ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
106 / 207
獅子国編

白炎、苑の姿で出会う

しおりを挟む
 昨夜の酒盛りで若干の二日酔いにはなったが、洸が治癒魔法をほどこしてくれたので、昼前には動けるようになった。

 昨夜の酒盛りの後にどうなるか不明だったので、朝食と昼食は要らないと言ってしまっていたのだが、それは早計であったと後悔したのだった。

 正直な身体は、二日酔いが治ったので腹が減って仕方がなかったし、洸も外で食べよう食べようと五月蠅く騒ぐしと、昼からは屋敷の程近くの街並みを従者兼護衛にした草を従えて、昼食を食べる為と暇つぶしに見て回る事にしたのだった。

 やたらと屋台で売っている食べ物を草が食べたがるので、我も空腹には勝てずに、一緒になって食べてしまった。

 財布の中の金は我が負担すると言って、我の稼いだ金から出しているが、その財布を持って歩いているのは草だったので、あちこちで色々な物を沢山買われてしまったのだった。

 中でも、草が気に入って食べたのは串焼きで、「焼き鳥」と言う名が付いていた。我が食べて気に入ったのは、「お好み焼き」と言う名の鉄板焼きの粉から出来た食べ物であった。

 皇帝だから、鉄板焼きで焼いた肉や魚、野菜を食べた事はあったが、粉を入れた物は食べた事が無かったのだ。お好み焼きの中のソースとマヨ何とかとの味わいも良く、食べた事がない物だったせいもあって、大層気に入ったのであった。

 買い物をする気が無いのに、屋台や店を覗く度に草が何かしらを大量に買うので、父上の屋敷に届ける様にと(草が)得意そうに頼んでいたのであった。

 それらが屋敷に届けられ、屋敷の皆もその恩恵にあずかって差し入れを喜んで食べていたと、帰宅後に薄灰から嬉しそうに報告があった。

 そのお陰かもしれないが、「苑様は貴族によくある驕り高ぶった所がなく、屋敷に勤める者達へ差し入れをして下さる優しい女性」だと言う噂をしているのだと草が聞いたと言っていたっけ。

 草の買い物好きがこうじた差し入れで、屋敷で我や草には細やかな気遣いがされるようになったが、嬉しい誤算であった。

 そんな調子で屋敷でも快適に過ごせ、昼から街を歩くのが日課になった頃、街で困っている女性に出会ったのである。

 その女性は、大量に買ったベリィ(日本で言う苺やベリー類を指す名前)や果物を持って歩く事が出来ずに、途方に暮れて、立ち尽くしていたのだ。

 その荷物を持つのを手伝いましょうかと、女性化をしている苑の姿で声をかけると、「助かります。よろしくお願い致します。」と返事が返ってきたのだった。

 大量の荷物を草が持って、(聖獣だから大量の荷物位では何ともないのだろうが)涼しげな顔で我や女性の後ろを付いて歩いて来ている。

 我がその女性と並んで歩いていると、その女性が自分の事を話し始めたのだ。

 その女性は、結婚してすぐ子が出来て、産まれてまだ1年も過ぎない子供達が4人もいるそうだ。

 その子供達がベリィを食べたがって泣き叫ぶので、夫が子供達を見ている間にと、急いで買い物に出て来て、色々な果物を食べさせてやりたいと欲張って買い物をしたのだそうだ。買ったのはいいが、気付いたら持って帰れる量ではなくなっていて、どうしたらいいのかと悩んで、困ってしまって立ち尽くしていた所に、我が声をかけたのだそうで。

「それはお困りでしたでしょう。家まで従者である者と一緒に届けますわ。夫ぎみもご心配なされているでしょうから、その説明も兼ねて、貴女に同行致します。」と我が言うと、

「申し遅れました。私はミーファと申します。没落貴族の娘でしたので、貴女様が位の高い貴族だと理解しております。助かりますが、家の方は大丈夫なのでしょうか?」とミーファさんが聞くので、

「私、相手を亡くしたばかりの未亡人ですの。苑と申します。心配するのは父と執事と、後ろにいる従者だけですわ。」

「!…私ったら、無神経な事を申しまして…。」

「いいえ、そんなに気を遣わないで下さいな。
 政略結婚で結婚した相手でしたので、亡くなった事はそんなにショックではなかったのです。私が薄情でしょ。

 結婚相手には情はありましたが愛情はなかったのです。相手も私を好きではなかったようで、愛人が何人もいたので、お互い様なんですの。」

「……。」

「貴族ならよくある話ですもの。
 ただ、思っていたよりも何だか私自身も気落ちしてしまったのです。それで今は、父の所に静養と気晴らしを兼ねて滞在しているんですのよ。

 私の子供達は成人してしまったし、だから、その可愛い子供達をお礼がわりに見せて頂けると嬉しいわ。」と、ニッコリと微笑んでみせた。

「苑様は、小さい子を見るのが久しぶりなんですね。」

「貴族って、自分の子以外で小さい子を見る機会があまりないから、本当に久しぶりなの。」

「ふふっ。苑様って子供みたい。私の身分も気になさらないし、私の事情を話したら、ご自分の事情まで話すなんて、ふふっ、貴族同士でしたら上げ足を取られますわよ。」

「あら、ミーファ様が私の上げ足を取られるの?」

「親切にしてもらった方に、そんな卑怯な事を私はしませんわ。」

「でしたら、歩いて喉が渇くので、どこかでお茶を飲ませて頂ければ宜しいわ。」

「私の家は酒場と飯処めしどころを兼ねている店、酒場 ハイルング3番店の住居部分ですの。夫がその店の店長をしているので、そこでお茶をお出し致しますわ。子供達も店のアイドルとして、仕事中ですから。」

「楽しそうなお店ね。従者の者も私も、そう言う気を遣わない所が好きなのよ。」

 ミーファ様と話しているうちに、ハイルング3番店の前に着き、私と草は、ミーファさんの案内で店の中に入っていったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

処理中です...