ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ラーン・ビット国編

熊男の来襲

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 聖獣の村の村長から話を聞いている男が居た。その男は長身で、がっしりとした身体に、いぶし銀のような30代に見えるイケメンであった。

 その男は、何故、今、危機にさらされている筈のラーン・ビットの次代がこの村にいるのかを村長から聞いていた。

 それはその男が、ガオン・ロード国の黒銀熊の今代であり、女神さまからの命を受けた者であるからだ。

 ちなみに、ガオン・ロード国では次代は2人いて、1人は人の子の間で聖獣の仕事をしているし、1人は今代の仕事を女神さまや他の聖獣達の間の調整をメインにしているのだった。その弟子も各々2人ずついるので、男が今代でいるのに、守護する国から出ても、何も問題がないのであった。

 ああ、その男の名は、ブラック・ウルススと言うのだ。

 何故かは分からないが、ガオン・ロードの王は男を「ブラウスちゃん」と呼ぶので、ガオン・ロードの王城では、男はブラウス様と呼ばれている。

 …はぁ、村長の話はまだあるのだろうか。

 女神さまは、私をウルススと呼んで下さるのだが、他の聖獣の者達は私を好き勝手に呼んでいるのだ。この聖獣の村の村長は私を「ブラック殿」と呼んでいる。

 村長の説明を聞いているのだが、素直に聞き直してしまっていた。「はいっ?!もう一度今の言葉を!」と。

 村長が言うには、アマデウス王の子を産んだファネス、そのファネスが産んだ子の1人、シルビアと言う娘がラーン・ビットの次代と結婚して、今まさに村で蜜月を迎えている最中だと村長が告げた。半年は家から出て来ないだろうと言う予測まで付けて。

 何だとっ!!この羨ましい状況はっ!!などと言う声を上げない様に、無表情で威厳のある態度を心がけて、その他の聖獣の村の様子を聞いてはいるが…。

 理性では理解しているのだ。理性では。次代とその弟子の子を後継ぎにする為に必要だと言うのは。ただ、ただ、感情では羨ましくて堪らないっのだっ!!

 次代とその弟子予定を国から引き剥がす程の危機が迫りつつあるという事だ。次代と弟子予定をここで隠遁生活、いや、新婚生活を送らせている間に、あの国の事態を収束させるつもりなのだろう。

 それは今代であるファネスと女神さまの思惑と予想と希望ではないだろうか。ついでに、その後継ぎをも確保できるならば尚イイ!!なんて思惑なのだから。

 私も、ファネスが人の子の王と離婚をして、私と結婚してくれる事を望んではいるが、それは望み薄だと判っているのだっ!!

 だが、私自身の気持ちが割り切れなくて、諦められなくて、好きだっ!!、結婚して欲しい!!とずっと告げている。

 その事についてのファネスの私への返事はいつも、「アマデウスを愛しているから、無理なのだ。すまん。」と断られ続けているだけだ。

 いつかはあの人の子の王も、今代であるファネスよりも早く、人の子である200年の寿命で死んでしまうのだ。
 だから、その後に残されたファネスを慰めつつ、私の方へ向かせればいいとは思っているのだが、今回の件で、私にもファネスを守り、口説く機会が巡ってきたのだろうと思っている。

 女神さまから私へ、唯一人だけの命を受けたのだから。

 ラーン・ビット国の危険を排除する聖獣の今代の1人として、ファネスを手助けする様にとの命を受けたのはなのである。

 聖獣の村で、聖獣の村長からの推薦状を書いてもらっている黒銀熊の頭の中は花が咲いていたのだった。愛しいファネスに会えるのだと。その助けになれると。

 頭の中を花畑にして勘違いをしている今代の黒銀熊には知らされてはいないが、女神からすると、今動かせる今代の人員がのである。

 他の国でも、今代が交代したばかり(ナーオ・ロウ国や獅子国)や、今代がまだ、今代の仕事を次代に教え切れていない国からは今代が出せないし、どの国も今代が出せなかっただけなのであった。ガオン・ロード国以外は。

 ただ、楽天的で、行動派の黒銀熊の今代であるブラック・ウルススには、その理由は伝わっていないだけである。次代やその弟子達も、黒銀熊の楽天的な気質を持っているので、本当の事を今代であるブラック様(通称、ブラウス様)へ告げなかっただけである。

 ブラウスは聖獣の村を出て、ガオン・ロードの王の紹介状と聖獣の村の村長の推薦状の2つを持って、無事、ラーン・ビット国の王城の中で、王に謁見をしてから王城の客室まで案内をされていた。

 仮の身分では、ガオン・ロードの王の血筋の近衛騎士の名誉団長の1人として、この国の憂いを払う1人の手伝いとして王命によりラーン・ビットへ来たのだと、アマデウス王から臣下へ紹介をされたのだった。

 ただし、王であるアマデウスと、総侍女長であり、その妻で今代であるファネスと、近衛騎士団長とその副団長、宰相には、ブラウスがガオン・ロード国の今代である事を知らされている。

 ファネスは知っていたが、知らなかった振りをした。ファネスと言う人の姿の時はアマデウスの妻なのだから。

 この熊はわらわと愛しいアマデウスを引き離したくて堪らない筈、わらわを自身のモノにしたいと狙う者。女神さまもこれしか動かせなかった事を何度もわらわに詫びていたが、な。

 わらわがこの熊とは合わない事も知っていらっしゃるし、わらわの今代を辞めた後の願いがアマデウスと過ごす為に、人になるのだという事を知っているのは、女神さまだけなのだから。と、心の内で、呟いていた。

 アマデウス王も、ファネスからブラックなんちゃらの事を何度も聞いていたので、こやつが私からファネスを取り上げようとしている間男だと警戒をしていたし、息子達王子3人も、この男の目線を見て、母親に懸想しているのを見抜き、警戒をしたのであった。

 聖獣の村の新居の寝室の中から、シルビアを腕に抱いている次代のラジルは、呟いた。

「モテますね、義母上は。王家の男達は周りに対する警戒度を上げてくれたので、一石二鳥ですか。女神さまは抜け目ないですね…。」

 腕の中のシルビアが目を覚まし、「ラジル、どうしたの?」と言うので、「王城に、ガオン・ロードの今代が手伝いに着いたと、謁見していたのを視たのです。だから、安心して休んでいていいよ。」と答え、シルビアが再び、眠りについたのを抱きしめたのだった。

「ブラウス様は、義母上を守れないだろう…。未来視は未だにその結末を変えていない…。」

 ラジルは溜め息を一つ吐き、シルビアにキスをしてから眠りについた。

「シルビアには沢山、子供を孕ませなきゃ。王家が絶えてしまいそうだからな…。」と。
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