ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
117 / 207
ナーオ・ロウ国編Ⅱ

王妃教育の合間に

しおりを挟む
 獅子国やその周辺で起こった事を誰にも知らされていなかった私は、王城での王妃教育を頑張っていました。

 王太子妃の合間に、王太后様の離宮にショウ様が作ってくれた私専用の厨房が出来てすぐから、この厨房で色々と作っています。

 主に、ストレス解消目的で。

 王城でショウ様との将来を見据えて、王妃になるべく教育されているのですが、地味にストレスがじわじわとまってくるのです。
 でもでも、今の私は王太子の婚約者もとい、皇太子妃として扱われているので、日本に居た頃のように、気軽に王城の外へ、ホイホイと出掛けられなくなってしまいました。

 はぁ~。

 この現実に、日本人の庶民として過ごしていた私は、溜め息をつきたくなるんですよ。

 その上、私には女神さまの加護があるので、女神さまの加護を自分のモノにしようとする他国の愚か者達に、誘拐され監禁される危険がある為、国外にも出掛け難いと説明されました。

 そこで、私が「旅行にも出掛けられないなんて、酷い。」と呟いたら、ショウ様が涙目になっていました。

 仕方ないじゃないですか、私、修学旅行も社会科見学も祖父母に行かせてもらえなかったし、社会人になっても、理不尽な事で勝手に身代わりにされて、働けど、働けど、生活するので精一杯な人生だったんだよ?!

 それが解決したのに、旅行らしきものが出来たのは、界渡りでワオンドーラ国へ着いた時と、その国から出た時ぐらいだったんだから、不満に思っても普通だよね?

 そういう私の心情を涙目になったショウ様は知っているはずなんだけれども、私がいつでもどこでも愚か者の手先達に狙われているのだとか、その愚か者達が、あちこちの国に一定数いるので、王城の方が安全だとかを、王太子で婚約者のショウ様と、宰相補佐でカーナ様の夫であるイッチェン様の二人がかりで説明されました。

 そんな危険を冒してまで、王城を抜け出す度胸も無ければ、危険に自ら飛び込む様な事はしませんよ。トホホ。

 私は各国の貴族や王族に狙われている現実を2人に教えられたので、おとなしく、王城に居る事しか出来ません。

 そこで出来るストレス解消法は、食べる事か、眠る事、図書館で本を読むことの選択しか、私にはなかったんですよ。

 そう言う事情を解っているショウ様だから、私専用の厨房を作ってくれたのだと理解しています。

 動かずに食べてばかりじゃ、身体が横に成長して、立派な太っちょになるでしょう。
 そうすると、ドレスの採寸をする時に、自分の身体のサイズを赤裸々にされるのがツラかった日本人の感覚を持っている私が選ぶのは、太らないようにすると言う選択肢しかなかったのです。

 太ったとドレスを作り替えるのがモッタイナイ!無駄遣いダメ!と思う庶民感覚が染みついている私には、そもそも出来ない事ですけど。

 ダンスの練習や、王城内を歩き回って筋力を維持するのが精一杯なんですよ。

 王妃教育って、結構な量があるんですけど、私がどこまで出来るのか分からない教師陣とは、会って、聞かれた事に対する口頭説明と、その内容を説明するように要求されるんです。

 ハッキリ言って、高校生や大学生の時を思い出す程、勉強漬けなんです。だから、最低限の筋力維持しか出来ないんです。

 魔法を使う練習もしているし、夜は夜で、ショウ様の肉体言語による愛情表現を毎晩、要求されて、それにこたえているので、結構大変なんですよ。

 ショウ様の好きにさせると、私が抱き潰されますからね。翌朝、起き上がれなくなってしまい、王妃教育が遅れてしまうんで、気を付けてはいるんですが…。ショウ様には、私の心情を察して欲しいんですが、こういう時だけは、何故か、私の心情が伝わらないんですよね。…アレの時は、ワザと分からない振りをしているのではないかと、知っていて知らない振りをしている確信犯ではないかと、ショウ様を疑っている私です。

 あ、話が飛んでしまった様ですね、えーと、次代様だった黒子猫の黒百合様こと、クーちゃんの世話をしている私ですが、クーちゃんが今代様になりました。

 黒大猫になる1,000才まで、あと10年の間があったそうですが、急遽、代替わりをしたので、その代わりにと、いつでも子猫の姿に擬態出来るように女神さまに融通してもらえたそうです。

 私やショウ様の側にいる時には子猫の姿で過ごせるので、未だに、クーちゃんの人化した姿は見ていません。クーちゃんの弟子も選定中で、まだいないので、余計に寂しいのか、日中は私にベッタリしています。凄く可愛いんですよ!!!

 あー、リンクス陛下の再々婚が延びているので、私とショウ様の結婚式も、もう何度か延期されました。

 リンクス王に!

 息子だけ、番と幸せにするのが許せないそうですよ!!だから、自分が再々婚するまでは、王太子の結婚を延期するのだと勝手に王命を発令したんですよ!!あのアホ陛下が!!

 自分は長期間、ミュン様を冷遇していた癖に!!何、言ってやがる!!と、怒りがゴウゴウと燃え盛るんですよ!

 ええ、リンクス王のせいで、じわじわとストレスが溜まるので、リンクス王にだけは、私が作った物は差し入れしていませんが。何か?!

 この件についてはショウ様も怒り心頭でいるので、私の王へは差し入れをしないという、地味なストレス発散を許可してくれています。

 ショウ様も「美味しい、美味しい」と、王の目の前で私の差し入れを食べて、ドヤ顔であおって、王の悔しそうな顔を見ると、少しだけ溜飲が下がると言っていますけど。

 私達の結婚を許可してくれれば、義父になる王様にも差し入れするつもりでいるんだけど…。はぁっ。

 王様も大人げないから、こっちも地味に抵抗しているっていうか、結婚させてくれと、ショウ様も周りからも言っているのに、リンクス王だけが頷かないっていうか、王命で阻止してくるので、早く再々婚をしてくれと思っています。

 私の膝の上に、黒大猫になったクーちゃんが子猫に擬態している姿でくつろいでいます。

 先程、私専属のメイドから聞いた話を思い出して、溜め息をついてしまいました。

『にゃう?(どーしたの?)』

「クーちゃん、また王様がお見合いをしたんだけど、ダメだったらしいの。」

『にぃい?(それで溜め息を?)』

「王様がお見合い相手の女性に断った理由がね、「処女おとめでない」からなんだって。」

『うなんうにゃ!ぷにゃははっ!(馬鹿な!自分だって、王太子という息子がいるし、経験済みなんでしょ?ふははっ!)』

「ミュン様と初夜を過ごさなかったのは王様なのに、相手の方にも失礼な理由だなって思って、つい、溜め息をついてしまいました。」

『ふにゃんにゃうん。(あたいもユーイの溜め息の理由に納得。)』

「身勝手過ぎるよね。」

『にゃうんにぃいー、ぐうぐるにゃん。(そーだね。でも、王の番でもないし、お見合い相手も、王様のお金で贅沢な暮らしが出来ると思っていたから、破談で良かった筈。)』

「うわ!クーちゃん、凄い!相手も誰だか分かってるんだ。凄いなぁ。」

『うるるっ!うるんっ!(褒められちゃった!えへん!)』

「明日も、王城でお見合いがあるって聞いたけど、誰の見合いなのかは教えてくれなかったな。」

『にゃんにゃんにゃううん。(ショウ王太子でないから、放っておけばいいよ。)』

「ショウ様に関係ないなら良いや。クーちゃんの言う通り、知らないで関わらないようにするね。

 明日も王妃教育で忙しいし。」

『……。(明日は王太子にもユーイにも関係ないから、あたいは次世代の大事な2人を守れるように、警戒だけしておこうか。)』

「クーちゃん?寝ちゃったのかな?クーちゃん用のバスケットベッドに運ぶね。」

 寝たふりをして、バスケットで出来た子猫用ベッドに寝かされた黒百合は思った。何か食べてから、寝たふりをすればよかったと…。あとで、絶対に、城の厨房につまみ食いをしに行こうと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...