ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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獅子国編

白獅子(てる)旅日記1

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 500年ぶりの外は、あんまり変わっていなかった。文化や歴史はともかく、人の営みが変わっていない事に安堵した。

「白光が言っていたから、容姿や色を変えたのだけど~、何でこんなに人間の女が寄って来るんだろう?」

 白獅子と言う位だから、全身が白い。目だけは赤色だが。それを前もって目立たない様にと白光に言われていた。
 だから、髪を黒大猫の様に黒くして、顔も目を細く黄色にして、背も低くしたのだ。白輝は不思議に思っているだけだったが。

 だが、白獅子の元々の容姿が凄く整っていて見目も良かったので、少し容姿を変えただけでは、まだまだ充分、その辺では見当たらない程の美青年であった。

 そんな美青年が歩いていれば肉食系の女性が付いて回る、自分のモノにしようとして白輝から目を離さない様にして、白輝を逃さない様にと狙っていたのである。

 その女性達の他にも、見るだけで目の保養になると思った老若男女があちこちから湧いて出てくるのだから、しまいには白輝も身動きが取れなくなり、囲まれた状態で立ち止まらざる得なくなってしまったのだった。

 白輝は溜め息をつくと、魔法で姿を少しずつ認識出来ぬようにしてから、人の少ない森へ転移して逃げたのであった。

「白光の言っていた事を信じるしかないか。認識疎外の魔法を常にかけておかないと、黒大猫に逃げられてしまうし、人に囲まれて動けなくなるって言われていたなぁ。」 

 そこで、おもむろに真っ黒い表紙の日記帳を出してペンで記入していく。

「7053年10月16日。晴れ。丁度いい気温。

 認識疎外は常に発動する。白光の忠告は適切。黒大猫の情報を探る為、まずは聖獣の村へ行く事にする。」

 日記帳を閉じて、インベントリ(異次元空間収納)へ日記帳とペンをを放り込んだ。

 インベントリの中には、今まであちこちへ行った際に手に入れた物、買った物、白光が用意してくれた食料や着替えも入っているだろう。時間経過もしないので、中のモノが腐ったり壊れたりしないのだから。入れたままの状態を保つので、温かいモノは暖かいまま、冷たいモノは冷たいままで維持されるのだ。国を支えて生きる聖なるけものだから、女神さまが優遇してくれているのだ。

 聖獣の村を目指して、白輝は歩き始めた。認識疎外魔法のおかげで、今度は快適に移動が出来ると白輝は喜んだ。

 その姿を見ている女神が呟いた。

『日記帳を書く様にと聖獣達を躾けておいて良かったわ。
 白輝の今後の予定や行動が分かるし、その情報が私の手に入るからな。』

 女神の作った日記帳には、細かく書く様にと聖獣達は躾けられている。その日記帳の内容を女神だけが閲覧出来るのだ。ただし、女神だけが閲覧出来る事は聖獣達は知らないので、日記帳には本音や予定を書いているのだった。

 女神も渡す聖獣の好みに合わせて日記帳を作り、様子見をする為に手渡しをしているのだった。

『さてさて、白光の日記帳は、と。…ふむふむ、白炎皇帝の計画が出来て、手配されたと。私の所へ届いた報告書通りだな。

 白輝がいないと仕事がはかどると書いている。白輝の様な仕事をしない上役よりも、仕事を手伝う弟子が欲しいのか…。
 予定では白星が皇帝になるタイミングで交代させるつもりであったが、ふむ。早める都合も出来たようだな。』

 女神に覗かれている事を聖獣である白輝は気付いていない。

 その白輝は、「聖獣の村はどっちだったっけ、なにせ外に出たのは500年振りだから何処にあったのかを忘れてしまったなぁ…。白光に聞くか。」とお気楽に思っていた。

『おーい!白光~!聖獣の村って何処にあったっけ?』と、聖獣が使う念話で話しかけた。

 あ、何か大きな物音がした。歩いていた白光がこけたのかもしれないな。

白輝てる様~!ビックリして転んじゃいましたよ!
 忘れちゃったんですか~!おいらもビックリするような事を言わないで下さいよ~、もう。
 獅子国とラーン・ビット国とガオン・ロード国の国境の森の奥深くですよ~。』

『悪い悪い、しばらく振りでド忘れしたんだよ。白光も、留守番を頼むね。』

『は~い。白輝様も拾い食いをしちゃだめですよ。おいらもう、拾い食いで寝込んだ白輝様の看病をしたくないんすから。』

 白光の言う拾い食いは、私が700年前に美味そうだと思った綺麗な石を拾い食いして倒れた時の事を言っている。
 女神さまに薬を作ってもらい、2月も寝込んだ時の事を思い出して言っているんだと思う。

 全身が真っ黒になって、その後、まだら模様にもなったっけ。その姿を見た女神さまと白光が顔色を青くしていたなぁ。

 懐かしい事を思い出して、懐かしい気持ちのまま、干し肉をかじりながら歩いて行く。

 とにかく、聖獣の村の場所が分かって、ホッとしたよ。のんびりと行こうかな。と独り言を呟いて歩いて行った。
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