ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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獅子国編

白炎、久しぶりに父と会う

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 魔馬車が着いた場所は、ナーオ・ロウ国にある獅子国の皇帝である者が引退後に名乗る、代々引き継いできた公爵家の別邸であった。

 我が何も言わずとも洸が魔馬車で我をここまで連れて来たので、さすが白獅子様だと感心していた。

 が、魔馬車が着いたら、屋敷の中から父である前皇帝と父付きで仕事をしていた、父と一緒に引退したと思っていた見慣れた執事が出て来たのであった。

 そうか、白獅子様から父上に色々と話がいってしまったのかと、出迎えてくれた父のニヤニヤ顔で気付いてしまったが、そ知らぬふりをしてみた。

「坊ちゃま、お久しぶりでございます。
 皇帝とバレない様にする為とは言え、女性化する魔道具までお使いになるとは思いませんでした。執事の薄灰でございます。憶えていらっしゃいますでしょうか。」

 我をいつでもどこでも子ども扱いする執事の灰だったなと思い出しながら、屋敷の中の応接間へと案内をされた。

 父と私、薄灰と従者姿の草しか居ない。前もって、人払いがされていたのだろう。

 応接間へ入って椅子に座ってから、仕方なく、本当に仕方なく、薄灰へ話しかけた。

「さっきはすぐに思い出せなかったのだが。久しぶりだな、灰が父と仕事をしていた事を憶えているぞ。」と答えておいた。

 それよりも、獅子国にいた頃とは違う父の事が気になってしまった。その父から話しかけられたのだが。

えん、ここに来るまでの詳細は次代の白獅子様から聞いている。久しいな。元気な様で良かった。」

「父上もお元気になられたようで、良かったです。」

「まぁな。大分だいぶ時間も経ったし、皇帝の妃は長生き出来ぬ事は歴史からも知っておったのだ。だから、自身で妻をとむらえたし、あれから時間も過ぎて、いい加減に諦めもついたのだ。

 赤雪殿も結局は、貴族共に使い潰された上、処刑されたのであろうしな。」

 父にも専用の密偵がいるだろうが、我を追及しないでいてくれると言う事を示したのだろう。

 真っ白なけんぜんなままでは、王座を維持出来ないのだから。

「白星が居るおかげで、我も此処まで来れました。我しか出来ない仕事を片付けて来たので、1月ひとつき半はこちらにいられます。

 白星には、前宰相の白角が相談役としてついているので、まぁ大丈夫でしょう。白角も孫の白星を可愛いと思っているようですから。」

「なら、えんは羽を伸ばせばよい。」
「はい。」

 本当は違う目的なのだが、言わないでおこう。

「次代様から「そう」が弟子だと聞いている。普段は飼い猫の「こう」として扱うようにとな。
 世話をしなくても御自身で世話をするようだから、心配ないと言われた。だから、飼い猫としての待遇を良くしておくだけしか出来ないだろう。」

 洸がいつの間にか子猫の姿になったのだろうか、子猫の姿で我の足にすり寄ってきた。我の膝の上に、一旦、魔法で浮いてから乗ってきた。

「んにゃあ。」と鳴いたように父には聞こえただろうが、我には『その通り!』と聞こえたのだった。

 こうはそう返事をすると、『女性の膝の上が柔らかくていいから。』と言い捨てて、我の膝の上で居眠りをし始めたのだった。

「苑、夜の湯浴みを済ませて男の姿の炎に戻したら、灰に言伝を頼むがいい。久し振りに親子で酒を酌み交わそう。」

 珍しい誘いだが、父と酒を酌み交わすのもいいかと、皇帝になった我は思った。

「ええ、灰に用意を頼みます。男の姿を他の者に見せると皇帝だとバレるので、湯浴みが済んだら、灰に言付けます。」

「そうか。用があるので、薄灰に案内を頼んでくれ。」と、父は今夜、知り合いとの集まりがあるのだと言って、応接間から出ていったのだった。

 父の前だと、どうしても皇帝らしく話す事が出来ないな。父が皇帝だった事を思い出すからだろうか。

 ははっ、昔、皇太子だった時の話し方に戻ってしまうな。

 その後、薄灰の案内で、我は居眠りをしたままの洸を抱きかかえて、我が過ごす部屋まで連れて行かれたのだった。

 案内された部屋の中へ入ると、洸用の猫が入る大きなカゴに柔らかい布を敷いた物がソファに置いてあった。ここに洸を寝かせればいいのかと、洸を入れた。よく居眠りをしている。ただの子猫にしか見えないのにな。

 我もフード付きコートを脱ぎ、クローゼットの中にあった室内用のドレスに着替えて、脱いだ服にキレイになる魔法をかけてから、ブレスレットにしまったのだった。

 それからは薄灰を呼んで、屋敷の中を案内してもらってから、茶の用意をしてもらったのだった。

 茶を飲みながら、屋敷内を見て回った事を何処に何があったのかを思い出していた。そこから、獅子国での事を考える。

 皇帝の過ごす皇宮では、のんびりも出来ず、安穏としていると暗殺されてしまうので、常に緊張を強いられるのだ。
 後宮には、皇帝である我しか男は入れないので、安心して過ごせたのだったが。女共を追い出した後の後宮の居心地の良さに、移住してしまおうかと本気で考えた事もあったしな、と、思っていた所だった。

『思い出し笑い?苑、何を考えていたの?教えて。教えて。』

 洸が起きて声をかけてきたのかと、洸の分の茶を淹れた。

『苑、ありがとう。寝て起きたら、喉が渇いてしまって困っていた所だったのです。』と、人型の草になった洸がソファで茶を飲み始めていた。

「洸が寝ている間にな、屋敷を案内されたので、何処に何があるのかを確認したのだ。その後で、獅子国での事を思い出していたんだ。」

「皇宮では緊張しかないからね。そっか、苦笑いしていたんだ。そっか。そっか。」

「今夜は父と、この部屋で酒を酌み交わす約束があるだけだ。」

「んん、酒は遠慮しておきましょう。と言うよりも、苦手なんです。苑と炎のどちらで酒を飲むんですか?」

「炎の姿の方だ。だから、この部屋で飲むのだ。」

「付き添いで、酒の肴だけはご相伴にあずかります。ナーオ・ロウは海の幸で出来た肴が美味いと聞いていますから。飲み物は、果実水で頼みます。」

「洸の性別は男でよかったのか?」

「うん、男。聖獣に産まれた時はどっちでもないけれど、弟子や次代の聖獣になる事が決まると、自身で性別が選べる様になるんだ。だから、今夜は男3人での酒盛りになるから、楽しみ。楽しみ。」

「薄灰も未来の聖獣様に酒の肴を出せる名誉を嬉しく思うと想像が出来る。良い肴が出てくるだろうて。」

「うわー!嬉しい。嬉しい。」

 茶器を片付けに来た薄灰に、今夜の酒盛りに洸も参加と告げたらば、目をギラギラさせて言うのだ。

「今夜の夕食から、洸様の好物も用意致します。何かご希望があれば、私に仰ってくださいませ。」と。

『魚が食べたい。』と言った洸の希望を伝えたら、夕食は魚がメインの献立になっていたのには笑えたが、洸は草の姿で、嬉しそうに夕食を食べたのだった。
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