘拐未遂の主犯であり、過去の件でも犯罪が立証された者なのだから。その扱いは難しい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

処理中です...