ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

ミュン王妃2

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 姉がリュン王妃様と呼ばれるようになってから、私は夜会や舞踏会には一切出なくなったわ。

 夜会や舞踏会で私に寄って来るのは、自分の自慢になるよう女と浮き名を流したいだけの女ったらしとか、一人をターゲットにして誰が落とせるかを競っているアホ共や、後妻として私を娶りたい年寄り共、私が王妃になった姉と姉妹だと知って権力目当ての馬鹿共しか寄って来ない事が分かったから。

 冷静になって回りを見てみると、今更だけど本当に馬鹿らしくなったのよ。噂だけなら、お茶会に出るだけで手に入るんだもの。雪様へ書く手紙の内容は、お茶会に出るだけで入手出来るから困らないし、お茶会だけに出ればいい気楽な毎日を送っていたの。

 そうしてナーオ・ロウ国内も落ち着き始めた頃、王城から使者が、内密に話があると言って、我が家へやって来たわ。

 何でも、リュン姉様が病気になり、私に王妃の仕事を代役で務めて欲しいと言ってきていると。そうよね、顔だけなら双子の私は、姉様の代役が出来るわ。

 使者殿が告げたその給金の高さに、日頃から金遣いの荒い両親は飛びついたの。それに、私の代わりに代役を引き受けてしまったわ。私は仕方なく、そのまま王城から来た馬車に乗り、王城で寝たきりの姉に面会したのよ。

 やせ細った姉は、私よりも年が上に見える様になっていた。その姉が、「ごめんなさい。私が不甲斐無いから、あなたに迷惑をかけてしまって。」と言ったら、苦しそうにうめいてうずくまってしまった。

 その直後、姉の部屋には医師や治癒魔法使いが出入りを始めて騒がしくなったので、私は王妃付きのメイドだと名乗ったメイドに案内されて、小部屋に連れて行かれたわ。

 そこで、リンクス王やショウ王太子、カッツェ宰相、総騎士団長バルバドス団長に会ったの。姉様の病気は良くならない、治らない。でも、国内に混乱を招きたくないので、王妃の代役を務めてもらえないだろうかと聞かれたわ。

 私が断っても問題ないと言っていたけど、多分、それは嘘だって分かっていた。それでも、私の事を考えてくれているのが分かったわ。

 それに、金遣いの荒い両親でも私を育ててくれたわ。その分だけでも少しは返せればいいかと思ったの。

 私が代役をする事で受け取る高い給金を充てにして、今頃はもう、家に商人を呼んで買い物をしているのだろうと想像したし。2つの理由で、私は引き受けるという返事しか出来ない事が分かっていたの。

 私が代役を引き受けると言うと、その場の空気が変わったわ。

 すぐに王妃の部屋へ案内されて、ここをお使い下さいと言われて、さっきまでここにいた、この部屋の主である姉を探したの。でも、姉は居なかった。

 メイドに聞いたら、姉は王太子様の部屋に移ったので、ミュン様はご心配なくお過ごし下さいと言われただけ。どうにも出来ない私は、その日、そこで泊まったの。

 翌日から、私がマナーや最低限の教養があるかどうかを調べる為の教師が送られてきたわ。そのどちらもクリア出来ていたらしく、その日の午後から、姉の代役を務めはじめたわ。

 代役の私のボロが出そうになったり、ミスがあると、メイドや周りがフォローしてくれていたので、何とかこなす事が出来ていたけど。そんな生活を王城でしてから半年、姉が私を呼んでいると言われ、王太子様の部屋にいる姉と久しぶりに会ったのよ。

 姉に会うのが怖かった。姉がいつ病死をしてしまうかと私自身が恐れていたから、会いたくなかったのよ。

 でも、誰が見ても一目でもう長くは生きられないのが分かる程、弱ったリュン姉様がそこにはいた。会わなかった事を後悔する情が私にもあったみたい。勝手に目から涙が出たわ。

 私が来た事をメイドが姉様に囁いたら、私に姉様の手を握るよう、メイドを介して姉様が言ってきたの。

 姉様の手を握ると、まだ温かかった。姉様は生きている!まだ間に合うわ!と思っていたら、知らない女が立っている姿が見えたわ。その女は自分はこの世界の女神だと名乗り、姉様を助けられず、申し訳ないと謝って来たのよ。

 馬鹿らしい。姉様を助けられないくせに女神と名乗るなんて、図々ずうずうしい。私は見も知らない女を女神と信じる程、能天気ではないわ!と思っていたら、

「そなたの考えている事を読めるのだ。私が女神だと信じてもらえるように、そなたに新たな力を授けよう。」

 女神と名乗るエセ女の手にあった小さな光が、私の中へ入っていった。自分を見回したけど、どこにも変化はないように見える。

「エセ女神!どこも変わってないじゃないのよ!」
「いいや。1日につき、3人の本音が1回ずつ理解出来わかるようにした。試しにその力を使ってみればいい、誰の本音がみたい?」
「では、姉のをみたいわ!」
「そうか。では、みるがいい。」

 大きな鏡に映ったような姉の姿が見えた。姉の本音がみたいと願うと、私の目に悲しそうに寂しそうに笑う姉の姿が見えた。

『ごめんなさい、ごめんなさい。今まで姉らしい事が一つも出来なかった上に、またミュンに妹だからと代役をさせてばかりで。女神さまに頼んで、あなたが幸せになれるように取り計らってもらう約束をしたの。だから、ショウが大きくなるまで私の代役をお願い。私はもう長くないから。お願い!ミュン!ごめんなさい!…。』

「…みえたわ。次をお願い。」

 姉様は私の姉だったわ。大事な姉様。私こそ、ごめんなさい。

「まだ本音をみたい者がいるのか。」
「1日に3人の本音が1回ずつだったかしら。そうね、獅子国の皇妃と皇帝のがみたいわ。今日の分はそれでいいから。」
「あい、分かった。では、皇妃から。」

 獅子国なのだろうか。大きな鏡に映ったような雪様、いいえ、赤雪皇妃の姿が見えた。赤雪皇妃の本音がみたいと願うと、私の目に狡猾そうな下卑た笑いをする赤雪皇妃の姿が見えた。

「!!」その姿に戦慄した!私が知っている姿ではなかったからだった。

「赤雪様、猫耳の情報源から手紙が来ました。」メイドが手紙を運んできたようだわ。
「ああ、そこに置いておいてくれ。後で読む。」雪様が男性みたいな話し方をするのを初めて聞いたわ。

『またあの憎たらしい王妃リュンミュンから手紙が来たか。

 私の白炎様に気に入られているくせに、一向になびかない憎たらしいリュンめが!!情報源としてリュンの妹を活用しているから、少しは私の怒りも収まるけれど、ほんに憎いのはリュン!!

 会談でリュンに一目惚れした白炎様のせいだと知っているが、リュンが憎たらしいわ!暗殺者も沢山送ったのに、獅子国へは1人も帰ってこないし、王城では誰も死んでないし、腹の立つ事!…そうね、ミュンは王妃の代役をしているんだったかしら、今度は王城の内情を書いて送らせる様にしましょうか。あーっはっはっはーー!』

 そうか、私に近付いたのも姉様の妹だったからなのね。知らずに踊らされていた私が馬鹿だったのね。

「次は皇帝でよかったのだな。」
「ええ、頼むわ。」

 大きな鏡に映ったような皇帝の姿が見えた。皇帝の本音がみたいと願うと、私の目に、部下を痛めつけながら、イライラして、更に大声で怒鳴っている獅子国皇帝白炎様の姿が見えた。

『どうして我の後宮から女が減っているのだ!どいつもこいつも!我に恥をかかすつもりか!!赤雪も愛人を何人も作って楽しんでいるのに、どうして我だけが不能でいなければいけないんだ!!リュンも病床にいて、手に入らないし!代わりにリュンの双子の女を愛妾にしようとしたら、赤雪に阻止されるし!私が不能では、あの双子の女を使い捨てしようにも、何にも出来ないじゃないか!』

「!!」私、もう少しで人生を滅茶苦茶にされそうだったの?!姉様が守ってくれていたの?!最低な男だわ!

 …だからなの、姉様は横恋慕されていたのね。私を巻き込まない為にと、私へ素っ気ない使者を寄越したんだわ。そっか。「獅子は嘘つきだから、信用してはいけない。」って昔から言われていたけど、本当だったんだわ。

「私が女神と信じてくれただろうか?」

 いいわ、信じるわ。

「信じるわ。でも、一つだけ聞いてもいい?」
「ああ、構わない。」
「私は自分をどう動かしてもいいのよね?女神は、その私の共犯になってくれる?」
「なろう。」
「では、今日の夜、話し合えないかしら。」
「夢の中ならいいだろう。」
「頼むわね!明日から、私の人生をかけた芝居の幕を上げるわ!」
「では、そなたの意識を戻そうか。」

「リュン姉様の所へ戻してよ。そうそう、日付が変われば、また3人の本音がみれるのよね?」
「ああ。日付が変わればな。では、戻す。」

 ミュンの意識を戻した後、女神は一人言を呟いていた。

「思った事が全て流れてきていたよ。ミュンの話を聞くまでもなく、な。私もリュンとの約束を破らない様に、ミュンに力を貸そう。まさしく、人生をかけるのだな。ミュンよ。」
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