ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ガオン・ロード国編

ガオン・ロード国の王城で

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 我が国ガオン・ロード国は、長年、先代の聖獣様のおかげで、密偵やら、スパイや影が、国内へ入る事が無かった。

 先代の聖獣様が、国内へ入った途端の不審な者達を元の国へ強制転移をしていたからだ。そのおかげで、国内はある意味、平和だった。

 その先代の聖獣様は、年若く、番のいる女性だけへ人間の姿になり、言い寄っていたのだ。

 それも名誉騎士団長と言う、我々が先代聖獣様が人間の姿で出歩くのに困らない様にと与えた役職を盾にして、相手の番の男性を威嚇し、その番のいる女性達を追いかけると言う大変困った悪癖を持っていたのだ。

 だからか、番の出来たものや、番のいる男性陣達は、先代の聖獣様に自身の番の女性を紹介するとか目を付けられない様に隠すとかしていたので、我が国では、女性をひっそりと紹介すると言う暗黙の了解でのルールが出来上がってしまったのだった。

 先代様が女神様直々に引退をさせられて、今代様が新しく聖獣様になられても、ご自身の番を側から離さずにいたので、我々も中々、警戒を解く事が出来なかった。

 それでも、ナーオ・ロウ国からの王太子ご夫妻の訪問を国としては断る事も出来ず、それをうまく活用出来ないかと、もがいている最中なのだ。

 他国の様に活躍したいと思っている女性達が、先代様の引退後に声を上げ始めたのだ。私達、国の役職についている者達もそれに期待しているが、今代の聖獣様が警戒心をあらわにしているので、どうしていいのかを悩んでいる。

 我が国の王城で、我が国の慣習に合わせて、ナーオ・ロウ国の王太子様達がご挨拶をなさって下さってから、王太子妃様をエスコートして、再び、私達の前にいらして下さった。

 …な、なんと言うか、可愛らしいのに気品と色気があって、目が奪われる。それを見守る王太子様の優しい目線が、お互いを信頼していると物語っているのだ。

 …我が国の王太子ご夫妻は、王太子の後ろに王太子妃が隠れながらこちらを見ているような姿で、王太子の隣に立って歩いている姿ではない。

 宰相と言う立場の私でも、この光景の対比には、情けなさが込み上げた。この国がこのままでいい訳がない。女性達の活躍の場を調えなければと、決意を新たにしたのだ。子の紹介が終わり次第、部下を動かして、王達を説得しなければと。

 王や王妃も何かしらを感じてくれればいいのだが…。

 王太子ご夫妻もナーオ・ロウ国の王太子様王太子妃様との交流から、何かしらを感じて学んで欲しいとも思っている。

 今代の聖獣様がユーイ王太子妃様の持つ、編み籠の中のユーイ様の飼い猫を見つめて目を離さないのだが、どうしたのであろうか?はてさて、聖獣様は猫がお好きだったであろうか?後で、聞いてみよう。

 今は、女性達の活躍の場を調える事と、国交樹立への話し合いをしなければ。

 ほうほう、ナーオロウ国の王太子様ご夫妻の後ろ盾として、後から王太后様と伯爵様が合流されるとな。ああ、ラーン・ビット国内の後始末を見届けする役目を終えられてから、こちらへいらっしゃるからか。

 伯爵殿が、貿易と国交についての決定への最終権限をお持ちなのか。なるほど。それまでは、内容を精査するのか。

 次代宰相と名高い宰相補佐殿だったら、問題はないであろう。騎士団の方も、訓練がてら、視察をしたいとな。それも良いだろう。王も王太子もその許可を出しているしな。我が国の騎士団もいい刺激になるだろう。

 そうこうしている間に、挨拶や今後の事の大まかな話を終えて、お客人達を客間へ案内する様にと王が告げている。

 私達はこれから、この良い機会を逃さないように、話し合いをせねばならない。王もこちらをを見て、頷いている。

 それにしても、今代様がソワソワしているのは珍しい。おや?ナーオ・ロウ国の王太子様ご夫妻を茶に誘っているぞ?飼い猫も一緒に、か。やっぱり猫好きでいらっしゃるのか?

 お客人達が案内され、私達はこれから話し合いをするのだと今代様に告げると、『私にも色々と立場がありましてね、お客人との茶会をしてから出ないと動けません。話し合いの結果をお知らせ下さい。…叱られてきますよ。はぁ…。』という、最後の方に謎の言葉を吐いて、謁見の間から出て行きました。

 ユーイ王太子妃様の飼い猫を欲しいが、断られるのを承知で頼むのだろうかと考えたが、それよりも話し合いの方が私達の国には大事なので、余計な考えを追い出して、話し合いへとおもむいた。


 ガオン・ロード国の今代の聖獣となったクーマクは溜め息を吐いた。

『…まさか、他国の今代様が我が国まで出向いて来るとは思わなかったよぉ…。愛し子の事が心配で女神さまの要請で一緒に動いているんだろうなぁ。俺、怒られるんだろうなぁ。はぁー。』

『番のあたしも一緒に怒られてあげるからさっ、落ち込むんじゃないよっ。あたしも付いてるじゃんかっ。』

『ううっ、ベーアだけが俺の姫だわぁー。』

『照れんじゃんかっ、クーマクってばさっ。』

『茶会の用意を次代とその弟子達には頼んでおいたから行こうかぁ。はぁ、頑張るかぁ。』

 謁見の間から聖獣の今代様とその番が出て行くと、その部屋の後片付けをする者だけが謁見の間にいたのだった。
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