ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
142 / 207
ラーン・ビット国編

第3王子ベルナールの変化

しおりを挟む
 アル兄上とライ兄上が休暇で居ない晩餐の時、父上であるアマデウス王から私へ話があると言われて、何の話だろうかと思っていた。

 ナーオ・ロウ国で、私の番が見付かったとかの話ならいいなと思っていたのだが、実際は違っていたのだ。

 食後の茶を飲んでいる時に、私にとって、残酷でショックな話をされていた。

 兄上達の番がナーオ・ロウ国の王太子妃の兄嫁の産んだ子達だと判明した事と、その国の聖獣様から兄上達の番で間違いがないとのお墨付きをされたのだと聞かされていたのだ。

 その事実によって、私が憧れていた女性、ナーオ・ロウ国の女性の中に、私の番はいない事を証明されてしまったのだ。

 私の番は違う国にいるのだと言われたも当然だった。

 私が受けたショックの度合いは、凄かったようで、飲んでいた茶が入っていた茶碗ごと、手から滑り落ちていたのにも気付かなかったようだ。

 気付いた時には、茶が掛かった所がヒリヒリした痛みを訴えていた。

 だからなのか、父上が、私を慰めてくれていたのだろうが、頭の中が真っ白で、父上の心配そうな顔は見えたきりで、父上の掛けてくれたであろう言葉は私の耳には一切入って来なかったし、聞こえなかった。

 休暇の終わった兄上達も私を見舞いに私の自室まで来てくれたようだが、私は何の反応も示さなかったらしく、面会をせずに帰って行ったのだと後から聞かされた。

 私は晩餐後に自室へ戻っていた様なのだが、その辺りの記憶がハッキリしていないし、どうしてベッドに横になっているのかと不明であった。

 晩餐後に何日も飲まず食わずでいた私が床に倒れていたらしく、それを見つけた侍従が私をベッドに運んで、侍医を呼び、侍医が私に点滴をしたから、生きていたのだと聞かされたが、全く覚えがなかった。

 ベッドへ寝かされていた私がハッキリと気付いたのが点滴後、4日経った後であったとも聞かされたのだ。

 やっちゃったなー、とは思ったが、私もそこまで自分がショックを受けたのだと気付いて、その自覚がなかったので驚いたのだが、まだ兄上達には会いたくないのだと、父上経由で伝えてもらっておいた。

 兄上達の番が見付からなかったのには、私も家族も長年心配していたし、兄上達も表面上は大丈夫そうに装っていたが、ずっと悩んでいたのを知っていたにも関わらず、私は我が身の不幸を呪うだけでした。

 それに、兄上達に番が見付かった事を素直に祝福出来ない私は、今はまだ祝えなくて申し訳ないと言う気持ちと、なんで兄上達にはナーオ・ロウ国での番が見付かったのだ!!と、やっかむ気持ちが存在していて、ぐちゃぐちゃでまとまらない気持ちを持て余しているのだ。

 いざとなれば、私は生涯独身で過ごすつもりでいたのだが、今はもう出来ない。

 女性が苦手になってから覚悟していた独身なのに、前のように元に戻るだけなのだが、どういう女性なら大丈夫か解ってしまった今の私では、無理だ。

 兄妹には寂しくならない様にキチンとした番が居るのに、私だけずっと独身で過ごし、一人で過ごさなければならないのかと、それはイヤだ寂しいのだ!と、私はナーオ・ロウ国の女性と結婚したいのだと言う気持ちを諦めきれなかった。

 回復するまでをベッドの上で過ごすだけなので、考える時間が一杯あった。

 どうしたら、私、ベルナールが幸せになれるのかを考えて過ごしているうちに、スルっとこんな考えが浮かんで来た。

 私がこのラーン・ビット国をラーン・ビット王国として継ぎ、王となれば、各国の私好みの女性を妃に出来る筈。その様に法律を作り替えればいいのだと思い付いていたのだ。

 そこで私のこの考えの邪魔になるのは、アマデウス王とアインハルトとラインハルトである。

 シルビアは婚約者と旅行に出ているから邪魔をしないだろうし、成人後は降嫁する予定なのだから、大丈夫。

 母上も、この王城での仕事があるし、正式な王妃ではないので、私にとっての邪魔にはならない筈。

 そうすると、邪魔になるであろう男3人をどのように排除すればいいのかとベッドの中で楽しく計画を練りながら、体力と体調がいつも通りに戻るまでを過ごした。

 倒れる前の私と今の私との違いを悟らせずに動かねば。

 まずはアインハルトを倒す為に鍛錬をしながら、ラインハルトを追い出せる程の知能にならないと、この王国の王にはなれないのだと勉強をし続けた。

 そのまま半年が過ぎた頃、王としての実務が出来る様にと、アインハルトとラインハルトの仕事を手伝い始めたのだ。

 その頃には、私の心は計画を起こす為にと、アインハルトとラインハルトには上辺だけの祝いの言葉も言えるようになったし、兄上達は凄いですね。とか、真似出来ません。とか、心にもないお世辞を平気で言えるようにもなっていた。

 私は未だに積極的な女性は苦手だが、王になってから、好みの女性を抱く時に辛い思いをさせるのも嫌なので、娼館でおとなしめの女性2人の元へ通い、手練手管を覚え、初めて女性を抱いた。

 気持ち良かったが、ただそれだけだった。そこから、娼館の贔屓の女性2人の元へ性欲が溜まったら通って、適度に発散するようになった。

 最初の頃はその気持ち良さに、猿のようにガッツいて、女性に負担をかけた時期もあったが、私の相手をしてくれていたのが娼館の女性達だったので、見て見ぬ振りで見逃してくれたようだ。

 メリットは、王族も隠れて通う娼館だと言うネームバリュー欲しさにだったが。

 もちろん、兄達が通う娼館とは別の高級娼館を選んで通っている。

 兄達が通う娼館と私が通う娼館同士で見栄を張るので、店同士が切磋琢磨した結果なのか、どちらも評判も良く満足度も高い娼館として更に有名になってきているそうだ。そんな事は私には関係がないのだが。

 ただ、王になってから好みな女性を相手に閨をする夢と、王になれず、国家転覆をした王子として処刑される夢を毎夜交互に見るので、目の下のクマが消えなくなったのはマズいと思っている。

 そうそう、婚約者との旅行から戻って来たシルビアが私に触れると何故だか不快になり、凄くイライラするので、避けるようになった。

 母上も私を見ると悲しそうな顔をするので、私も最低限の接触をするだけになった。

 ただ、兄達や父が私を相手にする時間が増えたので、王城の者達の間では勉強熱心になられた王子だと評判が良くなっただけで、何も問題はない。

 それでも、兄達や父が何を考えているのかがその表情や態度から一切本心が読めないのが唯一、私にとって腹立たしいだけだ。

 私の心の中のモヤモヤしたモノが段々と増えていくのが解る。でも、心が不用意に浮足立つ事がないので、冷静に過ごし易いのだ。

 せめて、あと半年間は、自身の力を貯める事に専念しよう。私が王になってからも王国民を守る為に…と呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...