ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

ミュン王妃1

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 わたしは、ナーオ・ロウ国の王妃のミュン。綺麗で可愛いと、メイド達も褒めてくれるのよ。

 その私が、初めて魔法を使ったのは5才だったわ。

 姉のリュンの耳が黒耳で、私の耳が黒と白のまだら模様の耳だった。姉妹で遊んでいる時に、姉の耳が見たくなって、姉に頼んで耳の見せあいっこをしていたの。「ミュンの耳はキレイね。」って言うから、恥ずかしくなって、2人で帽子を被って、その帽子を交換して被る遊びをしていたわ。耳は出したままで遊んでいたのよ。

 そこへお父様とお母様がやって来て、耳を見せて欲しいと言ってきたわ。

「優秀な耳の方を残すから、2人共、耳を見せなさい。」とお父様が言ったの。
 お母様も「まだら模様の耳だったら、恥ずかしいわ。まだらの方を親戚で子供のいない夫婦の元へ、養子に出す話をしてあるのよ。」と、お天気の話をするように、要らない方の子供を養子に出して、自分達が捨てると言ったの。

 私が耳を見せたら、養子に出されるのは私になってしまう!どうしよう!イヤよ!捨てられたくない!捨てないで!と強く念じて、絶対、養子に出たくない!嫌だ!と思っていたら、母が姉の帽子を外したの。そうしたら、姉の耳と私の耳の見え方が逆になっていたの!姉の耳がまだら模様に見えたのよ!

 その場でお母様が「リュンがまだらだったのね。リュン、あなたを養子に出すわ。」と言って、お父様とお母様が部屋から出ていったの。その隙に私が耳を仕舞うと、姉の耳が黒耳に戻ったわ。

「ミュン、あなたは魔法を使って、お父様やお母様に幻を見せたのね。同じ顔をした私を嫌っていたのに気付かなかったわ。いいわ、妹のあなたの為に私は養子になって、この家から出ていくわ。お父様とお母様を宜しく。あなたは幸せになってね。」と言って、荷物をまとめ始めたわ。この事を大きくなってから考えたんだけど、これって私への当てつけだったのよね、きっと!

 そうよ!リュンは、いつも良い子ぶって偉そうにするんだから!なによ!私は家から出ていかなくて済んだんだわ!

 翌日の朝早く、リュンは養子に出されて行ったとメイドから聞かされたの。私が起きた時には、リュンがいた痕跡が家の中から無くなっていた。リュンの部屋だった場所は、客間に変わってしまっていたの。

 それ以降、私の中では、清々した気持ちと少しの罪悪感がいつも心の中にいた。

「小さい頃に他家へ養子に出された双子の姉が、私は、ずぅーーっと邪魔だったわ。お父様もお母様も、私の方が顔が良くて可愛いからと言って、姉の方を養子に出したと言っていましたわ。」と呟くと、私は姉がいなくなった事を後悔せず、罪悪感も感じなくて済むし、元気でいられたので、その言葉を何十回と呟いたわ。

 そのうち、その言葉を呟かなくても、お父様やお母様にとっての一番が私だって分かったから、安心していたの。

 でも、姉のリュンが養子先で、勉強も沢山して頭が良く、所作も顔も綺麗で優雅だと褒められている噂話を聞く度に、お父様とお母様に「貴女も頑張りなさい。」と言われて比べられたわ。

 私的には、そんなに勉強しなければ、養子先で気に入られなかった姉を可哀想だと、惨めだと感じていましたの。

 それに比べて、私は勉強しなくても、顔は姉よりも可愛くて良いのだし、耳も立派だわ。だから、貴族の位が良い所か高い方に求婚されるのよ。私は、私を望む方と結婚して子供を産めばいいだけなんだもの。

 それに婚約出来る年頃になると、私の方がリュン姉様よりも綺麗だと褒めて下さる貴族の男性が山ほどいましたのよ。姉に声をかけても、澄ましていて愛想もなく、誘いにも乗らない、ただつまらないだけの女だと言って下さる人もいて、私は、やっぱり姉よりも私の方が可愛いんだわ。と自信を持ったのでした。

 その私の方が可愛いという事実を引っくり返す事が起きました。姉のリュンが王妃になったのです。

 姉が王妃になった事で、私達を比べていたお父様とお母様が、今度は嘆き始めました。「リュンは王妃になったのに、貴女には初婚の相手からの、何の縁談も来ないのよ。」「頭が悪すぎて遊ぶ相手にしかならないと言われた。縁談も、後妻が欲しいと言う、ミュンとは年の離れた相手だけしか申し込みが来ない。」と、言われました。

 そんな事はないわ!私の方が可愛いし、顔が綺麗なのよ!耳も良い耳だってお父様やお母様に言われているわ!

 でも、現実は私にとって、甘くなかったわ。仕方なく、したくもない勉強をして、その内容を少しずつ覚えていったけど、何処からも良い縁談が来なかった。来るのは後妻目当ての縁談ばかり。

 姉以上の嫁ぎ先は国内には無いのにね。お父様もお母様も現実を見ればいいのに。それなのに、私ではなく、リュンを残しておけば良かったと言い始めたのには呆れたわ。

 そのいわれのないストレスを溜めていた私は、お茶会で令嬢方からの話を聞き、メイドで鬱憤晴らしをする事を思いついたのよ。

 メイドに無理難題を言い付け、出来ないと泣きながら謝罪する姿に、心からスカッとしたわ!

 その事に気付いた私は、どうしたらもっとスッキリするのかを考え、実行していったの。私付きのメイドの入れ替わりが激しいけれど、給金に釣られて、また私の新しいオモチャがやって来ますもの。

 そんな生活を私が続けている中、姉が王太子になる男児を産んだことも、私を姉と比較する両親も気にならなくなっていったのよ。私の目に映る景色は以前からの様に、灰色の世界のままだけれど。

 会談の為に、獅子国から皇帝とその皇妃がやって来ると聞いた私は、ミーハーなメイドの勧めに従い、珍しく、その行列を眺めていましたの。

 皇帝とその皇妃が乗った馬車が通り過ぎる時、馬車の中にいる人がこちらを向いたのでした。その瞬間、私の灰色の世界に、色が付いたのです!

 ああ、あの馬車の中の人は白炎皇帝様とその皇妃の馬車。では、私が嫁ぐ相手は皇帝様なのね!

 家にどうやって帰ったのかも覚えていない程、白炎様との出会いは衝撃でしたわ。

 王妃になった姉なら、私と白炎様を会わせられると思いついて、姉に頼み事をするのは途轍とてつもなくイヤだったけれど、私の気持を正直に綴った手紙を送ったわ。

 でも、その返事は姉からではなく、リンクス王からで、王城から使者が来て、「ご希望に添えません。」と伝えてきただけでしたのよ。馬鹿にしないでよ!

 悔しい気持ちを抱えたまま、メイドを連れて城下を散策していると、気分を悪くされた貴族のご夫人がいたの。その方を我が家に連れて行き、家で介抱したら、いたく感激をされていたわ。そのご夫人は「雪」と名乗って、後日、お礼に伺いますと言って帰られたのよ。

 後日、そのお礼を私に伝えに、わざわざ会いに来て下さった上に、お礼の品を持って来てくださったの。その時、私の事を妹みたいだと褒めて下さり、ご自分の身分を明かして下さったわ。

 その身分に驚いたけど、白炎様の皇妃なのに、とても優しく慈悲深い方だと思ったの。だって、たまたま介抱しただけの私に、雪様と呼ぶのを許して下さったし、お礼を言いに来て下さったのよ。

 それからは、国に帰られた雪様と文通をしたわ。家の商売が上手くいかなくなったのを書いた時は、人と物を紹介して下さるし、愛しい白炎様の事も欠かさずに書いて下さるの。メイドも八つ当たりしても辞めないメイドを何人も紹介してくれたし、とても良い方でしたわ。

 ナーオ・ロウ国が争いや犯罪で国内が不安定な中、いつでも私を手紙で気遣ってくれる雪様に、国内での事や、噂を書いて送っていたの。そんな内容でも喜んで返事を書いて下さるものだから、嬉しかったわ。
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