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獅子国編
失恋と本音1
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失恋をしたばかりなのに、その夜はよく眠って翌朝にはスッキリと起きれたのだ。そんな自分自身の適応能力に呆れて、苦笑したのだが。
我が皇帝だった父のたった一人だけの子供で、それなのに、次代皇帝となる白い獅子として生まれてしまってから、我を厄介に思った王族の傍系共が放つ暗殺者に狙われるのが当たり前だった幼少時。
その幼少時から、今代の白獅子様である白輝様の「気に入らなかったら、いつでも殺すから。」と殺気のこもった脅しがいつでも発動されかねない日常が足されていたので、生きていく為には適応するしかなかったのだ。それは、今代様が旅に出るまでの間、我の普通だったのだから。
聖獣様が皇帝やその血筋を守ってくれるのは、自身の玩具にする為ではないと知識では知っていたのだが、実際には、今代様の言う事を聞けない、白獅子様にとっての有益な者しか残さない、と言う圧迫のある生存競争だったのだ。
それから逃れる道を、そう、我々が女神さまに訴える術を持っていなかったからなのだ。
我々が女神さまに頼みたい事があると思ったら、その話を聖獣さま経由で女神さまに伝える事でしか、話が女神さまにいかないのだ。
もし、今代様が横暴だと訴えても、今代様からは女神さまに話がいかないばかりか、その話さえ揉み消されて、今代様が我を病死に見せかけて殺すのだろうと、容易にその手段が想像出来たのだから。
だから、白星には我の様になって欲しくないと、今代様の言う通りに動いていた我や赤雪から遠ざけたのだ。
その為に、女神さまからの加護があるであろうリュンやミュンに近付いたのだ。
女神さまに今の獅子国の現状を訴え出る為に。白星や白虹を生かす為に。
その願いも今はもう叶ったのだ。
我が皇帝としてしている仕事さえ、白星が覚えてくれるなら、皇帝を白星へ譲位し、引退して静かに暮らすのも良いのかもしれない。
ただ、一人でいるのは寂しいから、誰かに傍へいて欲しいと思った相手にミュンを選んだが、それも昨日で失恋してしまったのだ。
人生がままならないのは解っているが、平然としている様に取り繕う事だけが上手く出来る様になっただけだな。
朝食も、昨日のせいで食べる気にはならなかった。はぁ。我もまだまだだな。
落ち込んだ苑を慰めに、洸は子猫の姿で円尾足にすり寄っていった。
『なーに、落ち込んでるんですか?程度の良い美人とミーファさんに言われたから?』
「それもあるだろうな。ミーファには大した美人だとは思われなかった様だ。」
足元に居た子猫を抱き上げながら、炎は考える。
『苑、ミーファさんは王城で美形を見過ぎているから、極上かどうかを見極める目はない筈です。仕方のない苑ですね。ダメダメです。苑だって、美人は見慣れているでしょう?違う?違う?』
「そう言われればそうか。そこには我も気付かなかったわ。我も見慣れてしまっているから、どんな美人や美男でも気付かなかったのかもしれんな。」
『お詫びの品を送るって、昨夜、苑が寝る前に言っていた事はどうしましょうか?』
子猫に癒されながら、昨夜思い付いた事を実行する為に考えた。ブレスレットの中に何かあっただろうかと探してみる。
ドライソ-セージが出て来た。洸の尻尾と耳がピン!とした。
「ふふふっ、駄賃にこれを渡そう。洸、我が渡す物を詫びだと先方に持って行ってくれぬか?」
『行く!行く!詫びの品だね。』
「要らぬ波風を立てた事と、自分の気持をスッキリさせたかったとは言え、申し訳なかったと伝えてくれるか?」
『炎!このツマミ、最高級品だね!』
つまみ食いを始めた洸が嬉しそうに話した。
「皇帝だからな。良い物が届くんだ。…届ける物はこれでいいか。」
ブレスレットの中から、フルーツの入った箱を取り出した。
ブレスレットから物を出すのに、白獅子である洸を立ち合いにしていたので、普通に取り出せたのだ。本来なら、立ち会いする者がいなければならないが、聖獣様だから、融通が利いたのだった。
フルーツの入った箱を開けて確認をしてみた。
箱の中には、獅子国の貴族でも中々手に入れられない南国マンゴーフルーツが入っていた。獅子国の皇帝に届けられる物なので、品質は極上のモノだ。品質表示を保証するシールにも極上と銘打ってある。
赤くて傷の一つもなく、光っている良い品の物だ。何箱もストックがあるので、洸に食べるかと聞いたら、獅子国へ帰ったら、下さいと言われたのだ。次代様と2人で分けて食べたいからと言って。
子猫の姿から従者の姿の草へ変化してから、ドライソーセージの追加を我の手から受け取り、嬉しそうにした。その後、届けるフルーツの箱を受取って、「帰り道に差し入れを買うから、炎、お財布を預けてくれる?」と言うので、金を追加した財布を渡したのだった。
「草、使い過ぎないでくれ。引退したら、収入が減ってしまうからな。引退後は贅沢出来ない立場なのでな。」
「次代様に言って、炎の個人で持っている領地を豊作にしてもらうように頼んでみます。それ位なら、今まで苦労した分、簡単に通してくれると思いますよ。大丈夫。大丈夫。私が使った分は後で色々な方法で補填されますから。」
「草が食べたい物を買う方を優先して欲しい。我がここまで来れたのは、草のおかげだからな。」
「では、そこだけは遠慮しません。届け物をしに行ってきます。」
「ああ、頼んだぞ。行ってきてくれ。」
「あ、炎、軽く食べられる物を用意しておいたから、食べておいて下さいね。」と言い、草が部屋から出ていったのだ。その姿を見てから部屋の中を見回すと、軽食の乗ったワゴンが目に入った。
洸が我に用意していた軽食を食べる為に、ワゴンを動かし、茶を淹れて軽食を並べて、我はソファーに座り直し、軽食を食べ始めたのだ。
獅子国へ帰ったら、南国マンゴーフルーツの他にドライソーセージも洸へ渡そうと思いながら。
我が皇帝だった父のたった一人だけの子供で、それなのに、次代皇帝となる白い獅子として生まれてしまってから、我を厄介に思った王族の傍系共が放つ暗殺者に狙われるのが当たり前だった幼少時。
その幼少時から、今代の白獅子様である白輝様の「気に入らなかったら、いつでも殺すから。」と殺気のこもった脅しがいつでも発動されかねない日常が足されていたので、生きていく為には適応するしかなかったのだ。それは、今代様が旅に出るまでの間、我の普通だったのだから。
聖獣様が皇帝やその血筋を守ってくれるのは、自身の玩具にする為ではないと知識では知っていたのだが、実際には、今代様の言う事を聞けない、白獅子様にとっての有益な者しか残さない、と言う圧迫のある生存競争だったのだ。
それから逃れる道を、そう、我々が女神さまに訴える術を持っていなかったからなのだ。
我々が女神さまに頼みたい事があると思ったら、その話を聖獣さま経由で女神さまに伝える事でしか、話が女神さまにいかないのだ。
もし、今代様が横暴だと訴えても、今代様からは女神さまに話がいかないばかりか、その話さえ揉み消されて、今代様が我を病死に見せかけて殺すのだろうと、容易にその手段が想像出来たのだから。
だから、白星には我の様になって欲しくないと、今代様の言う通りに動いていた我や赤雪から遠ざけたのだ。
その為に、女神さまからの加護があるであろうリュンやミュンに近付いたのだ。
女神さまに今の獅子国の現状を訴え出る為に。白星や白虹を生かす為に。
その願いも今はもう叶ったのだ。
我が皇帝としてしている仕事さえ、白星が覚えてくれるなら、皇帝を白星へ譲位し、引退して静かに暮らすのも良いのかもしれない。
ただ、一人でいるのは寂しいから、誰かに傍へいて欲しいと思った相手にミュンを選んだが、それも昨日で失恋してしまったのだ。
人生がままならないのは解っているが、平然としている様に取り繕う事だけが上手く出来る様になっただけだな。
朝食も、昨日のせいで食べる気にはならなかった。はぁ。我もまだまだだな。
落ち込んだ苑を慰めに、洸は子猫の姿で円尾足にすり寄っていった。
『なーに、落ち込んでるんですか?程度の良い美人とミーファさんに言われたから?』
「それもあるだろうな。ミーファには大した美人だとは思われなかった様だ。」
足元に居た子猫を抱き上げながら、炎は考える。
『苑、ミーファさんは王城で美形を見過ぎているから、極上かどうかを見極める目はない筈です。仕方のない苑ですね。ダメダメです。苑だって、美人は見慣れているでしょう?違う?違う?』
「そう言われればそうか。そこには我も気付かなかったわ。我も見慣れてしまっているから、どんな美人や美男でも気付かなかったのかもしれんな。」
『お詫びの品を送るって、昨夜、苑が寝る前に言っていた事はどうしましょうか?』
子猫に癒されながら、昨夜思い付いた事を実行する為に考えた。ブレスレットの中に何かあっただろうかと探してみる。
ドライソ-セージが出て来た。洸の尻尾と耳がピン!とした。
「ふふふっ、駄賃にこれを渡そう。洸、我が渡す物を詫びだと先方に持って行ってくれぬか?」
『行く!行く!詫びの品だね。』
「要らぬ波風を立てた事と、自分の気持をスッキリさせたかったとは言え、申し訳なかったと伝えてくれるか?」
『炎!このツマミ、最高級品だね!』
つまみ食いを始めた洸が嬉しそうに話した。
「皇帝だからな。良い物が届くんだ。…届ける物はこれでいいか。」
ブレスレットの中から、フルーツの入った箱を取り出した。
ブレスレットから物を出すのに、白獅子である洸を立ち合いにしていたので、普通に取り出せたのだ。本来なら、立ち会いする者がいなければならないが、聖獣様だから、融通が利いたのだった。
フルーツの入った箱を開けて確認をしてみた。
箱の中には、獅子国の貴族でも中々手に入れられない南国マンゴーフルーツが入っていた。獅子国の皇帝に届けられる物なので、品質は極上のモノだ。品質表示を保証するシールにも極上と銘打ってある。
赤くて傷の一つもなく、光っている良い品の物だ。何箱もストックがあるので、洸に食べるかと聞いたら、獅子国へ帰ったら、下さいと言われたのだ。次代様と2人で分けて食べたいからと言って。
子猫の姿から従者の姿の草へ変化してから、ドライソーセージの追加を我の手から受け取り、嬉しそうにした。その後、届けるフルーツの箱を受取って、「帰り道に差し入れを買うから、炎、お財布を預けてくれる?」と言うので、金を追加した財布を渡したのだった。
「草、使い過ぎないでくれ。引退したら、収入が減ってしまうからな。引退後は贅沢出来ない立場なのでな。」
「次代様に言って、炎の個人で持っている領地を豊作にしてもらうように頼んでみます。それ位なら、今まで苦労した分、簡単に通してくれると思いますよ。大丈夫。大丈夫。私が使った分は後で色々な方法で補填されますから。」
「草が食べたい物を買う方を優先して欲しい。我がここまで来れたのは、草のおかげだからな。」
「では、そこだけは遠慮しません。届け物をしに行ってきます。」
「ああ、頼んだぞ。行ってきてくれ。」
「あ、炎、軽く食べられる物を用意しておいたから、食べておいて下さいね。」と言い、草が部屋から出ていったのだ。その姿を見てから部屋の中を見回すと、軽食の乗ったワゴンが目に入った。
洸が我に用意していた軽食を食べる為に、ワゴンを動かし、茶を淹れて軽食を並べて、我はソファーに座り直し、軽食を食べ始めたのだ。
獅子国へ帰ったら、南国マンゴーフルーツの他にドライソーセージも洸へ渡そうと思いながら。
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