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獅子国編
白角と赤穂
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儂のいる牢は、いつも鍵はかかっていないし魔法も使えるという、便宜上、儂が牢の中にいるだけなのだから。
赤穂との時間を邪魔されたくなくて、人が入って来れない様に魔法で防音やら侵入禁止の魔法をかけたのじゃが、女神ならば、容易く解除出来るだろうと思っておる。
女神の望み通りにと言うのは癪じゃが、儂が出来る事と言ったら、赤穂を抱き潰す事で幸せを感じてもらうだけであった。そうすれば、赤雪の噂通りの奔放過ぎる女だと言う噂を真実たらしめる事になろう。
「噂通り、赤雪を男好きって事にしておかないと今後、不味いでしょ。
白炎皇帝が自分は色に狂っているのに、赤雪には貞淑でいて欲しいと思っていたの。それに赤雪は反発して、その逆の女を演じていたのよ。
白炎の嫌う方法である身体を使って男を引き付ける事で、赤雪は自分の味方を増やしていっていたのよ。
だから、あなたが許せる様になったら、私の分も赤雪に会いに行ってやってちょうだいな。
女神さまの慈悲で、昨夜は下の娘達にも会えたのよ。ふふっ。」
「あの娘達も驚いていただろう?」
「ええ、生きていたのも知らせていなかったから、一人ずつ会って、赤雪の説明と重圧と責任と白炎のせいで真実とは違うと過去視も視せたのよ。だから、説得と説明をするのに一晩掛かってしまったわ。」
「納得していたか?」
「散々、泣かれたし、叫んで止められたわ。納得は渋々したと思うわ。
大人だから感情では納得出来なくても、ね、あの娘達も親だから。そのうち、私の気持ちを解ってくれると思っているわ。」
「そうか。では、用意はいいかな?赤穂。」
赤い顔で頷く赤穂。
「角様、お願い致しますわ。でも、久しぶり過ぎて、最初はツラいかもしれないので、優しくお願いしますわ。私ったら角様しか知らないんですもの。」
久しぶりの妻との再会なのに、妻には煽られてしまってばかりでどうしようもない。だが、明日には生きている赤穂と二度と会えなくなるのだ。分かってはいるが、心は納得をしていない。それを隠す様にしているだけなのじゃが。
「久しぶりなのに、煽るでない。優しく出来ないだろうに。若い者みたいにがっついたら、済まん。」
赤穂には、おどけて答えたが、儂の気持を込めて、赤穂を抱き潰そうと決意したのじゃ。
儂が代われるものなら代わってやりたいがの、赤穂がそれを許さないだろうと知っているのじゃよ。
…一晩、赤穂を抱き潰す為に頑張った。赤穂はまだ眠っておる。だが、見つからないうちに赤雪の代わりの赤穂を戻さねばならない。
このまま赤穂を連れて逃げてしまおうかと何度も思ったが、女神からは逃げられないのも承知しているのだ。
赤穂が逃げて欲しいと一言でも言ってくれれば、儂は自分の命と引き換えに女神に赤穂の命乞いをしてでも、赤穂を助けるだろう。
だが、赤穂は儂の腕の中では幸せだと愛しているとしか言わなんだ。助けて欲しいという素振りもみせんかったわい。
だから儂は、せめて赤穂が苦痛を感じずに逝ける様にと、女神へ頼む事だけしか出来ないのだ。それも赤穂が起きないうちに頼まなければ。
膝を床につき、天を見上げて手を組み、ひたすら祈った。
「女神さま、赤穂は儂に一言も助けを求めなかった。せめて、苦痛を少なくして逝ける様にしてもらえんだろうか…。」
『あい、分かった。長年に渡って計画していたからか、赤穂の決意は揺るがないからな。』
「ありがとうございます。次の生で赤穂が幸せに暮らせる様にお願い致します。」
『そうだな、赤穂の次の生には配慮をしようかとは思っていたんだが、誰かが赤穂の幸せを願わなければ実現出来ぬ。女神の私でも無秩序な勝手は出来ぬからな。』
「儂がどうなろうと構いません。赤穂をお願い致します。」
『白獅子のせいで、その歪みが皇帝経由で赤雪にいって赤穂が身代わりとなったのだ。
だから、白角、赤穂との幸せな生活を長く出来なかったであろう。
おぬしは宰相としても、白獅子の玩具にされた白炎の後始末で苦労を掛けていたからな。
ふむ、次の生ではおぬしにも配慮をしてやろうと思っておるぞ。
今の白獅子がこれ以上の迷惑をかけぬよう、白星が皇帝になる頃までには次代と交代をさせるつもりでいる。
おぬしの孫の白星にも、今の白獅子と会わぬように私が手を打っておこう。案ずるでないぞ。』
「…ん、女神さま?!」
儂の話し声で起きてしまったのじゃろう、赤穂の事を頼んでいたのを隠して、孫の心配をしなくていいと告げておこう。
「赤穂、女神さまがの、白星にも配慮をして頂けるそうじゃ。心配しないでいいと言われていたんじゃよ。」
「…なら、このまま、角様に起こされたと安心したままで、ナーオ・ロウの牢へ戻して下さいと女神さまにお願い致します。」
『赤穂の願いを聞き届けよう。白角も、別れを済ませられたであろう。』
赤穂が寝台から消えた。
『白角よ、赤穂の遺体を私が今日の夜に届けよう。そこで、今生での別れを一晩かけてするがいい。赤穂と共に屋敷へ帰る事を赤穂の視た未来視で聞いておるからな。では夜には、な、白角よ。』
女神の声が消えた所で、儂は泣いて泣いて、大声で泣き叫んだ。赤穂の前では泣けるに泣けなかったのだ。男の意地でもあった。赤穂よりも辛くない儂が泣いてしまったら、赤穂が余計に辛くなってしまうからじゃ。
今は赤穂と自分の為に泣いて、この気持ちをこの感情を出し切ってしまいたいだけじゃ!
その夜、眠っているだけにしか見えない赤穂の遺体が儂の寝台にいつの間にか横たわっていた。白星も処刑日を知っておったのだろう、儂の入っている牢の中へ赤穂との別れをしにやって来た。
白星も何かしらを感じていたのだろう、魔法で寝台を運んで来て、その夜は祖父母と孫の3人で並んで眠ったのだった。
赤穂との時間を邪魔されたくなくて、人が入って来れない様に魔法で防音やら侵入禁止の魔法をかけたのじゃが、女神ならば、容易く解除出来るだろうと思っておる。
女神の望み通りにと言うのは癪じゃが、儂が出来る事と言ったら、赤穂を抱き潰す事で幸せを感じてもらうだけであった。そうすれば、赤雪の噂通りの奔放過ぎる女だと言う噂を真実たらしめる事になろう。
「噂通り、赤雪を男好きって事にしておかないと今後、不味いでしょ。
白炎皇帝が自分は色に狂っているのに、赤雪には貞淑でいて欲しいと思っていたの。それに赤雪は反発して、その逆の女を演じていたのよ。
白炎の嫌う方法である身体を使って男を引き付ける事で、赤雪は自分の味方を増やしていっていたのよ。
だから、あなたが許せる様になったら、私の分も赤雪に会いに行ってやってちょうだいな。
女神さまの慈悲で、昨夜は下の娘達にも会えたのよ。ふふっ。」
「あの娘達も驚いていただろう?」
「ええ、生きていたのも知らせていなかったから、一人ずつ会って、赤雪の説明と重圧と責任と白炎のせいで真実とは違うと過去視も視せたのよ。だから、説得と説明をするのに一晩掛かってしまったわ。」
「納得していたか?」
「散々、泣かれたし、叫んで止められたわ。納得は渋々したと思うわ。
大人だから感情では納得出来なくても、ね、あの娘達も親だから。そのうち、私の気持ちを解ってくれると思っているわ。」
「そうか。では、用意はいいかな?赤穂。」
赤い顔で頷く赤穂。
「角様、お願い致しますわ。でも、久しぶり過ぎて、最初はツラいかもしれないので、優しくお願いしますわ。私ったら角様しか知らないんですもの。」
久しぶりの妻との再会なのに、妻には煽られてしまってばかりでどうしようもない。だが、明日には生きている赤穂と二度と会えなくなるのだ。分かってはいるが、心は納得をしていない。それを隠す様にしているだけなのじゃが。
「久しぶりなのに、煽るでない。優しく出来ないだろうに。若い者みたいにがっついたら、済まん。」
赤穂には、おどけて答えたが、儂の気持を込めて、赤穂を抱き潰そうと決意したのじゃ。
儂が代われるものなら代わってやりたいがの、赤穂がそれを許さないだろうと知っているのじゃよ。
…一晩、赤穂を抱き潰す為に頑張った。赤穂はまだ眠っておる。だが、見つからないうちに赤雪の代わりの赤穂を戻さねばならない。
このまま赤穂を連れて逃げてしまおうかと何度も思ったが、女神からは逃げられないのも承知しているのだ。
赤穂が逃げて欲しいと一言でも言ってくれれば、儂は自分の命と引き換えに女神に赤穂の命乞いをしてでも、赤穂を助けるだろう。
だが、赤穂は儂の腕の中では幸せだと愛しているとしか言わなんだ。助けて欲しいという素振りもみせんかったわい。
だから儂は、せめて赤穂が苦痛を感じずに逝ける様にと、女神へ頼む事だけしか出来ないのだ。それも赤穂が起きないうちに頼まなければ。
膝を床につき、天を見上げて手を組み、ひたすら祈った。
「女神さま、赤穂は儂に一言も助けを求めなかった。せめて、苦痛を少なくして逝ける様にしてもらえんだろうか…。」
『あい、分かった。長年に渡って計画していたからか、赤穂の決意は揺るがないからな。』
「ありがとうございます。次の生で赤穂が幸せに暮らせる様にお願い致します。」
『そうだな、赤穂の次の生には配慮をしようかとは思っていたんだが、誰かが赤穂の幸せを願わなければ実現出来ぬ。女神の私でも無秩序な勝手は出来ぬからな。』
「儂がどうなろうと構いません。赤穂をお願い致します。」
『白獅子のせいで、その歪みが皇帝経由で赤雪にいって赤穂が身代わりとなったのだ。
だから、白角、赤穂との幸せな生活を長く出来なかったであろう。
おぬしは宰相としても、白獅子の玩具にされた白炎の後始末で苦労を掛けていたからな。
ふむ、次の生ではおぬしにも配慮をしてやろうと思っておるぞ。
今の白獅子がこれ以上の迷惑をかけぬよう、白星が皇帝になる頃までには次代と交代をさせるつもりでいる。
おぬしの孫の白星にも、今の白獅子と会わぬように私が手を打っておこう。案ずるでないぞ。』
「…ん、女神さま?!」
儂の話し声で起きてしまったのじゃろう、赤穂の事を頼んでいたのを隠して、孫の心配をしなくていいと告げておこう。
「赤穂、女神さまがの、白星にも配慮をして頂けるそうじゃ。心配しないでいいと言われていたんじゃよ。」
「…なら、このまま、角様に起こされたと安心したままで、ナーオ・ロウの牢へ戻して下さいと女神さまにお願い致します。」
『赤穂の願いを聞き届けよう。白角も、別れを済ませられたであろう。』
赤穂が寝台から消えた。
『白角よ、赤穂の遺体を私が今日の夜に届けよう。そこで、今生での別れを一晩かけてするがいい。赤穂と共に屋敷へ帰る事を赤穂の視た未来視で聞いておるからな。では夜には、な、白角よ。』
女神の声が消えた所で、儂は泣いて泣いて、大声で泣き叫んだ。赤穂の前では泣けるに泣けなかったのだ。男の意地でもあった。赤穂よりも辛くない儂が泣いてしまったら、赤穂が余計に辛くなってしまうからじゃ。
今は赤穂と自分の為に泣いて、この気持ちをこの感情を出し切ってしまいたいだけじゃ!
その夜、眠っているだけにしか見えない赤穂の遺体が儂の寝台にいつの間にか横たわっていた。白星も処刑日を知っておったのだろう、儂の入っている牢の中へ赤穂との別れをしにやって来た。
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