ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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獅子国編

白炎、変わります!

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こうって呼ばれるの、久しぶりです。ウキウキ!』

「そうか。呼び捨てで構わんのか?」

『愛玩動物にしか見えない私を「様付け」で呼ぶと、頭のおかしい人扱いにされますからね。いいんじゃないでしょうか。』

 ウキウキと子猫が我の腕の中から話しかけてくる。我以外には、「にゃあにゃあ」と鳴いているようにしか聞こえないそうだ。

 小声で話さなければ!でないと、一人でぶつぶつと話すだけの怪しい人に見えるだろう。

 仕方がないのだ、次代様から預かった弟子をこうと呼ぶようにと、次代様に言われたのだから。

 薄茶色の縞々の子猫に見える様にしているが、次代様の弟子だから、今代の白獅子てる様や次代の白獅子ひかり様のような白獅子だろうと思っている。

 白獅子様や他国の聖獣様達は国が繁栄する様にと、王家やその血筋を守るのだ。

 皇帝の血筋である我の命を守る為にと、次代様からの命で、洸が我のお目付け役になったのだ。我に護衛をあからさまに付けたりすると、出会ったミュンに警戒されてしまうかもしれないからな。

 その洸が「面倒だから、時間短縮しましょう。」と言って、ナーオ・ロウとの国境近くまで魔法で転移をしてくれたので、我は楽であったがな。

『ここからナーオ・ロウへ入るんですか。あ!炎は話さないで頷くか、首を横に振るかで返事をして下さい。女の恰好した人が男の声で話すと、違和感アリアリ!ですから。』

 あー、そうだった。用意した身分証も女性用と男性用と、予備で従者用と侍女用を用意しているけれど、どうしようか。

『次代様から、性別を変えられる指輪を預かって来ましたんで、どうぞ。国境に着いたら渡す様にと言われていました。炎、忘れていて、ごめんね、ごめんね。』

「周りに人がいないから話すが、性別を変えるって言うのは、外見を変えるだけか?」

『そうです。中身は男の炎のままです。でも、炎の外見や声が女性になるんですよ。便利でしょ?髪の色も瞳の色も私が変更出来ますから、何色にしますか?チェンジ、チェンジしましょう。』

「しばし、考えさせてもらう。」

 我だと分かりにくい色が良いな。今は白い髪に黄色い目だからな、何色にしようか。

『炎、炎、試しに色を変えてみたらいいんですよ。私も従者に化けますから。色々と話し合いましょう。

 人型になるのは力を(いつもよりかは)使うし、人のマナーを守るのが面倒なので、日頃は子猫の姿で過ごします。

 炎、まずは何色にしましょうか?』

「試しが出来るのか。では、指輪をはめて…。」

 指輪をはめた途端、外見が女性化したようだ。服は女性物だったのが幸いであった。魔道具で、サイズ調節機能付きの服に着替えておいたのが良かったようだ。

『おおー!美女ですなぁ。』

 洸も美女だと褒めてくれた。

『では、見易いようにしますか。』

 洸が全身が映る鏡を目の前に魔法で出して来た。鏡はちゅうに浮いている。

 ほぉ、結構な美女になっているな。今は亡き母に似ているのは親子だからだろう。
 でも、母と同じ色(金髪、緑の瞳)にはしない様にしよう。万が一、父に出会ってしまい、母の代わりにされては堪らんからな。

「では最初は、緑色で深緑の瞳で頼む。」

 洸が我の色を変化させた。うーむ、悪くない。赤やピンク色にしたら、男共が寄って来て、我の色気でマズい事態になりそうだしな。

「次は濃紫で、黒い瞳で頼む。」

『さっきより、こっちの色の方が良いです。落着きがあります。』

「口調までは変えられないが、女声だと口調も柔らかく聞こえるな。」

『「我」と言い始めたのは皇帝になってからだと次代様から聞いています。以前お使いになっていた「私」に戻せば、女性でも男性でも違和感はありません。

 んー、私も、人型の時は、「僕」と言うようにしましょうか。人型になります。』

「洸も、なかなかであるな。従者でも騎士でも大丈夫そうだ。ちっともおかしくないではないか。」

 人型になった洸は、17,8才の美青年に見えた。髪も目も群青の様な青色だったが、我に色彩を合わせたのであろう。

「炎、褒めてくれて、ありがとう。炎は未亡人という事にしましょう。だから、僕は炎を奥様と呼びますね。合わせて身分証を書き換えますので、僕に身分証を渡して下さい。」

 身分証を洸に渡すと、絵姿と身分証の内容が今のこの姿に沿うようにと変化していった。

「炎、身分証の名を「苑」と書き換えておいた。
 これで、「えん」と呼ばれても大丈夫。

 裏には、炎の持っている公爵位での未亡人と言う後押しがされているから、変な奴が来ても身分で追い払えるよ。

 僕の名はどうしようか。…子猫が「洸」、従者が「草」、侍女姿の時は「花」にしておこうか。

 炎、気付いた者が遅れて侍女を送ってきた事にすればいいよ。

 生活が不便だからと、侍女が来るまでの間に色々と相談すればいいよ、それで、ミュンとの交流が持てるだろう?」

「屋敷は前もって借りてある。」

「ナーオ・ロウへ無事に入国したら、魔馬車か魔馬を借りましょう。

 新しいものが好きな未亡人があちこちを巡っていると言う設定で大丈夫でしょう?」

「草、助かる。馬車を借りるつもりでいたが、設定までは考えつかなかった。我もまだまだであったな。」

 少し歩くと、国境に必ずある関所が見えて来た。靴はショートブーツだから問題なく歩ける。従者の草と2人で関所へ入った。

 旅用の軽いドレスとフード付きコートを身に着けているからか、疑われなかった。
 ナーオ・ロウへは夫を亡くしたばかりで、気晴らしと療養を兼ねて行くのだと悲し気に告げると、関所の者達に同情をされたのだった。

 同情ついでに魔馬車を使いたいのだと言うと、魔馬車を呼んでもらえる事になった。

「美女は得ですね。苑の気を惹きたくて、皆、親切にしているんですよ。お礼を言ってあげればいいだけですから、愛想よく頼みます。」と草に小声で言われたので、「皆様、親切にありがとうございます。」と微笑んでおいた。

 何人かの男共が赤くなりながらも、我への茶の用意をしてくれたので、飲んで待っていた。

 その間に、従者である草が全ての手続きをしてくれたのだったが、手続きも他の関所利用者よりも優先してくれたそうだ。
 楽である。

 次代様の弟子を付けてくれた事での心遣いには感謝の一言であった。

 もしこれが一人で全てをしなくてはならなかったのだとしたらと思うと、ぞっとしたのであった。

「苑様、もうすぐ魔馬車が到着するそうです。しばしお待ちを。」

「草、ありがとう。そなたがいなければ、私は途方に暮れていたでしょう。」

 …そう言えば、人に感謝をしたのも久し振り過ぎるな。前回がいつであったかも思い出せぬが。

 関所の者から魔馬車が到着したと聞いて、草の手で魔馬車に乗り込んだ後は、この休暇を作るのに我でしか出来ない仕事を片付けていて、この20日程、たいして寝ていなかったので眠ってしまったが。

 白星ではまだ出来ない仕事であったからな。と思いながら、睡魔には勝てずに寝てしまった。

 それも、草に「着きました。」と声をかけられるまで寝ていたようだがな。
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