ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ラーン・ビット国編

ファネス動く、そして女神も動く

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 ファネスは悩んでいた。アマデウスや、子供達や次代の前ではカッコを付けたが、どうしたらいいか分からない。

 ナーオ・ロウ国から来たお客様達3人、我が国での飲食も世話も望まないと申し込まれ、事実、それを実行されているのだ。今代様が、食事を転移して、着いてきたメイド達や護衛達があれこれしているのだろう。

 すなわち、ラーン・ビットが誠意を見せて決着をつけないと、この国は信用出来ないのだと突き付けられているのだ。

 ナーオ・ロウ国に産まれた王太子妃様の姪達が、第1王子のアインハルトと第2王子のラインハルトの番であるのが正式に聖獣様に認められたのに。

 だから、今回の訪問に繋がったのだが、その縁もベルナールのせいで断ち切れてしまう可能性が出て来た。

 緊急の王家だけの話し合いの後すぐに、アルとライも謝罪の手紙を王太子妃様と王太后様宛に出した。

 陛下とわらわからも、すぐに正式な謝罪だけでもしたいとの旨を書いた文をしたためたモノを届けた。

 そして、わらわ聖獣の今代としての個人と、次代とその番との面談をしたいと言う希望を申し込んだのだが、すげなく断られた。

「その前に、2国間に全く関係のない熊男が口を出してくるのがお門違い。その処分の方が先だ。その報告が来るまではこちらからは一切、何もしない。」との返事だけがあった。

 ブラウスの大馬鹿者の事は、女神さまに訴え出たが、『ナーオ・ロウの愛し子からブラウスの願いを叶えない様にと願い出られています。気にせずに、ファネスの方の国の正式な方針を出しなさい。』と、静観する姿勢でおられている。

 まずは、わらわがあの大馬鹿者に一切の希望も持たせずに、無慈悲に振らなければならない。何の未練も希望も抱かせないように。

 今までは、聖獣同士の付き合いもあるのだと、どこかに遠慮があったのかもしれない。だが、今回で、この国のあり方を問われているし、親友にも未だにあの熊男を相手にしているのかと呆れられているのだ。

 遠慮なく、ザックリと、一切の希望も抱かせず、えぐるように、出来れば、トラウマになる位に嫌われるように振らなければならないっ!!

 その後で、女神さまにも話をしなくてはっ!

 ラーン・ビット国、今代の聖獣としてもここは踏ん張り所だぞっ!!

 夜も更け、自室でファネスが気合を入れている様子を女神が視ていた。

『あの様子なら大丈夫そうね。ブラウスは元々、ファネスに好かれていなかったし、失恋決定かしら。

 ブラウスにはちゃんとした番がいたけれど、自分でその番との結婚を拒否して、自分の番を神力でその想いごと変質させて、他の人と結婚させたし、その番はその相手との間に子供も作らず、寿命で亡くなったんだものね。

 ブラウスの番も、私の元へ魂として戻ってきた時に願いを告げていたわ。

 あんなに辛い思いをするなら、生まれ変わってもブラウスとの番になるのは二度とご免だと拒否したから、違う人との縁を繋いだっけ。

 だから、それ以降はブラウスに番を充てがわなかったのよねぇ。』と呟いていた。

『にゃんにゃんにゃーん。(熊男は残念男なのかー。)』

『あら?黒百合クーちゃんには聞こえていたの?』

『にゃん!(もちろん!)』

あの娘王太后あの子ユーイにも今の話をしていいわよ。ふふふっ。』

『にゃあー!(オッケー!)』

 女神は思う、これで仕込みはオッケーね。と。

 今はもう黒百合も聞いていないし、平気ね。これからをどうしようかしら。

 あの息子ブラウスも前世は地球産の魂だったわね。地球神おっとには、またこの件でクレームをつけないと。前回と言い今回と言い、地球産はハズレばかりだわ。

 その頃、地球神は、背筋に走る寒気を感じていた。「な、何だ?!何の前触れだ?」と。

 ラーン・ビット国のファネスが自身に気合を入れてから3日後、ファネスは、シルビアとその婿であるラジルを連れて、ガオン・ロード国のブラウスの滞在している部屋へ向かっていた。

 そして、その立ち会いの証人として、ナーオ・ロウ国の王太后様と聖獣の今代様を証人とする事を、個人的に女神さま経由で頼んでいたのだった。

 その願いが聞き届けられ、2人が協力してもいいと返事が来たのが昨夜であり、ブラウスの滞在している部屋での話し合いになったのだった。

 ファネス一行がブラウスのいる部屋の中へ案内されると、その証人となる2人が部屋の中にいた。

 大きい1人用ソファに今代様を膝の上に乗せた王太后様がくつろいで座っている。

 但し、ブラウスはその反対側にあった1人用ソファで、苦虫を潰したような不快そうな表情でいたのだが。

 ファネス達が勧められたソファに座った事で、機嫌を直したブラウスが尋ねて来た。

「今日は、貴女まで此処へ来るのが珍しい。今まで一度も入って来なかった部屋にまでファネスとそのオマケが入って来たのはどうしてだい?」

「あら?私達はユーイ王太子妃の名代として訪ねて来たのに、そこの男は不機嫌そうだったけれども?」

「そ、そんなつもりはなかったですが…。」

 ちらちらとファネスの様子を見る熊男。ファネスからしたら、ただただ気持ち悪いが、作り笑顔と無言で対応するファネスであった。

「あらあら、嘘を言って、見栄を張ってばかり。冷汗をかかなくてもいいのに。

 ブラウス殿はゾッとする程、気持ち悪いわねぇ。」

 わらわの親友の追及にタジタジなブラウスを見ると、スッとした。何だか笑顔になれたし、勇気が貰えたような気がした。

「私達がここまで来た理由があります。」

 わらわの笑顔に勘違いしたのか、ブラウスが嬉しそうな顔をしたけれど、それは違う。

 熊男をわらわの生涯から完全に追い出しに来たのだから。

「私、あなたが大っ嫌い!死んで生まれ変わっても、二度と会いたくない程にね!

 視界に入るのも本当は虫唾が走る程、嫌いなのよ。話をするのも、気持ち悪くて仕方ないの。

 そんな男に何十回も求婚される度、何十回も殺してやりたい!と思っていたわ。

 二度と私の目の前に現れるな!!この国の規則で、お前を未来永劫、入国禁止にした!!すぐに出て行け!!

 女神さまもこのやり取りを見守って下さっている!!」

「それは嘘だっ!!」ブラウスが叫んだ!

「ブラウスには番がいたけれど、自分でその番との結婚を拒否して、自分の番を神力でその想いごと変質し、他の人と結婚させた揚句、その番はその相手との間に子供も作らず、寿命で亡くなったと聞いたわ。

 ブラウスの番も、女神さまの元へ魂として戻ってきた時に願いを告げていたって。

「あんなに辛い思いをするなら、生まれ変わってもブラウスの番になるのは二度とご免だ。」と拒否したから、女神さまも気の毒になって、違う人との縁をその魂に繋いだそうよ。

 それ以降、ブラウスに番を充てがわなかったんですって。女神さまがそう言っていたのを聞いたそうよ。

 そうですわよね、クー様。」

『にゃうんにゃうんにゃん。(女神さまがそう言っていた。)』

「最低ーっ!!母上が嫌うのも理解出来るっ!」シルビア熊男を嫌っていたので、賛同の声を上げた。

「ええ。番の想いを変質してまで拒否した者の気持ち、私には愛しいシルビアがいる現在、その気持ちを理解出来ません。」

 ラジルも、番を要らない者として扱った熊男に、呆れた様に言い捨てた。

「本当に最低最悪!わらわと番のアマデウスの気持ちを理解出来ないのも、判った気がするっ!

 女神さま!さぁ!頼みます!」

『あい、分かった。この様なモノに今代として、一国を任せられない。強制的に退場させよう。』

「そ、そんなっ!!私が居なければっ!!ガオン・ロード国のっ!!」

 ブラウスが何も反撃出来ない様にと、女神さまが光の縄でブラウスをいつの間にか縛っていた。

 ブラウスの神力もその大きさが徐々に小さくなってきて、身体に力が入らない様で床の上に座り込んでいる。

『次代も王家もブラウスを気味悪がって、王家の方でも次代の方でも自身の番を今代には誰も紹介出来なかったそうです。

 昨夜、その両方へ女神である私が尋ねると、すぐに引退させて欲しいとの要望が上がりましたので、今朝、ガオン・ロード国の次代には早々に今代への就任を告げ、対策を話し合っておきましたから、何も心配ありません。

 王家からも、次代から今代になった聖獣からも、「安堵しました。ありがとうございます。」と感謝されました。うふふっ、直接、感謝されて、気分が良かったです。

 ブラウスは聖獣としての仕事は出来ていたのですけれど、ね、残念です。そこまで人望が無かったのだと気付くのが遅れてしまったので、私の方からも謝罪をしておきましたよ。』

「助けて!ファネス!愛してる!」

「気持ち悪っ!!聞きたくもないっ!!」

「…ああああーーー!!!ああぁ。」

『神力も私に全て返してもらいますよ、ブラウス。

 そうそう、ブラウスが前世に居た元の世界に魂を返します。この世界で転生されては危険ですから。』

 神力も魔力も感じられない姿のブラウス。その姿が徐々に薄くなって消えていった。

『ぐぅにゃ?(消えた?)』

『消滅しました。まずは最初の片付けが終わりましたね。さて、次は…。』

 女神さまはそう言うと、わらわに微笑んだ。
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